◎ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Werra Tessar 50mm/f2.8

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Werra(0411)レンズ銘板T

カールツァイス・イエナ今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。

Werra (ヴェラ) は、旧東ドイツのCarl Zeiss Jenaより1954年から発売されたコンパクトなフィルムカメラのシリーズです。モデル・バリエーションは「Werra Ⅰ」〜「Werra Ⅴ」まであるそうですが、当方はフィルムカメラのことはほとんど知識がありません。

今回はこの「Werra Ⅲ」以降でレンズ交換式になったタイプの専用オールドレンズ「Tessar 50mm/f2.8」と「Flektogon 35mm/f2.8」のオールドレンズ/修理ご依頼です。

ご依頼頂くまで当方も知らなかったのですが、このWerraの交換レンズ群をミラーレス一眼に装着できるようにするマウントアダプタが用意されていました (最近円安であまりebayをチェックしないので・・)。今回はSONY製Eマウント用と富士フィルム製FXマウント用の二つのマウントアダプタが附属していました。

もちろん当方での扱いは今回が初めてですが、マウントアダプタのほうに関しては人様の商品なのでオーバーホールの工程写真は掲載できません。一応、マウントアダプタと言ってもスピゴット式なのでフィルムカメラのボディ側受け機構部が必要であり、それを装着させたマウントアダプタのようです。いわゆる自作なのかも知れませんが、接着されているワケではなくシッカリと固定用ネジで締め付け固定されている構造でした。このボディ側のスピゴット機構部もバラして清掃していますが、同時に当方にて「光沢研磨」を施していますので、だいぶキレイになっていると思います。

 Werra(0411)仕様T

Werra(0411)レンズ銘板T

まずは「SONY Eマウント」用のマウントアダプタなのですが、最後にオーバーホールが完了してチェックしている最中に光軸ズレが極端に出ていました。テッサーですから光学硝子レンズの枚数はたったの3枚なので「???」でしたが、マウントアダプタが原因でした。

Werra(0411)11Werraのカメラボディからスピゴットマウント部を取り外して装着させているワケですが、その装着位置が両サイドにある余白部分の隙間が異なっていました。

Werra(0411)12ほんの僅か0.5mmくらいですが、上の写真2枚で違いがお分かりでしょうか? ここで仕方なくこのマウントアダプタのスピゴット式マウント部のみをバラして整備することにしました (当初は交換レンズのほうだけを整備する予定でしたが・・)。同時に、せっかくバラすならアルミ材削り出し部分の「光沢研磨」も処置することにした次第です。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

すべて解体したパーツの全景写真です。

Werra(0411)13ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。前述のようにマウントアダプタに関しては、人様の製品ですからバラして組み立てていく工程の写真は載せません。上の写真では既にオーバーホールが完了したマウントアダプタを一緒に写しています。

Werra(0411)14絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。テッサーなのでコンパクトなのですが、そもそも光学硝子のレンズ径自体が一般的な銀テッサーと違うかも知れません・・僅かに大きめです。

Werra(0411)15最初にWerraが世に出されたのは1954年ですが、交換レンズのタイプになったのは1960年代でしょうから、そろそろゼブラ柄が流行り始める頃にあたります。銀テッサーでは、装備していた絞り羽根の枚数が減らされていき「10枚→8枚」の時代でしょうから、このWerra版Tessarの6枚装備は少なめと言えます。

Werra(0411)16絞り機構部の一部を本体側に任せているので距離環やマウント部を有する基台自体が大変薄いです。

Werra(0411)17ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。このモデルには「無限遠位置調整機能」が備わっていないので、合わせられる無限遠位置は自ずと決まってしまいます。正直な話、マウントアダプタ側の切削加工がほんの僅かに「多め」なので無限遠がビミョ〜に出ていない気がするのですが、この頃の銀テッサーは最短撮影距離50cm (このモデルは最短撮影距離80cmです) から、ピントが甘い感じに見えます・・。

上の写真をご覧頂くと分かりますが、既にマーキングが施されていました。過去にメンテナンスされている証ですが塗布されていたグリースは「白色系グリース」でしたので、ヘリコイドのネジ山も相応に摩耗しています。

Werra(0411)18距離環 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で11箇所のネジ込み位置があるので、ここをミスるとさすがに最後で無限遠が出ず (合焦せず)、再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

Werra(0411)19マウントアダプタ (奥) と交換レンズ「Tessar 50mm/f2.8」です。レンズをマウント部に「」マーカー位置を合わせてハメ込みリリース環を締めて固定する方式です (スピゴットマウント)。

Werra(0411)20これで最短撮影距離が一般的なモデルと同じ50cmだったら申し分なかったのですが・・写りは銀テッサーそのモノの写りが出ています。

Werra(0411)21光学系内は経年のキズやヘアラインキズなどがあり、またコーティングの劣化部分もLED光照射では薄いクモリ状となって浮かび上がりますが、少なめでしょうか・・状態は良いレベルだと思います。

Werra(0411)22光学系後群の最後 (第3群:後玉) は3群4枚のテッサー型ですから「貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) 」になっています。バルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) が生じていなかったのでラッキ〜でした。

このマウント部は「クッション」が効くようになっており、スピゴットマウントの受け部にハメ込む際にグッと押し込めるようになっています。実は、このレンズのマウント部自体は絞りユニットの制御も同時に行っている仕組みを採っていたので、最初はちょっと戸惑うかも知れませんね・・当方もバラしている最中に考えながら作業しました。と言うのも、テッサーだからと甘く考えて臨んでいたのがイケナイのですが・・(笑) 意外と複雑な仕組みになっていました。

Werra(0411)23スピゴットマウントの受け部の中に用意されている「爪」がこのレンズ本体側の受け部と噛み合うことで、本体側の絞り環操作で絞り羽根の開閉が行えるようになっているワケですが、この「噛み合う」と言うのが厄介で・・(笑)

マウント部のクッションの役目だけだとばかり思っていた「螺旋バネ」は実はこの絞り羽根制御の「噛み合わせ」のクッションも同時に兼ねていた考え方になっていました。つまり、マウントアダプタに備わっている (本体側にある) 絞り環の「絞り値」がどの位置に回っていたとしても、必ず「カチッ」と噛み合うように仕組まれているワケです。よく考えられていますが、それを螺旋バネ一つで兼用させていたとは「さすが」です(笑) この仕組みは結局は「コンパクトでなければいけない」と言う基本方針から生み出された考え方のように感じました。Werra・・なかなかのカメラシステムです。

ここからは鏡胴の写真になります。筐体のアルミ材削り出し部分は当方にて既に「光沢研磨」が終わっているのでピッカピカに輝いています(笑)

Werra(0411)24

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Werra(0411)27使用したヘリコイド・グリースは「白色系グリース」の「粘性:軽め」を使用しました。当方でメインで使っているのは「黄褐色系グリース」で、今回のご依頼分の他のモデルはすべて「黄褐色系グリース」を塗布していますが、このWerra用TessarとFlektogonに関してはヘリコイドのネジ山が神経質だったので、やむなく「白色系グリース」を使いました。こちらのTessarに関してはトルク感は僅かに「重め」ですが実用範囲内と判断しています。

Werra(0411)28実際にレンズ本体をマウントアダプタに装着すると・・こんな感じです。「」マーカーとミラーレス一眼の基準位置とも合わせてあります (つまり指標値が真上に来るようにしてあります)。

Werra(0411)30当レンズによる最短撮影距離80cm附近での開放実写です。ピント面が甘いですね・・。ミニカーの手前側ヘッドライトにピントを合わせています。