◎ Vivitar (ビビター) AUTO WIDE – ANGLE 28mm/f2.5《後期型》(M42)

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VV2825レンズ銘板

logo-Vivitar-100②ヤフオク! に出品するオールドレンズは、出品しても1カ月しないうちに次から次へとご落札頂くので、オーバーホールが間に合いません・・嬉しい悲鳴です。

今回出品のモデルは、アメリカの「Vivitar」と言うブランド銘の広角レンズです。Vivitarブランドは、そのほとんどを日本製レンズによるOEM製品で賄っています (僅かに韓国製やドイツ製のモデルも存在します)。

Wikipediaによると「AUTO WIDE-ANGLE 28mm/f2.5」に関しては、製造番号の先頭2桁が「22」で始まっているモデルは「キノ精密工業製」と解説しています。今回のオーバーホールではこのモデルの「後期型」を整備しましたが、実はもう1本「初期型」も後日組み立てをします (既にバラして内部の構造化と構成パーツを確認済)。

【モデル・バリエーション】

  • 初期型:フィルター径:Ø 62mm、距離環ローレット:金属製、キノ精密工業製造
  • 後期型:フィルター径:Ø 67mm、距離環ローレット:ラバー製、キノ精密工業製造
  • 最終型:フィルター径:Ø 58mm、距離環ローレット:ラバー製、トキナー製造

また、製造メーカーに関しては、以下のような解説があります。

【製造番号の内訳】

VV2825製造番号②

製造番号は、当初8桁で始まり後には9桁に拡張されています。

  • 製造メーカー:
    (1969年〜1990年まで使用)
    6:オリンパス光学
    9:コシナ
    13:Schneider Optik
    22:キノ精密工業
    25:Ozone Optical
    28:コミネ
    32:マキナ光学
    33:浅沼
    37:トキナー
    42:Bauer
    44:Perkin Elmar (US)
    47:チノン
    51:東京貿易
    56:共栄商事
    75:HOYA光学
    81:Polar
  • 製造年度:製造年の下1桁目
  • 製造週:年間52週の製造週
  • 製造シリアル値:製造時のシリアル値

今回の個体の製造番号は「No.22xxxxxxx」なので「キノ精密工業製」と言うことになります。しかし、バラしてみると内部の構造化から使用されている構成パーツに至るまで、すべてが「富岡光学製」であることが確認できました。

従って、富岡光学によるOEM製品をキノ精密工業に納品し、キノ精密工業で組み立て工程を行っていたのか、或いはレンズ銘板を附加してアメリカ向け輸出していたのか・・というイメージになるのではないでしょうか。「富岡光学製」であることは、今回の「後期型」のみならず「初期型」でも全く同様でした。逆の言い方をすると、富岡光学製とは考えられない構造化や構成パーツが一切存在しないと言えます。

描写も富岡光学製モデルの写りと同じ傾向を感じます。被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さや、距離感や空気感までも感じる立体的な表現性、現場の緊迫感や臨場感までも漂わせるリアル感など、どれをとっても素晴らしい画造りです。今回の個体は「後期型」ですので僅かに前期型と比べて諸収差の改善が見受けられますが (コーティングの色合いが異なります)、それでも逆光時には盛大なゴーストやハレ、玉ボケなどが出て開放では二線ボケ傾向があるなど、オールドレンズの愉しさを堪能できるモデルではないでしょうか・・ある意味ジャジャ馬的な性格の持ち主です。

VV2825仕様②

VV2825レンズ銘板

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

すべて解体したパーツの全景写真です。

VV2825(0304)11ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

VV2825(0304)12絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在します。まずはこの鏡筒自体が富岡光学製モデルと同一の仕様に基づくパーツです。

VV2825(0304)136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。絞り羽根の上から被せている「絞りユニットのメクラ蓋」も当然ながら富岡光学製モデルと全く同一の仕様で、且つメクラ蓋の固定方法も同じです (鏡筒外側からイモネジで締め付け固定)。

VV2825(0304)12-2鏡筒の裏側 (つまりマウント側の方向) から撮影しています。モデルとしてマウントが異なる場合には、この鏡筒の右側や上側に写真のマイクロ・スプリングやアームなどが位置できるように考えられており、マウントの種別に関係なく「共通パーツ」として作られている鏡筒なのが判ります。

VV2825(0304)14距離環やマウント部を組み付けるための基台です。

VV2825(0304)15ヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。このモデルには「無限遠位置調整機能」が備わっているので、ここでのアタリ付けは大凡で構いません。

VV2825(0304)16ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず)、再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

VV2825(0304)17こちらはマウント部内部の写真です。既に連動系・連係系パーツを外してあり、当方による「磨き研磨」も終わっています。

VV2825(0304)18外していた連動系・連係系パーツを組み付けます。これらのパーツも同様に「磨き研磨」が終わっています。このマウント部内部に使われている連動系・連係系パーツなども、他の光学メーカーに富岡光学がOEM出荷していたモデル、例えばヤシカやチノン、コシナなどのオールドレンズと全く同一のパーツ (一部は形状まで同じ) が使われており、キノ精密工業がそれらパーツを「ワザワザ同じ形状と仕様で設計することは考えられない」のは理に適った考え方だと思います。従って、キノ精密工業製との判断には至らないですね。

VV2825(0304)19マウント部を基台にセットします。

VV2825(0304)20絞り環をセットした状態の写真ですが、この段階では鋼球ボールなどはまだ組み込みできません (単に絞り環を置いただけです)。どうして「置いただけ」なのかは次の写真になります。

VV2825(0304)21自動/手動スイッチを組み付けたところです。このスイッチ部をセットしてしまうと「絞り環」が後から入れることができない構造なのです。従って、先に絞り環を「入れ込んでおく」必要があるワケです。

VV2825(0304)22ここでようやくマイクロ・スプリング+鋼球ボールを組み付けて絞り環が完成します。絞り環にはマイクロ・スプリング+鋼球ボールを入れる場所は存在せず、上の写真のように薄い厚みの「絞り環用の固定環」をセットしてイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) で締め付け固定しますが、マイクロ・スプリング+鋼球ボールは、この「絞り環用の固定環」の中に組み込むようになっています。

この方式を採っているのも富岡光学なので、外観から判断する場合にはこのマウント面の「薄い厚みの固定環」と「イモネジ」による固定かどうかを確認すれば「富岡光学製」なのがすぐに判ります。

この「薄い厚みの固定環」の固定位置をミスると、絞り環を回しても絞り値とクリック感が一致しなくなります (つまり調整が必要な箇所です)。

VV2825(0304)23指標値環をセットして、絞り環の絞り値との位置合わせを行います。

VV2825(0304)24距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行った後、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットして完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

VV2825(0304)1日本国内では発売されなかった輸出用モデルなので、市場ではそれほど頻繁には出回りませんが、写りが良くそのジャジャ馬的な描写性が人気で、まさしくオールドレンズらしい楽しさを堪能できるモデルです。

VV2825(0304)2光学系内は非常にキレイで、且つ透明度も高く良い状態をキープした個体です。LED光照射にて確認しても経年のコーティング劣化に拠る薄いクモリが皆無です。ちなみに、光学レンズ格納筒の仕様も富岡光学製モデルと全く同一です。

VV2825(0304)2-1

VV2825(0304)2-2上の写真 (2枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目は極微細な点キズを撮っています。2枚目は第2群の外周附近にある極薄い微細なヘアラインキズ3本 (長2本、短1本) を撮りました。

VV2825(0304)9光学系後群も大変キレイです。

VV2825(0304)9-1上の写真は、後群のキズの状態を拡大撮影しています。極微細な点キズがある程度です。

光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:12点、目立つ点キズ:8点
後群内:10点、目立つ点キズ:5点
コーティング経年劣化:前後群なし
カビ除去痕:なし、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。順光目視で前群の第2群に極薄いヘアラインキズが3本あります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした (当レンズは薄いクモリも無く透明度が高いです)。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。

これらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣 化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)

光学系内については、何でもかんでも「カビや塵・埃、拭き残しと決めつける方」或いは「LED光照射した状態をクレームしてくる人」は、当方ではなくプロのカメラ店様や修理専門会社様などでオールドレンズのお買い求めをお勧めします。当方のヤフオク! 出品オールドレンズの入札/落札や、オールドレンズ/修理のご依頼などは、御遠慮頂くよう切にお願い申し上げます。
当方には光学系のガラス研磨設備やコーティング再蒸着設備が無く、キズやコーティングの劣化が全く無い状態に整備することは不可能です。

VV2825(0304)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が少々感じられる外観ですが当方の判定では「美品」としています。

VV2825(0304)4

VV2825(0304)5

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VV2825(0304)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドのグリースは「粘性:中程度」を使用。
距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環のトルク感は滑らかに感じ僅かにトルクのムラがあります。距離環指標値0.5m前後で僅かに重く感じるトルクのムラがあり、最短撮影距離0.4mではゴリゴリとヘリコイドの擦れを感じる場所もあります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。トルクは少々軽めの感触になります。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「美 品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

「磨き研磨」は極力グリースの類の塗布を少なくして、今後の経年使用に於いても「揮発油成分」が光学系まで回らないよう配慮した処置です。それは既に光学系、特にコーティングの劣化が相応に進行しており、さすがに硝子材だけはいくらメンテナンスと言えども、おいそれと何度も研磨することはできません (せいぜい当初生産時諸元値の1%以下程度までしか研磨できません)。それを考えるとグリースを塗ったくったり、或いは液化の早い滑らかな (粘性が軽めな) グリースばかりを好んで使うのもどうかと思いますが・・。

その意味では、使い倒すつもりならば整備する必要は無いでしょうし (スルスル回るのは既にグリースの限界が来て液化が始まっているからです)、少しでも長く使うならば整備したほうが良いコトになります (グリースを入れ替えるワケですから、トルクはそれなりに変化します)。その辺のリスクが分からない (気がつかない) 方が最近は多くなってきました・・当然ながら、当方のスキルレベルは低いですから、完璧な整備を望まれる方は「プロのカメラ店様/修理会社様」に整備をご依頼されるのが最善かと思いますヤフオク! に出品しているオールドレンズの入札/落札も、このブログをご覧頂き「オールドレンズ/修理」のご依頼をされるのも、すべてスルーして頂くようお願い申し上げます

それでもヤフオク! の当方評価に「非常に良い/良い」をお付け頂ける方がいらっしゃるのは、或いは「オーバーホール/修理」のご依頼を頂けるのは、市場に出回っているオールドレンズの状態を既にご存知だからです。問題なのは、このブログが検索でヒットして「オーバーホール/修理」のご依頼をされる方々の中で「認識」「感覚」が「プロのカメラ店様で販売しているオールドレンズしか知らない」と言う方々です。そのような方々からのご依頼では、トラブルになることが最近は多くなってきました・・ご勘弁下さいませ。何度も言いますが、当方の技術レベルは低いです・・

VV2825(0304)8独特な前玉が広がった形状の筐体ですが、それほど大柄でもなく使い回しには困りません。開放F値も「f2.5」と欲張った諸元で最大限性能を追求した光学系だと推察します。端正で優等生的な描写に飽きている方にはお勧めの逸品ではないでしょうか・・。

VV2825(0304)10当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。二線ボケも出ており少々甘いフォーカスですが、一段絞るとエッジが明確に出て鋭い描写に変わります。