◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) Cassarit 50mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
 『Cassarit 50mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)』です。


Steinheil München製オールドレンズで、特に戦後すぐに登場した1950年代あたりのモデルは同じモデル銘で幾つものバリエーションが存在するので本当によく分かりません(笑)

今回初めての扱いになるゼブラ柄のCassarit 50mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)』ですがその登場時期を探っていくと行き着く先は一眼レフ (フィルム) カメラの発売時期になるワケでフィルムカメラが好きなワケではないカメラ音痴の当方にとっては、本当に毎度のことながら苦痛を伴う探索だったりします(笑)

↑上の写真は一番左端だけが今回扱うCassarit 50mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)』になるワケですが、しかし2番目は鏡胴に「Edixa Reflex」刻印がワザワザあしらわれています。さらに3枚目に至るとカタチもデザインも全て全く同じなのにモデル銘が「Auto-Cassaron 50mm/f2.8 zebra (M42)」に代わり、一番右端はとうとう「Steinheil-EDIXA-Auto-Cassaron 50mm/f2.8 zebra (M42)」と全く別モノのような印象に変わってしまいました。

モデルバリエーションの変遷としてこのまま捉えてしまって良いのか否か、モデル銘まで変わっていくとなるとなかなか単純に納得できません。

ドイツ語なのでモデル銘は「Cassarit (カッサリート)」と読みますが、実は世界規模でゼブラ柄オールドレンズが流行る一世代前のシルバー鏡胴時代には、この「Cassarit」は一眼レフ (フィルム) カメラ用ではなくレンジファインダーカメラ向けの標準レンズとして存在するのみでした。

そこで一眼レフ (フィルム) カメラを探っていくと戦前に創設されていた「Wirgin (ヴィルギン)」社の存在が浮かび上がりましたが、ナチスのユダヤ人迫害を逃れて1936年に創設者はアメリカに渡っています。

戦後すぐに旧西ドイツで会社を再建し1955年に一眼レフ (フィルム) カメラ「Edixa REFLEX (エディクサレフレックス)」を発売しますが、この時用意されていた標準レンズの中にはまだゼブラ柄のオールド レンズがありませんでした。

1957年時点のカタログをチェックすると、すべてのオプション交換
レンズ群がシルバー鏡胴時代のモデルばかりなのが分かります。

これらオプション交換レンズ群を供給していた光学メーカーはいずれも旧西ドイツの会社ばかりでSchneider-KreuznachやSteinheil München、ISCO-GÖTTINGEN、A.Schacht Ulm、VOIGTLÄNDER、或いはKilfitt Münchenなどでした。

1959年になってようやくゼブラ柄モデルの標準レンズが登場します。

左写真は1959年当時の「Edixa REFLEX」シリーズの総合カタログでモデルタイプが「」まで用意されていたのが分かります。

この中で「type 」が登場したのが1959年になり初めてゼブラ柄の標準レンズがセットされています。

↑こんな感じで「Edixa REFLEX」シリーズはA〜Dまでのバリエーションが存在していたようです (上の写真は現在のネット上でチェックできたサンプルなので装着レンズはバラバラ)。

従ってず〜ッと悶々としながら探っていましたがようやくスッキリできました!(笑)

左のカタログのとおり1959年に登場した「Edixa REFLEX-D」の セットレンズがゼブラ柄へと変わっている事になり、シルバー鏡胴 モデルからゼブラ柄への変遷時期として非常に有力な年度を弾き出したと言うワケです(笑)

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シルバー鏡胴時代からゼブラ柄時代へと移りゆく変遷を一眼レフ (フィルム) カメラを追うことで導き出し、且つモデル銘の変化まで捉えることができましたが、然しこのモデルの「特異性」は実はその描写性にあったりします(笑)

光学系は3群3枚の典型的なトリプレット型構成のように見えますし、実際ネット上で解説されている案内を見てもどのサイトも全て「3群 3枚トリプレット型構成」としか記載がありません(笑)

右の構成図が最も現在のネット上で確認できる唯一の構成図になりますが、実はこの構成図はレンジファインダーカメラ向けに供給されていた頃の「Cassarit 50mm/f2.8 silver (M39/L39/exakta/PRAKTINA)」の構成図なのです。

今回扱うモデルも含めた「Cassarit 50mm/f2.8 zebra」から最後の「Steinheil-EDIXA-Auto-Cassaron 50mm/f2.8 zebra」に至るまでの光学系設計は、正しくは右図になります。

確かにこれだけ載せられれば典型的な3群3枚トリプレット型構成にしか見えないのですが、バラさずとも「距離環を回して繰り出して いる最中の後玉の状態をチェックすれば一目瞭然!」何と後玉は位置が変わらずに動いていないのです(笑)

右構成図で 部分の光学系第2群と絞りユニットを挟んで第3群の2枚の硝子レンズが「固定のまま」なのです!(驚) もっと言うのなら 部分の第1群 (前玉) だけが距離環の駆動で繰り出し/収納をしている「特異な光学設計」を採っているのです (グリーンの矢印)。

その結果、3枚玉トリプレットの良さである「現場の雰囲気 (記憶色) 相応の鋭いピント面
逆に言えば3群4枚のテッサー型光学系のようなカリッカリの鋭さではない中にも画全体的に洗練された (少々大人しめな) まとまり感で収まる画造りとは「天と地の差の如く別モノの描写性」とでも言いましょうか(笑)、飛んでもないクセ玉なのだと言いたいくらいです。

よくもここまで3枚玉トリプレットの画をギッタギタに崩してくれたもんだ・・と評価する べきなのか呆れるべきなのか!😱



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して収差ボケへと汚く滲んでいく様をピックアップしていますが、Cassaritだけで探すとほとんど見つからないのでAuto-Cassaron銘のほうで検索しています。はたしてこれだけシャボン玉ボケや円形ボケを表出できるのか否か疑念が残ります。

二段目
破綻した円形ボケは次第に収差の影響を色濃く受けて乱れた背景ボケへと変わっていきます。今回の仕上がった個体で開放実写しても同じでしたが一番右端の写真のように確かに被写界深度が相当狭く感じました。

三段目
左端の写真のように白黒写真になると俄然別モノのようなダイナミックレンジの広い階調幅で画を残します。一方カラーだとコントラストが高く出るかと思いきやほとんどの場合で「低コントラスト」と階調幅、ダイナミックレンジが狭いようにも見えます。

もしかしたらこのモデルは白黒写真になると別モノと言う「二重人格者」なのかも知れません(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造はSteinheil München製オールドレンズの中にあっては簡素なレベルで構成パーツ点数も少なめなのですが、実はこのモデルはバラした後に元通り組み戻せるのかどうかが相当ヤバいです!(笑) 特に絞り連動ピンの機構部については逐一写真にでも撮って記録しておかない限り、まず以て正しく組み上げられないのではないでしょうか。その意味では「高難度モデル」に入る「原理原則」を熟知している整備者向けとも言い替えられます。

従ってオールドレンズは単純に内部構造が簡素なのか、構成パーツ点数が少ないのかだけで判定するのは相当危険だったりします (よくあるパターンですが簡単だと思い込んでバラしたが元に戻せない)(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:メス側) です。上の写真は前玉側方向から撮っているのですが、実は絞りユニットはこの反対側からセットされます。

↑今度は後玉側方向から同じ鏡筒 (ヘリコイド:メス側) を撮影しました。ご覧のように後玉側方向から絞り羽根を組み付ける設計を採っています (絞り羽根の位置決めキーが入る5個の穴が見えている)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑絞りユニットを最深部にセットしたところです。「開閉環」に「開閉キー」と言う突起棒が飛び出ているので、それを左右に動かすことで絞り羽根がダイレクトに閉じたり開いたりする制御方法を採っています (グリーンの矢印)。

また鏡筒の中腹には切削して「自動/手動制御部」の各構成パーツがセットされる場所が用意されています。

↑さっそく機構部を組み付けましたが、マウント面から飛び出る「絞り連動ピン」はこのモデルでは単なる金属棒ではない「複合構造」の棒状ピンになっています。

毎回いつも思うのですが、本当にSteinheil MünchenやSchneider-Kreuznach、A.Schacht Ulm、ISCO-GÖTTINGENなど凡そ旧西ドイツの光学メーカーは「まともに簡単な設計で作ってくれない」と呆れるばかりです(笑)

どうしてこのように難しく複雑な動きや微調整なのかと、設計者を呼び出して散々文句を垂れたくなるくらいです!(笑)

ハッキリ言って旧西ドイツの光学メーカーは挙って各社の設計技師が「複雑さ」を競っていたのではないかと勘ぐりたくなるほどに、各モデルごとに一貫性の無いバラバラな設計概念で作っています。これだけ様々な設計概念が顕在してしまえば、確かに企業利益はまるで滝の如く遙か下に流れ落ちていってしまうのが容易に想像できます(笑)

一貫性を保たせてモデルの変遷と共に合理化に努めていった当時の日本製レンズの光学メーカーの設計概念が、本当にキラキラと煌めいて思えてなりません(笑)

絞り連動ピン」の動きに従い、或いは逆にA/M切替に従い、もっと言えば「レリーズケーブルでシャッターボタン押し下げの瞬間」まで含めた「三つ巴の動きに完全対応させた」制御機構部がまさにこの場所になります。

他のもっと画質に影響が出る光学系の設計などにお金とコストを掛ければ良いものを、なんでこんな制御系の箇所にこだわって「三つ巴」にしたがるのか、まるッきし設計者の意図するところが見えませんね!(笑)

↑基準「▲」マーカーの指標値環を組み付けたところですが、実はこの指標値環の取り付け場所はイモネジ固定なので一箇所に決まっていないと言う曖昧さです(笑)

実際に過去メンテナンス時に付けられたであろうマーキングの跡を頼りに組み上げると、何とちゃんと動かなくなると言う始末で本当にイモネジ固定の恩恵として「ちゃんと微調整して位置を決めてね」と言う (設計者の) 陰の声が聞こえてきそうです(笑)

↑一つ前の基準「▲」マーカーたる指標値環の反対側を撮影しました。反対には「A/M切替スイッチ」が用意されており、単なる棒状の突起棒であるスイッチツマミを左右にカチカチと動かすことで「自動 (Autom.)」と「手動 (N.Autom.)」の絞り羽根制御切り替えができるようになっています (ブルーの矢印)。

なおこの鏡筒の前玉側方向には、内側に「ヘリコイドメス側」のネジ山が切削されて用意されています (グリーンの矢印)。もっと言うなら「ヘリコイドのオスメスがここだけしか存在しない」ワケで、だから簡素な構造になっていたワケです (一般的なオールドレンズは距離環用のネジ山とヘリコイドオスメスのネジ山の2種類が存在する)。

↑実際に「A/Mスイッチ」を「自動 (Autom.)」にセットした時 (赤色矢印) の絞り羽根の動き方を撮影しました。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」の押し込み動作に従い (ブルーの矢印①) 開閉環を掴んでいる「開閉アーム」が左右に首振り運動するので (ブルーの矢印②) 絞り羽根が閉じたり開いたりします。

↑今度は逆に「手動 (N.Autom.)」操作にセットした時 (赤色矢印) の絞り羽根の制御方法を撮影しました。絞り羽根の開閉動作が手動のマニュアル操作になるので「絞り連動ピンの動きは関係が無くなる」から絞りユニット内部は「開閉アームが左右に動くだけ」に限定されます (ブルーの矢印③)。これは「絞り環操作」することで絞り羽根が開いたり閉じたりする仕組みです (絞り環の設定絞り値に連動した動き方/チカラの伝達)。

↑上の写真は実際に絞りユニット内部の「開閉アーム」が「開閉環から飛び出ている開閉キーの金属棒をガシッと掴んでいる様」を撮影したところです。「コの字型の爪がある開閉アーム」がブルーの矢印③のように左右に首振り運動することで、ダイレクトに絞り羽根が閉じたり開いたりする設計です。

↑ベアリング+スプリングを組み込んでから絞り環をセットしました。

↑マウント部を組み付けて、ちゃんと楕円に空いている「絞り値窓」に設定絞り値が見えるようになっています。

この後は距離環を組み込んでから光学系を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ハッキリ言って簡単そうに見えて実は「高難度モデル」だったりするそのほとんどの要素は「制御機構部」だけみたいな、ちょっと意味不明のこだわりに付き合わされているような錯覚を覚えてしまうオールドレンズです(笑)

要は「何でこんなに難しく作るのョ?!」(怒)と言うお話です。

海外オークションebayでも年間で数本しか出回らない、ある意味キチョ〜な「Cassarit銘」モデルとも言い替えられます。逆に言うと「Auto-Cassaron銘」のほうが頻繁に出ていたりするので、特にこだわらなければどうって言う話ではありません(笑)

↑光学系内の透明度が高い状態を維持した個体ですが、そうは言っても3枚玉なのでクリアなのは第2群だけの話です(泣)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。残念ながら前玉表面側のコーティング層が経年劣化しています

↑光学系後群と言っても後玉だけなので、やはり前玉同様コーティング層の経年劣化が相当進行しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。やはり後玉表面側のコーティング層が経年劣化しています

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:13点、目立つ点キズ:9点
後群内:18点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い4ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
前後玉表面にコーティング層経年劣化に伴う微かなクモリ浮き上がります(順光目視できず)。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内パッと見で微細な塵/埃に見える「気泡」がありますが当時は「正常品」として出荷されていました(写真には影響ありません)。前述点キズにカウントしていますがキズではありせん。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
(光学系の仕様から多少コントラスト低下します)

↑5枚の絞り羽根もキレイになりA/Mスイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・マウントアダプタ装着時ピン押し底面タイプを使っても絞り連動ピンの位置が異なる為押し込まれないことがあります。その時はA/Mの切替スイッチを「M(手動)」でお使い下さい。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑ヘリコイド (オスメス) が一対しか存在しない設計なので距離環を回すトルク感は「軽め」の印象です。そうは言っても最短撮影距離:80cmなので距離環の駆動域自体が少なめですが、ピント合わせ時のピントの山が掴みにくい分、操作性が軽いと助かります。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑一応ハクバ製MCフィルターを新品で買って附属品としてセットしました (後キャップも附属)。

↑「絞り環」を回すと設定絞り値がカチカチとクリック感を伴いつつ「絞り値窓」にちゃんと表示されます。また基準「▲」マーカーの▲部分も切り欠きで窓になっていて「自動時はホワイトで手動時はレッド」と色が変わるようになっています。

↑鏡胴の反対側を撮影しました。A/M切替スイッチのツマミと共にレリースソケットも用意されているので、ここにレリーズケーブルをネジ込んだ場合、ちゃんとシャッターボタン押し下げ時に連動して絞り羽根が瞬時に設定絞り値まで閉じます (レリーズケーブルネジ込んで挙動確認済)。もちん前述のとおり「自動時はホワイトで手動時はレッド」に基準「▲」マーカーの三角窓の色が変わります。

↑さて、ここからマウントアダプタに装着した時の解説です。よく当方が頻繁にこのブログでも「M42マウント規格とは何ぞや」と文句垂れていますが(笑)、実はこのモデルもまさしく「いったいどのM42マウント規格なの?」と言いたくなるような設計なのです。

当方所有のK&F CONCEPT製第二世代のM42マウントアダプタ (SONY用) に装着してみました。

↑「M42マウント規格」ですがネジ山の内側に「ピン押し底面」と言う、オールドレンズのマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」を強制的に押し込みきってしまう為に用意されている棚状の部分が上の写真で解説している箇所です (赤色矢印)。

拡大撮影するとこんな感じでM42マウントのネジ山のさらに内側奥に棚板状に内側に迫り出て飛び出ている部分が存在します。

この部分にオールドレンズの「絞り連動ピン」が当たるので、オールドレンズをネジ込んでいくと「絞り連動ピンが最後まで押し込まれた状態になる」ワケで、このようなマウントアダプタを「ピン押し底面タイプ」と呼んでいます。

↑実際に今回の個体をマウントアダプタにネジ込んで、カメラのマウント側方向から撮影したのが上の写真です。

何と「ピン押し底面の位置とは異なる場所に絞り連動ピンが飛び出ている」為に、結局オールドレンズを最後までネジ込んであるのに「絞り連動ピンは一切押し込まれないまま」と言う状況です。

M42マウント」は規格なのだから、全てのM42マウントのオールドレンズで同じハズと頑なに言い切る方が時々いらっしゃるのですが(笑)、いえもっと言うなら「このオールドレンズだけ違うのはアンタの整備が悪いから!」とまで言い切る人も居ますから(笑)、甚だ恐れ入ってしまいます。

確かに整備したのは当方ですが、はたして「絞り連動ピンの位置は整備とは関係無いと思うのですが・・」と言っても聞く耳を持たない人が居ます(笑) 要はキャンセルして返品したいのかお金を返してほしいのか、値下げ要求する人なのかという結末だったりします(笑)

まぁ〜、確かに信用/信頼が皆無な当方なので、そのような要求があれば必ず従っていますから「何かしら因縁付ければ安くなる/キャンセルもできる」ワケです!(笑) 一度お試しあれ・・!(笑)

M42マウント規格」なのですがご覧のとおり「絞り連動ピンが外れた位置」なので (いわゆるEDIXA仕様)、このモデルに用意されている「A/M切替スイッチ」の有難味が大きくなる次第です(笑)

要は「手動 (N.Autom.)」で使ってくださいと言うお話なのですが、例えばギリギリ「絞り連動ピンに接触する/干渉する」マウントアダプタだったりすると、手動操作で使おうとしても絞り羽根の挙動が不安定だったりしますから、ある意味「マウントアダプタとの相性問題がある」とも言い替えられますからご留意下さいませ。

ちなみに当方所有の日本製マウントアダプタに装着すると、まさにピン押し底面がこの個体の複合絞り連動ピンの縁に干渉してしまうので、絞り羽根の挙動が自動/手動いずれでも不安定です (完全開放しなかったり最小絞り値まで閉じなかったり再現性も無く不安定)(笑)

はいッ!そうですね、もちろん日本製のマウントアダプタなので設計も切削精度も非常に優れていますから、確かに皆様仰るとおり当方の整備が悪いのだと思います(笑) そういう事で 結論しましょう! (いわゆるEDIXA仕様という話でしょうか?)(笑) M42マウントならどれも同じと言い切る方は、どうかご落札頂かないようお願い申し上げます!(笑)

それらの問題は一応当方の整備の問題ではないと認識しているのですが、因縁付ければ気が弱いのでどうにかなりますからご落札者様だけは損することが絶対ありません!(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離80cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

開放からイキナシまるッきしのピンボケ写真を載せているように見えてしまいますが(笑)、実は撮影の時にちゃんと手前側ヘッドライトの本当に電球の中心部分 (凡そ実測で1mm程度の範囲) にしかピントが合っていないので、写真になるとご覧のようなピンボケにしか見えません(笑) つまり開放f値「f2.8」ながらもそれだけ被写界深度が相当狭いのだと言うお話です。

また同時に最短撮影距離:80cm位置で撮影した開放実写なので、光学系内の状況がどうなっているのかと言えば「前玉が最も繰り出されて伸びきった光路長の状態」と言えますから、この時の入射光で写真に使われている範囲は前玉の中心部分により集中していると言えますから、距離がもっと遠ければまた違う写り方の写真になると思いますね。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。そもそも最初からコントラストが僅かに低めですが(笑)、この絞り値ではさすがに「回折現象」の影響も表れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。