◎ Schneider – Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) Edixa – Xenar 50mm/f2.8 zebra《中期型》(M42)

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schneider-1966100毎月30本前後のオーバーホール/修理ご依頼を承っていますが、当方は基本的に「転売屋」なのでヤフオク! への出品がメインになります。従ってオーバーホール/修理の承り分の作業が遅延しており皆様には大変申し訳御座いません。出品の合間を縫ってにはなりますが可能な限りご案内済の期間でお届けするよう努めますので今暫くお待ち下さいませ・・誠に申し訳御座いません。

今回オーバーホール済で出品するモデルはSchneider-Kreuznach製「Edixa-Xenar 50mm/f2.8 zebra (M42)」になります。広角レンズのゼブラ柄35mmや標準レンズではクロームメッキのシルバー鏡胴モデル、或いは後期型の黒色鏡胴モデルなどは今までに整備した経験があったのですが意外にもゼブラ柄のほうは今回が初めてでした。内部構造などは一応把握しているのですが相当に複雑で調整箇所が多いモデルであり整備作業には相当な時間を要します。市場の価格に当方のオーバーホール価格 (基本料金:8,000円+難度追加料金) 13,000円〜15,000円を足すと状態の良い個体を手に入れられる分お得かな・・と言う価格設定での出品です。

このゼブラ柄のモデルに関して言えば、市場に出回っている個体には絞り羽根の開閉異常や距離環を回すトルクが重い個体、或いは絞り連動ピンとの連係が上手くいかない個体や光学系の状態が良くない個体など多く見受けられますが全てはこのモデルの設計の拙さに起因しています。どう言うワケかSchneider-Kreuznach製オールドレンズに限らずSteinheil製やA.Schacht Ulm製などゼブラ柄モデルの内部設計にはどう考えても「簡素化/合理化→利益の追求」と言う方程式が欠落していた時代が長かったような印象を持ちます。今回出品する個体も同様で富岡光学製オールドレンズのような「意味不明の構造」は一切無いのですが、どちらかと言うと「後出し方式」的な工夫が随所に見られ当時の売れ行きからも一貫した設計思想に拘っている時間的な余裕が無かったように感じます。

戦前の1935年頃にはrobotカメラ用モデルを発売していましたから相当な歴史を有するモデルですが今回の出品に際し50本ほどのサンプルをネット上 (海外オークションのebay) で調査してモデルバリエーションを調べてみました。

【モデル・バリエーション】(M42マウントに限る)
オレンジ色文字部分は最初に変更になった要素を示しています。

xn5028s%e5%88%9d%e6%9c%9f%e2%91%a0初期型−Ⅰ:1935年〜
絞り機構:手動絞り (実絞り)
絞り値:f2.8〜f16
最短撮影距離:75cm
絞り連動ピン:無し
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :無し

xn5028s%e5%88%9d%e6%9c%9f%e2%91%a1初期型−Ⅱ:1954年〜1957年
絞り機構:手動絞り (実絞り)
絞り値:f2.8〜f16
最短撮影距離:75cm
絞り連動ピン:無し
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :無し

xn5028s%e5%88%9d%e6%9c%9f%e2%91%a2初期型−Ⅲ:1957年〜1958年
絞り機構:プリセット絞り
絞り値:f2.8〜f22
最短撮影距離:75cm
絞り連動ピン:無し
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :無し

xn5028z%e4%b8%ad%e6%9c%9f%e2%91%a0中期型−Ⅰ:1958年〜
絞り機構:半自動絞り
絞り値:f2.8〜f22
最短撮影距離:50cm
絞り連動ピン:有り
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :無し

xn5028s%e4%b8%ad%e6%9c%9f%e2%91%a1中期型−Ⅱ:1960年〜1967年
絞り機構:自動絞り
絞り値:f2.8〜f22
最短撮影距離:50cm
絞り連動ピン:有り
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :有り

xn5028z%e4%b8%ad%e6%9c%9f%e2%91%a2中期型−Ⅲ:1965年〜1967年
絞り機構:手動絞り (実絞り)
絞り値:f2.8〜f22
最短撮影距離:40cm
絞り連動ピン:有り
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :無し

xn5028z%e5%be%8c%e6%9c%9f後期型:1967年〜
絞り機構:自動絞り
絞り値:f2.8〜f22
最短撮影距離:40cm
絞り連動ピン:有り
自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) :有り (ツマミ/小を装備)

・・こんな感じです。この中で見てみると「中期型−Ⅲ」のタイミングで再び手動絞りに戻して発売していますが筐体サイズが変わり薄い全高になると同時に最短撮影距離も40cmに改善されました (光学系も再設計)。その上で後期型の黒色鏡胴では自動絞りを装備してきていますから、この時期はSchneider-Kreuznachに限らず旧東西ドイツの光学メーカーは日本製オールドレンズの台頭を迎え打つタイミングでもあり相当厳しい環境 (出荷台数と利益とのアンバランス) の中で生産していたのかも知れません。

それはこれらのオールドレンズをバラしてみると自ずと見えてきます。初期型の時代では他社光学メーカー同様の構造化でしたがゼブラ柄が流行り出すと生産数量も増大し新たな設計で作り直す時間は無かったようです・・結果、後出し/付け足し的な設計変更の要素が見受けられます。しかし後期型に至ると内部の構造化は簡素化/合理化がある程度進められ利益の追求に (ようやく) 目が向けられたようにも見えますが、それは裏を返せば日本製オールドレンズに席巻されていたことの証左かも知れません。

xn5028z%e6%a7%8b%e6%88%90光学系は典型的な3群4枚のテッサー型ですからピント面の鋭さは折紙付きです。しかし、このモデルの最大の魅力は何と言っても「シュナイダーブルー」とも言われるシアン寄りに振れた発色性から来る非常にスッキリした印象の画作りです。プラスα独特なボケ味も相まってとてもリアルでインパクトのある写りとフツ〜ならばノッペリした写りに堕ちる低コントラストのシーンでも階調の豊かさを存分に示してくれる素晴らしい描写性が特質モノです。当方がゼブラ柄に弱いので良さそうな個体を見つけると手を出してしまいますが、実は当方が感じている魅力はその描写性のみならず特異な内部構造にもあるのです・・後ほど解説していきたいと思います。

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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

xn5028z102011ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。まずバラして一番最初に感じるのはパーツ点数の多さです。それぞれの環 (リング/輪っか) には必ず固定用のイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) が用意されており、且つ細かい部品を固定するネジも多く相当な点数になります・・このモデルの歴史の中ではゼブラ柄>シルバー鏡胴>黒色鏡胴の順で簡素化されています。

ちなみに上の写真では真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製/ガンメタル) のパーツがとても美しく黄金色に輝いていますがバラした当初は黄金色のパーツなどはひとつもありません・・すべて真っ黒 (限りなく黒色に近い焦茶色) です。当方による「磨き研磨」によって本来の黄金色に戻っているワケです(笑)

xn5028z102012絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。今回のモデルをオーバーホールしようと決めた時、既にこの内部構造のことは覚悟していましたが、現在に於いてこのモデルの不具合を誘発している根本的な問題箇所が2つあります。

1つめがこの鏡筒でヘリコイド (オス側) のネジ山が用意されていますが鏡筒にヘリコイド (オス側) のネジ山が備わっているのは特に珍しくもありません。しかし、このモデルでは特異な目的のために用意されています (後ほど出てきます)。

2つめは絞り羽根の制御方法です。この制御方法を好んで使っていたのは、どちらかと言うと旧西ドイツ側の光学メーカーのほうが多いような印象を持っています。

xn5028z102013上の写真は5枚ある絞り羽根の中から2枚を並べて撮っていますが左側の絞り羽根に「金具」が付いています (右側はフツ〜の絞り羽根形状)。この金具部分は絞り羽根に打ち込まれているので外すことは一切できません・・これは絞り羽根の角度を制御する際に使っている「カム」なのです。

xn5028z102014こちらは鏡筒の前玉方向から差し込んで使う鏡筒の「メクラ環 (被せて見栄えをよくしている蓋のような役目の環)」なのですが実際には絞り羽根の角度を決定する「絞り羽根開閉幅制御環」になっています。上の写真のなだらかなカーブ部分を先ほど出てきた「カム」の金属棒が沿って移動することで絞り羽根の角度が決まり開いたり閉じたりをしています。

xn5028z102015このような感じでメクラ環がセットされます。つまりこの鏡筒は絞り羽根の開閉システムを鏡筒の裏側に装備している他社光学メーカー品とは真逆の設計で内部に機構部を持たせてしまっています。それ故に絞り羽根の1枚にダイレクトに「カム」を装備させなければならなかったのです。

そして、それが現在に於いて「絞り羽根の開閉異常」を来す根本原因を作っています・・絞り羽根が経年の油染みなどに拠り長期間放置されて負荷が増大し、絞り羽根に打ち込まれている「キー (金属製の突起棒)」が変形して角度が変わってしまうとカム部分の絞り羽根だけが異なる動きをしてきます。何故ならば絞り環を回したチカラの全てはこの「カム」1箇所に集中してくるからで他の絞り羽根とは性格 (役目) が異なっているためです。

xn5028z102016この状態で鏡筒をひっくり返して撮影しました。鏡筒の裏側はとてもシンプルで「棒バネ」と言う1本の真っ直ぐな金属製のバネをグルッと鏡筒の周りを回して固定させることによって「元の真っ直ぐな状態に戻ろうとするチカラ」が蓄えられます・・つまりバネの役目ですね。

そのチカラに拠って絞り羽根の開閉が勢いよく行われるのですが前述のとおり経年の油染みを放置したために絞り羽根のキーが変形して摩擦が増大し「この程度の貧弱な棒バネ」だけでは絞り羽根が動かなくなってしまうのです・・絞り羽根開閉異常ですね。

ちなみに「カム」は棒バネのチカラに拠って内側に勢いよく収納され、その時に前述の「なだらかなカーブ」の何処かに当たり、その際の勾配を基に絞り羽根の角度を決定しているワケです。カムが打ち込まれた絞り羽根は他の4枚の絞り羽根全て同時に動かさなければイケナイので負荷が大きくなるのは当然です。この構造がシュナイダー製オールドレンズの独特な設計であり問題の根本原因でもあるのです。

xn5028z102017今度は鏡筒を横方向から撮影しました。絞り羽根の駆動は「5個の鋼球ボール」によってクルクルと回るようになっているのですが前述の特異なカタチのカム付絞り羽根に負荷が架かってくると、この鋼球ボール方式の駆動すら問題を引き起こす要素のひとつになってきます・・スムーズに回ってくれないどころか下手すれば鋼球ボールが経年の揮発油成分に拠り錆びついてしまっています。今回の整備でも2個の鋼球ボールを何と磨くハメに陥りました(笑) 何しろ非常に弱いチカラしか及ぼさないのが「棒バネ」ですから可能な限り全ての「負荷」を低減させておきたいワケです。もちろん「磨き研磨」で真鍮製のパーツなども平滑性をシッカリと取り戻しています。

さて、この鏡筒を横方向から撮った理由はヘリコイドのネジ山 (オス側) をご覧頂くためです。僅か5mmほどの長さ (距離) しかない薄いヘリコイド部分になります。このことを覚えておいてください。

xn5028z102018こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台です。相当大きく豪華な造りの基台です(笑) フツ〜のこの当時のオールドレンズですと基台はこの3分の1ほどの高さしかありません。どうしてこんなに深い基台が必要なのかが前述のヘリコイドのネジ山に繋がってきます。なお、基台の側面に用意されている「穴」は各絞り値で鋼球ボールが填り込む「絞り値キー」でカチカチとクリック感を実現するための穴です。

xn5028z102019このモデルは内部に使われているほとんどの構成パーツが「真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製/ガンメタル)」なのでズッシリと重みを感じる部品です。上の写真は真鍮製のヘリコイド (メス側) を組み付けた状態で撮っています。基台の内側 (それも上のほうの位置) にセットされるのですが、何とこのヘリコイド (メス側) は「空転ヘリコイド」になっており何処までもクルクルとフリーで回るようになっているのです。しかし、ご覧のとおり3箇所を専用の爪金具で引っ掛けて基台の内側に止めています・・いえ、正確に言えば「ブラ下げている」と表現したほうが分かりやすいかも知れません。

真鍮製の重い空転ヘリコイドを爪を3個も使って保持させる・・と言うのがどれほど「負荷が増大する」のかと言うお話です。従って過去のメンテナンスでは (少なくとも1回は行われています) グリースをタップリ塗って逃げたようですがバラした当初は相当量の腐食やサビが生じていました。「磨き研磨」によって最大限の平滑性を担保しスムーズに回るようにしている次第です。

xn5028z102020ブラ下がっているヘリコイド (メス側) に先の完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で15箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

さて、ブラ下がっている真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製/ガンメタル) のヘリコイド (メス側) にやはり鏡筒が上のほうだけでさらにブラ下がりました・・これが問題なのです。このモデルは「懸垂方式」と言う直進ヘリコイドの駆動方法を採り入れており距離環を回すと鏡筒が繰り出される従来の動き方ではなく鏡筒自体が直進動して出てきます。上の写真のブルーの矢印のように直進キー (距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツ) が上下動すると一緒に鏡筒が同じ量だけ直進動するワケです。

距離環との連係は真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製/ガンメタル) のヘリコイド (メス側) だけになりますから (他には一切固定されていない)、ブラ下がっているヘリコイドと鏡筒を距離環でダイレクトに動かしている (しかも摘んで動かしているような) イメージになります。当然ながら経年劣化に拠る腐食をそのままにしておけば抵抗が増大し (摩擦が増大し) 距離環を回すトルクに不利なのは当たり前です。ましてや距離環との連係が1箇所だけと言うのも回すチカラが片側に架かってくるワケですから余計にトルクには悪影響を来します・・つまりヘリコイドのネジ山や懸垂させている爪部分の腐食や摩耗などがすべて距離環の駆動時にトルクムラとして表れてきます。

xn5028z102021工程を進めます。絞り環用の最も根本的なベース環である「C型」の真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製/ガンメタル) を正しい位置にセットします。

xn5028z102022このモデルの独特な仕組みである「被写界深度インジケータ」の機構部がここに入るワケですね。今回のモデルは中期型の中で透明な環 (リング/輪っか) を備えているモデルですので、ここで透明環をセットします。「Ι」マーカー位置で割れていたので接着しています。絞り環を回すとインジケータが上下して被写界深度を示す「領域」に変化が出て促してくれる仕組みです・・なかなかのギミック感ですね。

xn5028z102023絞り環をセットします。実はこのギミックな被写界深度インジケータを装備したことによって本来必要ない抵抗が絞り環にまで架かってきます。絞り環の内側で基台に接触している部分の腐食やサビなどは、そのまま鋼球ボールのクリック感を阻害する要因になってきますから経年の時間を経た当レンズの場合には「絞り環の操作が重い」と言う症状にもなります。

xn5028z102024こちらはマウント部内部の写真ですが既に連動系・連係系パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。特にこのモデルの場合は「絞り連動ピン」の動きが最大限に滑らかでないとイケマセン・・鏡筒の裏側にある「棒バネ」との関係から必要なのです。

上の写真で平坦な無垢のアルミ材が向き出しになっている場所には自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) の機構部がセットされます。ここもやはり平滑性が必要になりますが当初バラした時点ではサビが一部に生じていました。

xn5028z102025スイッチ部や絞り連動ピン、或いはレリース機構部なども全て個別に「磨き研磨」してからセットします。

xn5028z102026仕上がったマウント部を基台にセットします。丸窓が用意されており、そこに自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) の設定状態を示す「A (自動)」「M (手動)」表示が出てきます。スイッチの操作は少々硬め (重め) です。

xn5028z102027マウント部にはM42のネジ山が切削されているワケですが、何とこのモデルには筐体の指標値位置をレンズ側で調整できるよう配慮が成されています。今回は一応フィルムカメラに装着して「Ι」マーカーがちゃんと真上に来るように位置を決めてマウント部をセットしています。当方所有マウントアダプタ (K&F Concept製) でもシッカリと指標値が真上に来ていました。こう言う配慮を廉価版の格付である今回のモデルにまでちゃんと施しているのはさすがです・・それにしても調整範囲 (上の写真のギザギザ部分) が随分と長いですね(笑) M42マウントはフィルムカメラだとそんなに相性の問題があるのでしょうか??? 当方はフィルムカメラのことは全く無知です (興味関心が無い)。

xn5028z102028なお、返品やクレームしてくる人が居るので敢えてここで解説しておきます。この当時の (特にゼブラ柄モデル) Schneider-Kreuznach製オールドレンズでは絞り連動ピンに特異なカタチと仕組みの機構を装備しているので上の写真のように今ドキのM42マウントアダプタ (ピン押し底面を有するタイプ) に装着すると底面部分にギリギリ架かるかどうかと言う状態になります。従ってマウントアダプタによっては絞り連動ピンが架かりきらずに飛び出てしまう場合もあり「相性がある」と言えます。これを理由に返品やキャンセル・値引など一切のクレームは受け付けませんのでご留意下さいませ。

また同様にマウント面の出っ張り度合いに拠っても相性が生じて隙間が発生する可能性があります。従って可能であれば「非ピン押しタイプ (ピン押し底面が無い)」M42マウントアダプタに装着して、ちゃんと自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) を「M (手動)」でお使い頂くのが最も無難です。もちろんマウント面に隙間も生じず絞り連動ピンもシッカリ押し込まれているのではあれば「ピン押しタイプ」のM42マウントアダプタでも構いません。その際は自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) の設定は「A/M」いずれでも正しく機能します。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

xn5028z10201完璧なオーバーホールで仕上がりました。このモデルが整備済で出回ることは非常に希ですので探していた方はこの機会に是非ともご検討下さいませ。そもそも整備をしているプロのカメラ店様や修理専門会社でも、不具合の箇所だけをチャチャッと直して完了扱いですから完全な解体をしてオーバーホールするのは、このモデルの場合は相当な覚悟が必要です。それほど部品点数が多く、且つそれはイコール「調整箇所が多い」ことになるワケで好きこのんでオーバーホールしたいとは考えないハズです(笑) 当方はゼブラ柄に反応してしまうので仕方ありません。それでもこのモデルの構造化を理解していればこそ予め平滑性を必要とするパーツなどはキッチリと時間を掛けて「磨き研磨」を施しているので最低限のグリースしか塗らずに済みます。

距離環を回して鏡筒が直進動するのを見ればオモシロイですし被写界深度インジケータもギミック感タップリです。しかも丸窓付ですからゼブラ柄だけでもキレイでウットリなのにピッカピカに「光沢研磨」してあるので惚れ惚れするようなゼブラ柄に仕上がっています。その手のファンの方にはゼッタイのお勧め品・・逸品です。開放f値が「f2.8」だからと侮ってはイケマセン・・確かに「f1.9」のモデルのほうがボケ味はトロトロですが最短撮影距離45cmではマクロ撮影にもなりませんし今回出品するモデルのほうでも魅力は充分だと考えています。

xn5028z10202前後玉のコーティング層の状態が経年相応ですが光学系内の透明度は高い部類です。少なくともLED光を照射しても薄いクモリすら見受けられません (汚れは極僅かにあります)。

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xn5028z10202-3上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。3枚すべて極微細な点キズやカビ除去痕、或いは極薄い微細なヘアラインキズ、コーティングスポットやコーティング剥がれなどを撮っています。いずれも前玉なので写真への影響には至りません (逆光撮影でも影響なし)。

xn5028z10209光学系後群もバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) も無くとてもクリアな状態を維持しています。

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xn5028z10209-3上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。3枚共に極微細な点キズやカビ除去痕、或いは極薄い微細なヘアラインキズ、コーティングスポットやコーティング剥がれなどを撮っています。いずれも写真への影響には至りません (逆光撮影でも影響なし)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:20点以上、目立つ点キズ:14点
後群内:13点、目立つ点キズ:9点
コーティング層の経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
LED光照射時の汚れ/クモリ:あり
LED光照射時の極微細なキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。光学系内には数本の極薄い微細なヘアラインキズがあります。その他コーティングスポットやコーティング剥がれなどもあります。
光学系内の透明度は非常に高い個体です
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細なキズや汚れなどもあります。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

xn5028z10203絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。このモデルでここまで完璧な絞り羽根の駆動をするメンテナンスが完了している個体はあまり見かけないと思います。ちなみに絞り羽根にはフッ素加工が施されていますが経年のサビ除去痕は微かに見受けられます。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が極僅かに感じられる個体ですが鏡筒は「磨き」をいれたので光沢ブラック部分の輝きも戻っていますし、もちろんゼブラ柄ローレット (滑り止め) 部分の輝きも当時の状態に近い艶めかしい光彩を放っていますから、その手のファンの方には絶品だと思います。少なくとも当方は酒の肴にしてました (ちゃんと直接触らずに透明ケースに入れてですよ)。

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xn5028z10207【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通〜重め」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・距離環を回しているとネジ山が擦れている感触を感じますが構造的な問題なので改善はできません。
・構造上、自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) の操作は僅かに硬めです。
・被写界深度インジケータ環のプラスティック材が基準マーカー辺りで割れていたために接着しています (元々ネジ止め固定されている仕様です)。
・この当時のシュナイダー製オールドレンズの設計上の問題ですが絞り連動ピンが僅かに内側に位置しているためM42マウントアダプタ (ピン押しタイプ) に装着してもマウントアダプタによっては絞り連動ピンの位置がピン押し底面まで届かないことがあります。マウントアダプタとの相性なのでクレーム対象とはしません。非ピン押しタイプのマウントアダプタをご使用頂き、且つ自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) を「手動 (M)」に設定してお使い頂くほうが無難です。ピン押し底面を有するM42マウントアダプタによってはマウント面に僅かな隙間が発生する為やはり非ピン押しタイプM42マウントアダプタへの装着がお勧めです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

xn5028z10208Schneider-Kreuznach製オールドレンズに共通するスッキリ感のある画造りは独特な仕上がりになりますね・・いわゆる「元気の良い発色性」ではなく「寒色寄り」でもありません。あくまでも写りはニュートラルで誇張感や違和感が無いので不思議です。しかし、それでもやはり写真の中にブルーが入ってくると何とも表現できない美しい色合いが出てくるのが堪りませんね・・個人的には好きなモデルです。テッサー型で開放f値を押さえている分、その写真は失敗の無い仕上がりが期待できるワケで普段使いのオールドレンズにはピッタリだと考えます。そしてこのモデルで是非ともお試し頂きたいのは低コントラストに於ける階調表現の幅の広さです・・白木の木製品 (テーブルや床) などを日中の陽だまりの中で撮ってみると、その凄さがご理解頂けると思います。質感をシッカリとキープしているのは本当にさすがであり単にテッサー型だからと言うだけではない何かがあるのかも知れません。シュナイダーブルー・・素敵ですね。

ちなみに距離環はダイレクトにヘリコイド (メス側) を駆動させているワケですが距離環のローレット (滑り止め/ジャギー部分) のすぐ上の斜め状にカットされている「飾り環 (すぼまった径の黒色の環)」は基台側に固定されています。つまり、この飾り環に押さえ込まれた状態で距離環が回る構造になっているのも抵抗を増してしまう要因のひとつになっています・・逆に距離環の指標値部分 (の輪っか) は単に距離環にブラ下がって固定されている固定方法なので、距離環に架かっている負荷は相当な量になります。経年を経たこのモデルの個体に距離環のトルクムラが多いのも納得できるのではないでしょうか・・。

距離環を回すトルクは滑らかであり、絞り環の操作性は確実なクリック感を伴います。絞り連動ピンとの連係や絞り羽根の開閉に於いてもシッカリと正しく機能しており自動/手動スイッチ (A/Mスイッチ) の設定による切り替えも確実に行われています。前後玉の経年劣化が相応に進んでいますが写真に直接影響するモノは無く光学系内の透明度は非常に高い部類ですから、申し分のない整備で仕上がりました。

xn5028z102010当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ミニカーのプラスティック製部分 (筐体) とライターの金属部分との質感の相違がシッカリ出ており素晴らしいです。