◎ MINOLTA (ミノルタ) AUTO ROKKOR-PF 55mm/f1.8(MD)

minolta-logo(old2)今回の掲載は「オーバーホールご依頼分」の掲載 (有料) になりますので、ヤフオクには出品していません。暫く海外製モデルのオールドレンズを立て続けにオーバーホールして出品してきましたが、ようやく国産モデルに戻れました (今後はオーバーホール/修理中心なので、当分の間ヤフオクへの出品はありません)。

整備していて楽しいのは海外製品なのですが、如何せん工業製品としての技術レベルがまちまちなので、整備の仕上がり状態に神経を遣い疲れます。片や国産モデルならば工業技術レベルは安心ですので、整備してもほぼ同一レベルで仕上げられとても楽ですね・・。海外製品はヘリコイドのネジ山ひとつでも、その切削レベルは国産製品とは雲泥の差があり「磨き研磨」を施してもなおトルクムラに悩まされます。

今回はミノルタの「AUTO-ROKKOR-PF 50mm/f1.8 (MD)」のオーバーホールご依頼を賜りました。掲載の写真の中で、個体を確定できるレンズ銘板の製造番号などは消してあります。

今回の個体は、内部の構成パーツからはやはり「富岡光学製」の匂いが感じられます。絞り羽根 (キーが片側のみ) や絞り羽根格納環、鏡筒の収納方式、或いはヘリコイド (メス側) などなど、製品のすべてとは言わないまでも、一部は間違いなく富岡光学より供給されたパーツが混じっています。年代的にも既に富岡光学自体はヤシカに吸収され、さらに母体のヤシカ自身も倒産の危機に瀕していた時期ですから、富岡光学の技術や製品は「パーツ」としての「切り売り状態」だったのが推察できます。


オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。

まず先に下の写真をご覧下さいませ。

RO5018(1022)11解体した直後 (清掃前) のヘリコイド (オス・メス) と基台です。当初この個体は距離環 (ヘリコイド) のグリース切れの症状が出ており、僅かにスリップの傾向がありました。また絞り環はガチャガチャとガタつきが多く絞り羽根の開閉幅が「狭い」設定でした。

上の写真では上手く写せなかったのですが、ヘリコイドのグリースには「2種類」が使われていました。通常「1種類」しか使いませんね(笑)
「黄褐色系グリース (純正グリース)」と「白色系グリース (非純正)」の2種類です。ミノルタ純正の黄褐色系グリースを完全に除去しないまま白色系グリースを塗布してしまっています。従って一部は混ざっており、後から塗布された白色系グリースが経年で液化していました。また残っている純正グリースは、やはり経年で既に固着化が進んでいました。

これはどう言うことなのか・・? つまりはメーカー以外の何処かで過去既にメンテナンスされていると言うことになります。事実、基台や他のパーツ類には既に「マーキング」が刻まれていました。それも位置が狂っている箇所のマーキングなどもあり、下手をすると2回のメンテナンスが施されているかも知れません・・。

メンテナンスされていたのは、ありがたいのですが、正しくちゃんと整備されていないのは困ります。いい加減な整備をするならしないほうがマシです。

なお、黄褐色の真鍮製ヘリコイド (メス側) は、既に経年劣化で表層面が腐食しており真っ黒です。ネジ山部分だけはヘリコイド同士がお互いに接していたので腐食から免れています。基台のほうも写真では判りにくいですが「黄色」に変色 (腐食) しています・・本来はシルバーです。

RO5018(1022)12すべて解体したパーツの全景写真です。ミノルタのモデルはパーツ点数が多いですね・・。しかし、富岡光学製のオールドレンズと比べると、これでもパーツ点数は少な目です。ミノルタのモデルはとても合理的、且つ考えられた構造化が成されているので、富岡光学のような「意味不明」な構成パーツや「多い工程数」などは見受けられません。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

RO5018(1022)13絞りユニットや光学系前後群を収納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており、別に存在しています。

RO5018(1022)14絞り羽根の片側にしか「キー (絞り羽根位置決めの金属製突起)」が打ち込まれておらず、反対側は「穴」だけです。またひとつだけ打ち込まれている「キー」は「円柱 (内部が空洞の筒状)」を使っています。そして極めつけはこの鏡筒自体が一切ネジ止めされずに固定される方式。これらは「富岡光学製」を表す要素です。

RO5018(1022)15鏡筒の裏側には絞り羽根制御機構部が組み付けられます。上の写真手前の「緩やかなカーブ」を左側から金属製の突起 (絞り羽根開閉幅制御キー) が右方向に進むと、絞り羽根は「開放」に向かい開いていきます。右側には「絞り環」操作で連係させるための「連係アーム」が用意されています。また奥にはマウント側の「絞り連動ピン」との連係を行う金属棒も用意されていますね・・この部位でほぼ90%の「絞り羽根制御」とその調整が決まってしまいます。

RO5018(1022)16ヘリコイド (メス側) をネジ込むためのベース環です。基台とは別にワザワザこのようなベース環を用意しているのは、ミノルタの「拘り」であり、マウント部と容易に3ステップで分離できる構造化を狙ったものです・・必要ならばパーツ点数を増やし工程数を増やしてでも追求する姿勢は、さすがですね。このおかげでサービスレベル (修理やメンテナンスなど) は格段に楽になるハズです。

冒頭の写真で「真ッ黄ッ黄」だったベース環はオリジナルのシルバー色に磨き上げてあります。冒頭の写真ではミスッて「基台」と書いてしまいましたが、正しくは「ベース環」です。

RO5018(1022)17真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた位置までネジ込みます。この真鍮製のヘリコイド (メス側) もキレイに磨き上げました・・結果、滑らかな駆動が実現しています。

このモデルでは従来用意されていた「無限遠位置調整機能」が省かれています。低価格品としての位置付けからコスト削減を狙ったのかも知れません。しかし、そのおかげでここでキッチリと無限遠位置のアタリを付けておかなければ、最後に無限遠が出ません (合焦しません)。少々厄介ですね・・。

RO5018(1022)18ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で15箇所のネジ込み位置があるのでここをミスッてもダメですね。上の写真のようにヘリコイド (オス側) をネジ込んでいって、無限遠位置のところに底面が到達しているかを確認しておきます。

RO5018(1022)19この状態でひっくり返して「直進キー」を組み付けます。上の写真の矢印のところに直進キーが1つだけ組み付けられます。他の光学メーカーでは両サイドに1本ずつの合計2本の直進キーを組み付けるのですが、NikonとMINOLTAは1本だけです。「直進キー」は、距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目になるので、すべての負荷がここに集中しますから相当な自信が無いと1本ではトルクムラが生じます。

上の写真では過去のメンテナンス時にマーキングされた刻み入れが直進キーの右隣にあります。直進キーの組み付け位置は手前側のネジ穴でも共通なので、恐らく直進キーの位置をマーキングしたのだと推測できますが、もしもそうだとすると過去にメンテナンスした人は「プロ」ではないですね・・。

鏡筒をセットすれば、自ずと無限遠位置の確認はもちろん、直進キーの位置まですべてが決まりますからマーキングする必要すらありません。

RO5018(1022)20鏡筒を組み込んで無限遠位置まで落とし込んだ状態の写真です。このようにすべての連係パーツの位置決めは「確定」してしまいます。逆に言うと、この位置が違っていたら、この後の組み上げは一切できません。しかし、ヘリコイドを解体してグリース交換ができて、鏡筒を抜いてのマーキングまでしているので、相応のスキルを持っている人です・・ちょっと意味不明ですね(笑)

RO5018(1022)21こちらが距離環やマウント部を組み付けるための基台になります。

RO5018(1022)23基台をひっくり返して撮影しました。既に当方での「磨き研磨」が終わっています。この部位には絞り連動系や絞り環連係系のパーツがいくつか組み付けられますので、それらが「接する面」の磨き研磨を実施した次第です・・余計な負荷が掛かりません。

RO5018(1022)24実際に連動系、連係系の各パーツを組み付けました。もちろんこれらパーツの「磨き研磨」も終わっていますから、必要以上にグリースを塗布することはしません。経年の使用でグリースのせいで逆に腐食してしまいます。

RO5018(1022)25マウントをセットします。らしくなってきましたね・・。

RO5018(1022)26絞り環を組み付けます。

RO5018(1022)27必ず「原理原則」を考えつつ、或いは観察しつつ作業は進めていきます。工程の手順を知らなければ恐らくここで絞り環を固定してしまったり、或いはベース環に組み付けて鏡胴を完成させてしまうと思います。しかし、上の写真のようにこのモデルには「プレビューレバー」が装備されています。このプレビューレバーは絞り環を後からセットすることができない構造なので、先に絞り環を組み付けなければイケナイ手順なのです。ここでプレビューレバーの機構部をセットします (先にセットすると絞り環が入りません)。

RO5018(1022)28ようやく基台をベース環にセットできます。実は最初バラす際に、絞り環とプレビューレバーの外しの時に、その周囲を確認しました。理由はヘリコイドのグリース入れ替えの処置が雑だったからです。過去にメンテナンスした人が「ブロ」ではないならば、絞り環とプレビューレバーの外し作業で難儀した「痕跡 (スレやキズ)」が残っていると考えたからです。しかし、そのような痕跡は残ってはおらず、且つ絞り環もプレビューレバーも一度外した痕があります・・と言うことは、過去にメンテナンスした人は「プロ」レベルの人だったことになりますが、ヘリコイドのグリース入れ替えは「手を抜いた」ことが確実となりました。

最近オーバーホール/修理を承っていると、時々こう言うことがあります。整備作業をしていて問題が発生し、依頼者に問い合わせすると過去に「○○カメラ店で一度整備した」と返事が返ってきたりします。相手は「プロ」ですから、当方などは足元にも及ばないのですが、いくらプロでも「手抜き」は良くありませんね・・。

RO5018(1022)29ここでようやく絞り環用の「固定環」をセットできます。梨地仕上げのメッキ加工ですがやはり「光沢研磨」をしてあります。当初絞り環がガチャガチャ鳴っていたのは、この固定環の締め付けがキッチリできていなかったからなので (バラす前に既に判っていましたが)、ここでキッチリ調整しました。しかし、僅かなガタつきは残っており、これ以上きつくすると絞り環操作に影響が出ます。

RO5018(1022)30距離環を「仮止め」した後に光学系をセットして、無限遠位置確認、光軸確認、絞り羽根の開閉幅確認をそれぞれ行えば完成間近です。絞り羽根の開閉幅は当初狭かったので、正しい開閉幅に調整しています。

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ここからは組み上げが完成したオーバーホール済の写真になります。

RO5018(1022)1前玉裏面に施された「アクロマチックコーティング (AC) 」による「淡いエメラルドグリーン色」の輝きがとても美しいですね・・。光学系はこの裏面のAC部分の極微細な点キズや劣化が僅かに見受けられます。当方では清掃できないので、触っていません・・。それ以外の前玉表面と第2群以降後玉まではキレイに清掃を施しました。

RO5018(1022)2貼り合わせレンズのバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) も進行していないので大変クリアな状態を維持しています。まだまだ数十年は問題なくご使用頂けます。

RO5018(1022)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。今回は当方による着色などは一切しておりません。

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RO5018(1022)7指標値の褪色なども発生しなかったので、清掃により鮮やかさを取り戻しています。また鏡胴やマウント部は一部に経年の表層面のカビなどが発生していたので、「光沢研磨」を施しすべて除去しています。

 内部の構成パーツは、ヘリコイドも含めてすべて当方にて「磨き研磨」を施しているので、ほぼ生産時の環境に近づいた状態に戻っています。また、使用したヘリコイドグリースは、距離環を回す際は「僅かに重め」なのにピント合わせをする時は「とても軽いチカラ」でス〜ッと吸いつくように微妙なピント合わせができることを最優先した粘性を選択しています。過去に落札されたオールドレンズやオーバーホール/修理を承ったオールドレンズなど、その後「このトルク感がクセになる」「ピント合わせを意識させないシットリした動き」などとお褒めを頂き、ありがたいことに「リピーター」になって頂いている方々も最近は多く、感謝の念に堪えません・・ありがとう御座います。

RO5018(1022)8絞り環のクリック感も調整してありますので (銅板パーツで強さを決めているため) 程良いクリック感になっていると思います。またフィルター枠端の「銀飾り環」部分も光沢研磨をしてありますので、ちゃんとアクセントになっています。

これらの「光沢研磨 (筐体外装面)」或いは「磨き研磨 (内部パーツ)」などは、すべてメッキ加工の表層面だけを研磨していますので、時間が経てば (十数年) 放置していた場合には再びカビが生じたり腐食の原因などになります。

RO5018(1022)9光学系後群もレンズを1枚ずつ清掃済です。

RO5018(1022)10当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。鋭いピント面を構成しながら、このようなマイルド感タップリの画造りがミノルタの素晴らしさですね・・ライカに通じる描写性です。

今回のオーバーホールご依頼、誠にありがとう御座いました。また機会がありましたら是非宜しくお願い致します。

※今回のオーバーホールご依頼では整備作業の工程写真と解説をご希望でしたので掲載しています (有料です)。