◎ CORFIELD BRITAIN (コーフィールド) RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 silver(L39)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルはイギリスのCORFIELD社製広角レンズ『RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 silver (L39)』です。

市場ではほとんど見かけない珍品になりますが、当時の旧西ドイツENNA (エナ) 社製の委託生産品になります。
(ちなみに「ENNA」を「エンナ」と発音するのは日本人によるローマ字的な読み方に拠ります)
実は、このブログにアップしてから数人のリピーターの方々からお問い合わせ頂きました・・皆さん、やはりこのモデルのことをご存知なく、まさしく「海のものとも山のものともつかない」思いなのかも知れません。

勘違いしている方が多いようですが、ENNA製だとしても、その描写性はENNA製オールドレンズに見られるシアン寄りの画ではなく、全く対極の (どちらかと言えば) 旧東ドイツ製オールドレンズのようなメリハリ感のある発色性とコントラストなのですが、旧東ドイツ製オールドレンズとの大きな違いは、決して誇張感に至らない自然ながらも鮮やかなブルーレッドの表現性と言えます。その意味では、ENNA製オールドレンズに見られるシアン寄りのスッキリ感漂うナチュラル傾向の画造りが好きな方には向かないモデルです。
ピント面エッジ部分は、カリカリ感に偏ることなく緻密感を保ちつつも、画全体の印象としてはむしろリアルに見たがままを狙ったような画造り (それはまるで現場の臨場感をそのまま伝えるかのように) であり、それはまた旧東ドイツ製オールドレンズとも少々趣が異なる、ロシアンレンズとも方向性が違うまた別の描写世界を持っているような新鮮さが魅力です。当方が魅せられてしまった要素が、まさしくそこにあります・・凜として誇りを以てその尊厳とプライドを知らしめようとする想いを画の中に感じます。それはブリティッシュとしてのロマンを感じる要素にもなっていますね。

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《追加解説》2017.10.29
いつも懇意にして頂いているリピーターの方から問い合わせがあったので、再び補足説明です。

当方は、すっかりCORFIELD製オールドレンズの描写性に魅了されてしまったワケですが(笑)、現在ヤフオク! に出品中の当モデルを相当数ウォッチして頂き大変ありがとう御座います! 残念ながら、今後値下げしてまで安値で処分する気持ちは御座いませんので、価値 (このモデルの魅力とオーバーホール済であること) をご理解頂ける方の手に渡ればと言う願いです。

描写性も然ることながら、何と言っても当時の同クラス (開放F値f3.5) の広角レンズでも最短撮影距離はせいぜい20cmですが、当レンズは実測ながらも12cmと言うマクロレンズ並みの近接撮影を実現しています。しかも、光学系内にランタン材を使ってまで収差の改善と解像度向上を狙った拘りが、その実写からも確認できるモデルであり、このコンパクトな筐体からは意外にも相当な実力を感じています。是非とも、それらの要素を含み於き頂ければと思います・・来週には再び元の価格に戻しますので、少しでも安く手に入れるのは今がチャンスです!(笑)

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CORFIELD (コーフィールド) 社はイギリスのグレートブリテン島中部に位置するバーミンガム近郊のスタッフォードシャー (現ウェスト・ミッドランズ州) Wolverhampton (ウォルバーハンプトン) と言う街で、創業者ケネス・ジョージ・コーフィールド卿 (1980年ナイト称号拝受) によって1948年に創設されたフィルムカメラメーカーです。

CORFIELD社が1954年に発売したフィルムカメラ「Periflex 1」はライカ互換のL39マウントを採用しましたが、距離計連動の機構を装備していないペリスコープ方式 (潜望鏡方式) を実装してきました。その結果、L39マウントながらも最短撮影距離を短縮化させたオールドレンズ群を用意してきています。左写真は第3世代の「Periflex 3」ですが、マウント部内部に自動的に降りてくる「潜望鏡」機構部を撮影しています。

今回出品するモデル『RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 silver (L39)』も距離環に刻印されている指標値上は最短撮影距離「1.5ft (フィート)」ですが、実際には距離環が一周以上も回ってしまうので、実測した被写体とフィルター枠端との距離は僅か「12cm」しかないと言う、まるでマクロレンズ並みの超近接撮影を実現しています (当ページ最後のほうに実写を掲載しています)。

さらに、光学系の設計も独特で4群5枚のレトロフォーカス型構成ですが、3群4枚のヘクター型構成を基本とし、第1群 (つまり前玉) として凸メニスカスを1枚配置することでレトロフォーカス化してきた設計とみています。
しかも、このモデルは第2群と第3群に屈折率の改善を狙って「ランタン」を含有した超低分散光学硝子を採用しているので、ヘクター型の特徴であるテッサー型にも劣らない鋭いピント面を構成しながらも色収差を徹底的に改善させたアポクロマートレンズにも匹敵し得る描写性を実現したモデルです。
ちなみに、1948年に開発され1950年代に多用された「酸化トリウム」を含有した、俗に言う「放射能レンズ (アトムレンズ)」は、放射線の半減期の長さと経年に於ける「黄変化 (ブラウニング現象)」から1970年代には光学硝子材への含有をやめています。当モデルの光学系に含有している「ランタン」は、それらの問題点を回避するべく「酸化トリウム」の代用として用いられている素材ですので放射線を放出せず、且つ黄変化にも至りません (但し、光学屈折率の改善度は酸化トリウムの20%以上には及ばず10%代に留まります)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ライカ互換のL39マウントですが距離計連動の機構部を有していないので (つまりダブルヘリコイド方式ではないので)、内部の構造は至ってシンプルです。上の写真では少々分かりにくいのですが、光学系第2群 (中央の白紙左から二番目の円錐状の硝子レンズ格納筒) をご覧頂くと茶色っぽい硝子レンズになっているのが分かります・・次の第3群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) も同様です (写真では硝子面が見えていません)。

↑第1群 (前玉) を大口径に採ってきているので鏡筒も大きめのサイズで用意されています。

↑10枚のフッ素加工が施されている絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。このモデルはクリック感の無い手動絞り (実絞り) 方式ですから、絞りユニットの構造も至って簡素なのですが、如何せん絞り羽根の表裏に打ち込まれている「キー (絞り羽根の格納位置や向きを制御するための金属製突起棒)」が大変薄いので、10枚の絞り羽根のうち7枚を重ねた後の、残りの3枚を入れ込むと絞り羽根がバラけてしまい面倒です。

↑10回近く絞り羽根の組付けをトライした後、完成した鏡筒を立てて撮影しました。

↑絞り環をセットしてしまいます。

↑設計上、後から第1群 (前玉) を組み付けることができないので、先に光学系前後群をセットしてしまいます。このモデルは鏡胴が「前部」と「後部」の二分割なので、これで鏡胴「前部」がほぼ完成です (レンズ銘板がまだ組み付けられていない状態)。

↑上の写真はヘリコイド (オスメス) を撮影していますが、このモデルの独特な設計部分になります。ヘリコイドに使われている素材はアルミ合金材なのですが、どう言うワケかヘリコイドのネジ山を切削せずに、ワザワザ「鋼線 (ハガネの棒)」を切削して用意した溝に打ち込んで「ネジ山の代用」としています・・つまりこれは、この当時のENNA社では、まだアルミ合金材だけによるヘリコイドのネジ山 (オスメス) 切削技術が完成していなかったことになりますね。そこで、鋼線を間に挟むことで平滑性を確保してきたのでしょう。ちなみに、鏡筒の繰り出し量が非常に多いにも拘わらずネジ山数を増やせないので (平滑性をキープできないので) 急角度で鋼線を巻いた設計にしています。このヘリコイドの構造が、このモデルの独特なヘリコイドのトルク感に仕上がってしまう原因なので、正直当時の純正ヘリコイド・グリースを使わない限り、生産時の状態のトルク感には戻せないと考えます。

↑ヘリコイド (オスメス) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で2箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。上の写真のように、最短撮影距離の位置までヘリコイドを繰り出すと、広角レンズながらも相当な繰り出し量を誇っています。

↑距離環を組み付けて、この後は完成している鏡胴「前部」を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ「解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認について」で解説しています) をそれぞれ執り行えばいよいよ完成です。

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DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが終わった出品商品の写真になります。

↑市場には滅多に出回らない珍品の部類に入るCORFIELD社製広角レンズ『RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 silver (L39)』です。ネット上でこのモデルの実写を探してみてもほとんどヒットしませんが、数少ない実写を見ると、やはり「独特な赤色」の発色性と同時に画全体的にはナチュラル感を漂わせながらもシッカリと彩度を確保している、違和感の無いメリハリ感にスッカリ魅了されてしまいました。さらに、レトロフォーカス型光学系の広角レンズでは珍しく、光学系内に「ランタン素材」を含有してきているとなれば、自ずと色収差が改善されているワケで、後先考えずに調達してしまいました。

↑光学系内の透明度は高い部類ですが第2群の外周附近にカビ除去痕が1箇所残っています。なお、カビに関する解説を「解説:カビの発生と金属類の腐食/サビについて」に掲載していますので、興味がある方はご覧下さいませ。

↑上の写真 (4枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。4枚すべて極微細な点キズを撮っていますが、1枚目と4枚目の写真をご覧頂くと第2群にランタン素材を含有しているのが分かると思います・・パープルアンバーな光彩を放っていますが黄変化しているワケでは決してありません (無色透明です)。なお、光学硝子面の黒っぽい影などはミニスタジオの写り込みですから汚れなどではありません。

↑こちらは光学系後群を撮った写真ですが、ご覧のとおりレトロフォーカス型光学系を採用した広角レンズでは大変珍しい、奥まった位置に後玉が配置されている光学系設計を採ってきています・・つまり、ここを見ただけで最短撮影距離を大幅に短縮化させてきているのが推察できたワケで、思わずゲットしてしまいました(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが、2枚目だけは光学系前群の第2群裏面にあるカビ除去痕が写り込んでおり、ワザとそのカビ除去痕が分かり易いように光に反射させて誇張的に撮影しました (このカビ除去痕は写真には一切影響しません)。なお、光学硝子面にある白っぽい円弧状の筋は、撮影時のレンズが写り込んでいるのでヘアラインキズなどではありません。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:17点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:無し
・光源照射の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):皆無
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際はカビ除去痕としての極微細な点キズです (清掃しても除去できません)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・光学系内には一部視認できるレベルのカビ除去痕が複数ありLED光照射では極薄いクモリに浮かび上がります。
・第2群と第3群の黄変化は極僅かでほぼ無色です。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

 

↑組み付けるのが大変でしたので、意外な処で難儀してしまいましたが、先見性の高いフッ素加工が施された10枚の絞り羽根によって、ほぼ真円に近い「キレイな円形絞り」を実現しています。絞り環の操作は手動絞り (実絞り) なので (つまりプリセット絞り機構を装備していない)、スムーズな操作性に仕上がっています。このモデルは絞り環が独立しているので、距離環を操作してピント合わせ後に絞り環操作してもピント位置がズレてしまうことはありませんが、絞り機構部が附随している鏡筒自体がヘリコイドと直結しているので、距離環を回すと一緒に絞り環の部位も回転していきます (つまり絞り指標値が距離環と共に回っていく繰り出し/収納方式)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感をあまり感じさせない大変キレイな状態を維持した個体です。当方による「光沢研磨」を筐体外装のクロームメッキ部分に施したので、当時のような艶めかしい眩いほどの光彩を放っています。残念ながら、オリジナルの合皮製ローレット (滑り止め) は既にほとんどが欠落していたので、当方にて代用のラバー製ローレット (滑り止め) に貼り替えています (あまりキレイにカッティングできていません)。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・ヘリコイド (ネジ山) の仕様から距離環の回転に僅かなトルクムラがあります。無限遠位置「∞」や最短撮影距離の位置では詰まった感じで停止しますが仕様なので改善できません。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・絞り環と距離環のラバー製ローレット (滑り止め) は純正ではなく張り替えています。

↑上の写真 (2枚) は、距離環を回して鏡筒を繰り出した際の状態を撮っています。1枚目が無限遠位置の状態で、2枚目が最短撮影距離「1.5ft」を越えて距離環が停止する位置まで回した時の写真です・・何と一周以上もまわってしまい相当な繰り出し量を誇っています。このモデルは設計上の仕様として無限遠位置も最短撮影距離位置も共にヘリコイドのネジ山端で停止するので「詰まった感じで停止」します。つまりフツ〜のオールドレンズのようにカチンと音がして停止しません (事前告知しているのでクレーム対象としません)。また、距離環を回す際は、ヘリコイドのネジ山に鋼線が使われている関係から独特な感触のトルク感になりますし、トルクムラが生じています (共にクレーム対象としません)。なお、トルクムラは撮影時に支障を来すレベルの操作性ではありません (僅かにトルクが重くなる箇所がある)。

↑当レンズによる開放実写ですが、1枚目が距離環指標値「1.5ft」の最短撮影距離45cm附近で、2枚目が実際の距離環停止位置 (約12cm) での撮影です。特に2枚目はピント合焦面のヘッドライド手前側 (しかも中の電球) から僅か12cmしか離れていない距離なので、まるでマクロレンズのような撮影が楽しめます。さらに、超低分散光学硝子を採用してきた効果が明確に現れており、色ズレが四隅に至るまで発生していない素晴らしい描写性です。

↑絞り環を回して設定絞り値を「f4」にセットして撮影しています。

↑さらに絞り環を回してF値「f5.6」で撮りました。

↑F値「f8」で撮っています。

↑F値「f11」になりました。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。

↑このモデルの絞り指標値は「f3.5〜f16」までしか絞り環に刻印されていませんが、絞り環はさらに「f16」の先まで回ります・・「f16」で停止する設計になっていません。従って、絞り羽根の開閉幅 (つまりF値) を検査具で調べたところ、ちゃんと「f22」まで閉じていましたので撮影してみました。回折現象でコントラストの低下を招いているので、敢えて光学系の諸元値としては「f16」としたのでしょう・・なかなか拘った思想で作られている広角レンズだと思います。