◎ CHIOYODA-KOGAKU (千代田光学精工) Chiyoko SUPER ROKKOR 8.5cm/f2.8 ©《前期型》(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産は
千代田光学精工社製中望遠レンズ・・・・、
Chiyoko SUPER ROKKOR 8.5cm/f2.8 ©《前期型》(L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時の千代田光学精工社製中望遠レンズの括りで捉えても、今回扱った個体が「初めての扱い」になります。

以前よりこのモデルの存在を知っていましたし、何度か市場流通品をチェックした事もありますが、なかなか光学系内の状態に納得できず、手を出せず仕舞いに気がつけば時間だけが過ぎていきました(泣)

・・と言うのも、何しろこの当時の光学設計として考えても、各光学メーカーが必ずこの中望遠レンズ域の光学設計に「イキナシ第1群前玉が3枚の貼り合わせレンズで設計してくる」のが流行っていたとは、到底考えられなかったからです。

つまりそのような光学設計で製品化してきた勇気と言うか、気概とでも言うか、或いは意地なのか誇りなのかは別としても「少しでもクモリが確認できたら、相手が3枚ではどうにも対処できない」との懸念から、なかなか調達まで進みませんでした(涙)

・・そうなんです。後で光学系構成図を載せますが3群5枚という構成なのです。

確かにそれほどヤバい光学設計なのですが、そこから吐き出される画は何とも人の目で観たがままに自然に誇張感なく、脚色も演出も排除された、それでいて何か何処かにインパクトを漂わす「思わず/意図せず」魅入ってしまう魔力に溢れた写り方に、前からず〜ッと気になっていたモデルの一つなのです。

実はさらにもう一つヤバい要素がこのモデルには在って、それも調達を臆していた大きな理由です。今までに扱った事がないのであくまでも推測の域を出ませんでしたが、ネット上の決して多くはない情報を頼りにしても「鏡胴の全てが真鍮 (黄鋼) /ブラス製」なのが明白だからです。どうしてそれが調達を躊躇する理由になるのかと言えば「ヘリコイド駆動に経年摩耗が重なれば重いトルク感は解消しない」との経験値があるからです。

特に昨今ヘリコイド (オスメス) のネジ山に「白色系グリース」塗布が当たり前の如く流行っている現状を鑑みると、相手が黄鋼材のヘリコイド (オスメス) なら、塗布したグリースはすぐに「褐色化」してしまい当初の白色を維持しません (黄鋼材が削れた摩耗粉により褐色化して変質するから)。

それを知っているが為に、経年で摩耗してしまった黄鋼材ヘリコイドのトルク改善は、相当に厳しい話になるのが容易に予測できるからです(泣) 確かに同じ「白色系グリース」を再び塗れば良いのですが、それでは整備するたびに「製品寿命を短命化させている」話にしかならず、当方が自らの使命として捉えている「製品寿命の延命化」とは真逆の結果に至ります(涙)

・・それでは当方が居ない30年後まで延命できず、次代の整備者に合わせる顔がない(涙)

黄鋼材とアルミ合金材の組み合わせによるヘリコイドオスメスならまだしも (その場合先に摩耗して削れるのはアルミ合金材のほうだから) この当時のオールドレンズで筐体全てが真鍮 (黄鋼) 製/ブラス製ともなれば「間違いなく黄鋼材だけのヘリコイド (オスメス)」の為、調達時点で既にトルクが重くなってしまった個体を手に入れてもどうにも改善できません(涙)

・・その意味でも白色系グリースを使わない当方は自ら首を絞めているだけの話!(笑)

時々、自分で情けなく感じますね・・どうしてそんなに頑固なのかと!(笑) きっと巷では意固地になって「黄褐色系グリース」に拘っているバカな整備者 (モドキ) と笑われているのだと、容易に察しが付きますね(笑)

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MINOLTAの前身は相当古く昭和3年 (1928年) に創業者の田嶋一雄 (たしまかずお) 氏が 来日したドイツ人カメラ技術者のビリー・ノイマン氏と共同で「日独写真機商店」を創設したのが始まりになります (もう1人工場責任者のドイツ人が別に居た)。1931年に「モルタ 合資会社」に組織改編し1933年から「Minoltaブランド」を採用し始めて1937年に「千代田光学精工」としたようです (wikiより)。

戦後間もない1947年に発売された「Minolta−35 A」から始まるシリーズは1958年までシリーズの展開/発売が続きますがライカ判「24 x 36mm」のフルサイズに至ったのは最後のモデルだけで、当初は独自の「ニホン判24 x 32mm」サイズを採っていたようです。

これは135フィルムの36枚撮りで40枚〜41枚の撮影が適うようライカ判「24 x 36mm」より数ミリ短くすることで撮影枚数を増やす目的だったようです (印刷図書館倶楽部広場の「短命に終わったニホン判画面サイズ」より)。千代田光学精工の他に日本光学や東京光学に高千穂光学 (オリンパス) も即座に採用したようですが、肝心な海外欧米で採用されていたフォーマットがライカ判「24 x 36mm」だったが為に、輸出が叶いませんでした。

セットレンズは当初から「Chiyoko SUPER ROKKOR © 45mm/f2.8 (L39)」を標準レンズとして発売しています。

1948年には「Minolta−35 B」を発売しシャッタースピードの ダイアルから低速域のロックボタンを除去し、さらに合わせてフォーマットは「24 x 33mm」としています。

また低速域は1/5と1/10から1/4と1/8と設計を変更しています。

1950年には「Minolta−35 C」を発売しています。この時の
フォーマットは「24 x 34mm」へと再び細かく改変しています。

カメラボデイの両サイドに初めてストラップ用の吊り具ノブを備えた「Minolta−35 D」を発売します。

ところが1951年には何故かフォーマットを「24 x 33mm」に 戻したモデル「Minolta−35 E」を発売しています。
(右写真はEタイプ)

1952年にはフォーマットを「24 x 33mm」としたままで「Minolta−35 F」を発売しています。セルフタイマーの箇所に赤色刻印で「1 2 3」を附加させています。

いずれのモデルも輸出モデルではなかったようです。

1953年には「Minolta−35 MODEL II」が発売されファインダー枠の仕上げが梨地仕上げに変更され、且つ極僅かに開口部が小さく
なった印象が在ります。

その後1958年に最終モデル「Minolta−35 MODEL IIB」を発売、この時ようやくフォーマットがライカ判と同じ「24 x 36mm」を採用しました (右写真はMODEL II)。

またこちらのサイト「仙人が作ったレンズ」で大変感銘を受けましたが、千代田光学精工社に在籍していた光学レンズ設計者斎藤利衞氏、及び弟子の天野庄之助氏、特にこのお二人の素養と人柄に着目して細かく、且つ客観的に述べている解説はとても素晴らしく、今回の調査でも大変参考になりました。

↑上の写真 (3枚) は今回扱ったモデルのバリエーションを示す写真ですが、外見上の相違 (但し当然ながら内部設計が異なる) からしか捉えられず、具体的に光学設計の違いや内部構造の相違などは全て扱ってからでないと判明しません。モデルバリエーションが3種類顕在することが分かります。

左から「 前期型」中央「 中期型」右端が「 後期型」です。左端の「 前期型」タイプが今回扱った個体と同一ですが、仕様の相違は「光学系前群が鏡筒から独立 (赤色矢印)」点と合わせて「マウント部直前に丸みを与えた突出が在り凹んでいる (グリーンの矢印)」の2点についてモデルバリエーション上の相違点として判定が適います。

次に中央の「 中期型」から「 後期型」にかけては、独立していた光学系前群格納筒を廃止し、鏡筒内に光学系前群を格納する設計に変更しています (赤色矢印)。その一方でマウント部側は「前期型の設計を踏襲」なのが判定要素にあたります。

最後に右端の「 後期型」は光学系前群の格納方法は中期型に準ずるものの (赤色矢印)、マウント部の突出を廃止し「切削加工を簡素化した平面型に設計変更 (グリーンの矢印)」との相違点から判定できます。

←するとこれら筐体外装面から捉えた時の「製造番号との関係性」について、現在ネット上で確認できる掲載写真に限り30本をサンプルとしてピックアップして調査すると、左の一覧に仕上がりました。

製造番号「 31xx 〜 32xx」が「 前期型」に該当し、次に「 34xx 〜 48xx」が「 中期型」さらに「 51xx 〜 62xx」が最後に登場する「 後期型」と言えます。

上の一覧で「前群分割」の項目が一つ前の写真3枚で指し示している処の赤色矢印の内容を示し、且つ一覧で「マウント部」項目がグリーンの矢印を意味します。

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端から円形ボケの表出についてチェックしていますが、3群5枚の光学系構成ながら非点収差の影響が色濃く表れ真円の円形ボケ表出は相当難しい印象です。さらに円形ボケ自体の表出もその形の歪さに関係なく「そもそもエッジが強調されずすぐに滲んで消えていく」ようにも見えます・・結果、背景のザワツキは意外にも煩く残らないように感じました。

二段目
この段ではピント面の鋭さと共にその発色性、合わせて背景ボケとの関係性もチェックしています。4枚いずれの実写を観ても同じように写っていますが、背景ボケの滲み方が自然に感じられるので、それだけでピント面のインパクトが増しているものの、決して誇張感を与えていない印象に繋がります・・正直、このような写り方は当方の琴線にモロに触れまくりです(笑)

このモデルの実写をチェックしていて妙にリアル感を感じつつも、何処か自分の眼で見たがままの「まるで記憶色のように記憶画的に見えてしまっている」と言う、自分で観ていないシ〜ンなのに知っているような錯覚を覚える親近感が当方にとり共通項でした・・恐るべし!(驚)

三段目
さすがに中望遠レンズですからポートレート撮影はお手の物なのですが(笑)、どうも人物撮影での「人肌の表現性」に特に拘りが無いかの如く気にしていない光学設計のように見えてしまいます(笑) ところがこれら4枚の写真を観ていてフッと気づいたのですが「このモデルはもしかしたら光の表現性に長けているのかも知れない?」と即座に印象を抱きました。他のオールドレンズと比べて「画として残す時の光の料理方法がとても美味しい」みたいな感覚とでも言いましょうか・・上手く表現できませんが・・光の留め方に何か特徴があるように感じます。

・・これはまるで琴線をビンビン鳴らしまくってしまい即調達に走りました!(笑)

四段目
この段で何となく答えに至ったような感じなのですが、前述の「光の留め方」がちょっと違うような気がします。左端の何の変哲もないビルの写真がミョ〜にリアル感一杯で釘付けになるのが不思議です(笑) 合わせて残りの3枚の実写に写る光源の表現性に何某かの特徴を見出したように感じますが、皆様は如何でしょうか?

・・特に右端の写真はパッと見で即ロスに住んでいた頃を思い出したくらいリアルです!(驚)

実際ロス (ロサンゼルス) で、日が暮れていく時に街中を彷徨うとこんな感じに灯りが写るのですが、それをそのまんま写真として残してしまっている事に新鮮なオドロキを感じた次第です。これがニホンの街中での夜の通り写真になると、なかなかこんな趣ある灯りのニュアンスに成り得ません (ニホンだとどちらかと言うと白っぽく明るすぎるから/外灯という趣を感じにくいから)。

その意味でも2枚目の店内の暗がりにライトが浮かぶ雰囲気も同じですが、何か光の留め方にこの光学系は惹かれる要素がありそうです (一つ前の段のバンドの実写で洋服越しの光の写り込みなど鳥肌立ってしまった)(涙)

ただ単にピント面の鋭さの追求に安直に走らず、周りから攻めていって画の全体的な雰囲気と一緒にピント面を残すかのように (褒めすぎですが) 捉えてしまうくらいの、まるで「魔力」のようにさえ見えてしまいます(笑)

光学系は冒頭解説の通り3群5枚と言うとんでもない構成で、当方では変形トリプレット型と呼んでいますが、この呼称が正しいか否かは気にしていません (何しろ光学知識疎いので/自分で分かり易く捉えているだけですから)(笑)

右構成図はネット上で確認できる数少ない構成図を当方にてトレースした構成図です。

一方こちらの右構成図は、今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

光学系光学硝子レンズ各群との間隔、或いは絞りユニットとの距離まで含め実際にデジタルノギスで計測していますが、一つ前のネット上の構成図は本当に正確な各群の距離で示されていたことにオドロキでした!(驚)

今回扱った「前期型」では最後の第3群の両凸レンズは、特に絞りユニット側面の曲率が少ない設計だったのがネット上の構成図との大きな相違点でしょうか (結局各群全てに於いてサイズや曲率が極僅かに違います)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の写真のように1枚の写真でいきなり掲示すると、いとも簡単に完全解体が進んだかのように見えがちですが
・・トンでもありません(涙)

確かに参考になったサイトで解説を読むにつけ、設計者の斎藤利衞氏も天野庄之助氏も光学設計にはそれはそれは並ならぬ心血を注いだのでしょうが、如何せんハッキリ言ってこのモデルの内部構造と言うか設計概念はとても褒められません(泣)

当時の他社製オールドレンズをもう少し見習って設計した方が良かったのではないかと今さらながらに思います(泣) 少なくとも当時既にライバル意識が高かったであろう日本光学が用意した中望遠レンズ辺りの設計を、少しは参考にすべきかと思いましたね(泣)

何がダメなのかと言うと「ダブルヘリコイドの互いの連係方法」を簡素化したかったのかも知れませんが、それを理由に「操作性まで犠牲にする考え方」はハッキリ言ってどうにもこうにも納得がいきません!

このモデルは、何と「無限遠位置と最短撮影距離位置の両端でヘリコイドが終端に到達して詰まって停止する設計」と言う前代未聞の構造です。まぁ〜良く見積もっても当時確かに戦前ドイツでも「ヘリコイドのネジ山が終端に到達して詰まって停止する」設計は確かに顕在しましたが、それでも例えば無限遠位置方向だけ、或いは最短撮影距離位置だけで「両端で詰まって停止」はあまりにも使い勝手上で良い印象を持ちません。

何故かと言えば、撮影時に「もうすぐ無限遠位置で停止する」とか「後少し回すと最短撮影距離だ」など、ピント合わせの為に回している距離環のポジショニングを知って操作できるハズがありません・・同時に視界に入っていないんだから見えるワケがない!

従って回しているウチに「強めに詰まってしまい、次に反対方向に戻す時に固まっている」なんて言う操作性の悪さを「顧客に感じさせるその為体な設計」に腹が立つのです!

それが無限遠位置/最短撮影距離位置の片側だけならまだ許せるものの、両端で同じように詰まって、下手すればそこで固まってしまうなんて言うのはあまりにも酷い設計です。

・・光学系の設計が良すぎるだけに、このような操作性の悪さに腹が立って仕方ありません!

そこに輪を掛けて今回扱った個体は「無限遠位置ズレまくり!」でアンダーインフ極まりなく合わせて距離環を回すトルクときたら重いったらありゃしません (マウントのL39ネジ部が毎回操作していて勝手に回ってしまう)(涙) 終いにはガリガリと擦っているようなヘリコイドのトルク感さえ指に伝わり、どんだけヘリコイドのネジ山を痛めつけているのかと言わんばかりの酷い状況です(泣)

明確に「白色系グリース」が塗られていて、さらに悪いことにその相手のヘリコイドオスメスは「黄鋼材どうし」と最悪のパターンなのが、これらの操作だけですぐに分かります(怖)

・・何処ぞの当方と同業者たる『転売屋/転売ヤー』が潤滑油まで注入してしまったか?

そういう重さのトルクなので、いずれこのまま1年も経たずにヘリコイドのネジ山固着で「製品寿命を迎える運命」だった個体のようです(涙)

このブログで何度も何度も本当に執拗に述べていますが白色系グリース潤滑油のパターンはヘリコイド固着に至りオールドレンズには天敵!』なので、ゼッタイにダメです!!!

グリースも潤滑油も共に「潤滑剤」だから問題ないと安直に考える人が多いからこういう事になります(泣) どのような化学反応が原因なのか知り得ませんが「白色系グリース」に潤滑油が注入されると、早ければ1年内に、遅くても数年で異常なトルクの重さに至り、最後はヘリコイドのネジ山が咬んでしまい固着してもうどうにもなりません (次第に粘ってきてバラしてもまるで接着剤でも付けたかのように指にヘリコイドが貼り付いて持ち上げられるほどに異常な粘性を帯びる)(泣)

↑当方によるDOHの作業を始めてしまい、撮影を忘れていたのに気づき慌てて撮りました(笑) 上の写真はヘリコイド (メス側) 筒ですが、パーツの上の部分だけ既に「磨き研磨」を始めています。

当初バラした直後はご覧のように特に黄鋼材の構成パーツは全てが全て100%間違いなく経年の酸化/腐食/錆びにより「焦茶色」に変質しています。

↑当方によるDOH作業が終わり「磨き研磨」が完了した状態を再び撮影しました(笑) ネット上ではこのような当方の所為に対し「どうせ内部のパーツで外から見えないんだから、こんなに磨いてピッカピカにしても意味がない」と貶しまくりなバカなヤツが居ますが(笑)、ピッカピカにするのが目的ではありません。

特に黄鋼材の経年による酸化/腐食/錆びを可能な限り「磨き研磨」で排除して、グリースに頼らずに組み上げる事で製産時点に限りなく近い操作性に仕上げる事が最大の目的です(笑) ピッカピカに仕上がっているのは「あくまでも結果」でしかなく、その目的や根拠、理由をちゃんと述べているのに読もうとしません(笑)

ちなみに上の写真で「208」のマーキングは当方が施したのではなく、おそらく製産時の工程ライン上での個体識別番号ではないかとみています (製造番号の一部ではありません)。

↑今回は附属している「85mmのファインダー」もご覧のようにバラしてちゃんと綺麗に清掃しました。硝子レンズもクリアになったのでスッキリしたファインダーに仕上がっています(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、冒頭解説の通り今回のこの個体は「前期型」なので、完全解体写真のとおり「光学系の各群は一体モールド成形」で用意されています。もちろん全てが「真鍮 (黄鋼) /ブラス製」です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

←せっかくなので実装する10枚の絞り羽根がどんな色合いなのかを光に反射させて撮影しました。

このようにブル〜の光彩を放つメタリックな絞り羽根で「表裏面で対称型」ですから、1枚ずつ重ねる際は表裏が全く関係ありません。

また最初の完全解体写真を観ると分かりますが、光学系の各群の硝子レンズは「過去メンテナンス時に着色されていた反射防止黒色塗料を完全除去」しています。

当初バラす前のチェック時点で光学系内、特に第2群と第3群に相当な全面に渡るクモリが生じていたのですが、バラした後に清掃してみればシルボン紙に薄く紫色が残ったので「過去メンテナンス時に反射防止黒色塗料を塗っていたのが原因」と判明しました。

当然ながら仕上がった現段階は「光学系内はLED光照射でもスカッとクリアで薄いクモリすら皆無」です(笑) どんだけ過去メンテナンス時に塗りまくっている「反射防止黒色塗料」が悪影響を来しているのかご理解頂けるでしょうか?(笑) 「迷光」迷光と騒ぎ立てますが、そもそもその塗られてしまった「反射防止黒色塗料」のせいで肉厚が重なり「各群の光路長にズレが生じる」問題など頻繁に起きており (甘いピント面に至る)、且つ今回のように光学硝子レンズ面に具体的に「薄いクモリ」を帯びさせる因果関係にまで至っています。

・・いったいこれらの何処に整備した甲斐を見出せるのか整備者は説明してもらいたいです!

↑鏡筒最深部に絞りユニットがセットできました。上の写真で写っている「絞り羽根の前に被さっている黒っぽい環/リング/輪っか」は、実は「開閉環」で絞り環操作時に連動して回る環/リング/輪っかです。

ところがこの開閉環まで過去メンテナンス時に「反射防止黒色塗料」を塗ったくっていた次第で(驚)、いったいこの整備者は何を考えているのでしょうか?(笑) 実際溶剤を使いグデグデの塗料を全て除去したら、その下から現れたのは「ご覧のようにちゃんとマットで微細な凹凸を伴う黒色梨地メッキ加工仕上げが施されている」ワケで、いったいどうしてこの上にさらに「反射防止黒色塗料」を塗る必要があるのでしょうか???(驚)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。この角度から見るとよ〜く分かりますが、この鏡筒内部にまで「反射防止黒色塗料」塗られまくりでした(笑) 結局今回の個体はそれら過去メンテナンス時に塗られまくってしまった「反射防止黒色塗料」の除去作業になんと2時間を要してしまう始末で、本当にロクなことをしません!(怒)

鏡筒側面に切り欠き/スリットが備わりますが、ここにシリンダーネジが刺さり内部絞りユニットの「開閉環」と絞り環が連結するので、絞り環を回すとダイレクトに絞り羽根が開閉する原理ですね(笑)

↑絞り環用の「絞り値刻印の環/リング/輪っか」を差し込んで締付ネジで固定しました。ところが、過去メンテナンス時の整備者は全く注意深くなく、この環/リング/輪っかに2箇所用意されている締付ネジ用の穴に「位置が決まっている」事を見逃していました。

つまり当初バラす前のチェック時点で、何でなのか理由が不明でしたが「絞り環操作にトルクムラを感じる」状況だったのですが、その原因が何の事はなく「2箇所の締付ネジの穴の位置を一切考慮していなかった」過去メンテナンス時の整備者の不始末です(笑)

・・ちゃんと観察と考察ができていれば問題なくスルスルと軽い操作性で仕上げられる(笑)

↑実際に絞り環をセットしたところです。もちろんネジ込んでいくワケですが、ちゃんと何処の位置までネジ込むのが「一番絞り羽根に負荷が掛からないのか」考えて作業を進めたのかが問われる工程です。それは「開閉環」と絞り環が連結する位置をチェックすれば自ずと決まる話なのに、過去メンテナンス時の整備者はそこまで注意深く仕上げていません(笑)

ちなみに赤色矢印で指し示した位置に設定絞り値の目安となる基準「●」マーカーがちゃんと両サイドに刻印されています。するとこの位置と実際の刻印絞り値との位置が極僅かでもズレていたら「???」とならなければイケナイのに・・気づかないのですねぇ〜(笑)

↑完成した鏡筒をひっくり返して、今度は後玉側方向から撮影しています。ご覧のように「絞り羽根が顔出ししていて完全開放していない」のですが、ここに光学系第3群が入るとキッチリこの顔出しした絞り羽根の「内側に第3群がセットされる」ので、この絞り羽根の顔出しは設計上の仕様と言う話になります。

そして問題なのは「上の写真に写っている黒色の環/リング/輪っかが位置決め環」ですが、実はイモネジ3本で締め付け固定なので、固定する位置を微調整できる話になります。どうしてそのような設計にしているのかまで過去メンテナンス時の整備者は考えが及ばなかったようで(笑)、デタラメな閉じ具合にセットされていたのが当初バラした時の状況です(笑)

・・このように逐一テキト〜な整備の所為が白日の下に曝されていくのが現実の話です(笑)

↑絞り環までセットし終わった状態で再び前玉側方向から撮影しました。特に難しい処置は施していませんが、このモデルはヘリコイドオスメスの駆動が「回転式ヘリコイド駆動」なので、鏡筒も距離環の回転と共に一緒に回っていきます。従って絞り環操作時の絞り値目安が「両サイドに必要になる」から辻褄が合うワケですが(笑)、そこで一歩先に進んで事前に講じておく処置が在ります。

距離環を回してピント合わせが終わってからボケ具合を調整する為に「絞り環操作したらピント位置がズレる」のがこの回転式ヘリコイド駆動方式のデメリットです。何故なら、距離環と絞り環が共に連動して動くからですね(笑)

従って当方が仕上げる場合は「必ず距離環のトルクのほうを僅かに重く仕上げる」事により、ピント合わせ後に絞り環操作してボケ具合をイジッてもピント位置がズレにくく仕上げるのがポリシ〜です。

ところが、今回の個体は冒頭で解説したとおり「ヘリコイドのオスメス共に黄鋼材」であり、且つ「無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で詰まって停止する設計」なので、それを考慮する必要に迫られます。

・・然し最大のネックは当モデルのピントの山がまだかまだかとなかなかピークが来ない!

と言う問題です。つまりスパッとすぐにピント位置が決まらないので (ゆっくり徐々にピークを迎えるから) そのようなオールドレンズの距離環を回すトルクを重く仕上げると「なかなか思った位置でピントが決まらない (つまり前後動を頻繁にするハメに陥る)」と言う使い勝手の悪さに直結します!(泣)

さらに今回のモデルは中望遠レンズ域の焦点距離なので、鏡筒の繰り出し量/収納量が大きい_/長いために、重いトルク感の操作性は「使い辛さの何ものでもない」苦痛に至ります(涙)

従って当方が仕上げるべきは「軽い操作性に仕上げて、さらに絞り環の操作も軽く仕上げる両方採り」と言う高い難度の微調整で仕上げなければダメです(泣)

従って散々ここまで鏡筒や絞り環についてその作業を解説してきたのは、実はそのような背景が隠れていたからに他なりません。単にバラして組み上げるだけでは・・ダメなのですねぇ〜(笑)

↑この後は完成した鏡筒に光学系前後群をセットすれば鏡胴「前部」は完成なので、ここからは鏡胴「後部」の工程に移ります・・と言ってもご覧のとおり鏡胴「後部」は純粋にダブルヘリコイドのヘリコイド筒を組み立てれば良いだけですから簡単です(笑)

【鏡胴後部側構成パーツ】
直進キー筒ヘリコイドオス側 (外筒)
ヘリコイドメス側 (外筒)
距離計連動ヘリコイド筒 (内筒)
マウント部 (距離計連動ヘリコイドメス側)
指標値環 (基準▲マーカー刻印)

・・こんな感じの構成パーツです。と簡単なハズだったのですが、冒頭解説の通り当初バラす前の時点で既にアンダーインフ状態だったので、そもそもどの位置で無限遠位置にセットすれば良いのか調べなければイケマセン(泣)

同時にトルクムラまで起きていたとなれば、いったい何が因果関係で症状が発生していたのか突き止める必要があります (それを改善しない限りこのまま組み立てても再びトルクムラに陥るから)。

と言うことで、正しい無限遠位置でのヘリコイドオスメスのネジ込み、或いはトルクムラの原因、もっと言えば黄鋼材同士の経年に伴う摩耗 (と言うか過去メンテナンス時に塗布された白色系グリースのせいで摩耗した要素) などなど、いろいろを全て丸っと改善させて仕上げ、且つ前述のとおり「絞り環の操作とのトルクの関係性を図る必要あり」と言う・・ちょっと難度の高いオーバーホール工程へとひたすらに突き進んだ次第です(笑)

・・気づけば丸一日がかり (18時間) 取り掛かり、やっとのことで仕上がりました!(涙)

↑上の写真は何回目の組み直しの時に撮影したのかスッカリ忘れましたが(笑)、18時間の中で全部で22回組み直しているので、なかなかハードなオーバーホール作業に至ってしまいました(泣)

符番している番号 () は一つ前の構成パーツ番号です。こんな感じで互いに組み合わさり最後はもちろん合体しますが、これがそんな簡単な話ではないので厄介なのです(笑)

さらに冒頭解説のとおり「無限遠位置と最短撮影距離位置で互いに詰まって停止する設計」をいったいどうすれば「詰まって固まらずに操作できるよう仕上げられるのか?」までちゃんと考えて作業に臨んでいたので、気づけば22回のカウントに組み直し回数が達していました(笑)

・・技術スキル低いので、ひたすらに組み直していくしか手が無いという始末です(笑)

もちろんこの工程に至る前に各構成パーツはDOH作業が終わっているので、当然ながらにピッカピカですが(笑)、最低限のグリースだけを塗布して工程を進められます (つまりグリースに頼った整備ではないと言う意味)。

実は上の写真で距離計連動ヘリコイド筒の両サイドに「直進キーガイド」と言う切り欠き/スリットが備わるのですが、ここの開口部のサイズが設計段階で「極僅かに大きめに切削されている」が為に、製産時点で使っていたグリースの大凡の種別と成分が見えてきました (つまり黄褐色系グリースを使っていたのが100%間違いない)。

当然ながら、当方には同じ性質のグリースなど在りませんから、当方所有「黄褐色系グリース」で仕上げるしか手がありません。その分、完成した個体を操作すると「極僅かに前後動する遊びがある」操作性ですが、実際にそれでピント合わせしてみると「ピント合わせ時に違和感が起きないほどに前後動すると同時にピント位置もズレている」ので「遊びの分で使い辛い」にはなっていません。

・・ご落札者様お一人様だけが実感できますが、そういう操作性に仕上がっています(笑)

この後は完成している鏡胴「前部」に光学系前後群を組み込み、鏡胴「後部」にセットしてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当初バラす前にはいろいろ問題を抱えていたにもかかわらず、光学系内も含め納得できる仕上がりに至ったのは、確かに22回と言うとんでもない組み直し回数を経ましたが、それ相応の甲斐があったと自分なりに納得できています(笑)

・・願わくばご活用願えるご落札者様の手に渡らんことを!(涙)

↑当初在った薄いクモリはまるでウソのように消えてスカッとクリアに仕上がりました!(驚) 光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側にも第3群ですが、表裏面に薄いクモリが帯びていたのがまるでウソのようです(笑) 当然ながらLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

上の写真を見ると分かりますが、後群側の第3群はモールド一体成形ながら「既にモールド時点からコバ端に黄鋼材が金色に見えている」状況です。これは例えば現在市場流通している個体を見ても同じ状況ですから、モデルバリエーションによる違いもなさそうです。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:13点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:16点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大14mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回した時、無限遠位置(∞)、及び最短撮影距離側(4ft)共に、カツンと突き当て停止せずにグッと詰まった感触で停止します。これは内部の設計上の仕様なので改善しようがなくクレームの対象としません。特に無限遠位置/最短撮影距離位置の両端で強めに停止させると、反対方向に回す時にチカラが必要になりますから(詰まって停止している為)、ご留意下さいませ(クレーム対象に成り得ず)。
・距離環を回した時鏡筒の繰り出し/収納時に極僅かに前後動で遊び/ガタつきを指に感じますがこれも内部設計上の仕様です。特に直進キーやそのガイドなどの経年摩耗を確認できていないため、当初製産出荷時点からの状況と判定しています(従ってクレーム対象としません)。
・距離計連動ヘリコイドは当初位置のまま設定しています(当方には確認ができる環境ありません)。
・このモデルは距離環の繰り出し/収納時に鏡筒も合わせて回転していく「回転式ヘリコイド駆動」です。従って距離環を回してピント合わせ後に絞り環操作すると、その再ピント位置がズレてしまいます。f値「f2.8〜f8」までは絞り環操作しても距離環側がなるべく微動しないようにトルク調整して仕上げていますが「f8〜f16」の間は絞り羽根が互いに重なり合う時の抵抗/負荷/摩擦から距離環側が一緒に動きますからご留意下さいませ。絞り値を決めて設定してからピント合わせする使い方のほうが無難です。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製UVフィルター (新品)
本体『Chiyoko SUPER ROKKOR 8.5cm/f2.8 ©《前期型》(L39)』
純正金属製L38ネジ込み式後キャップ (中古品)
純正金属式⌀ 40.0mm専用フード (中古品)
純正金属製85mmファインダー (中古品/解体して清掃済)
純正本革製収納ケース (中古品)

附属品の中で特にmarumi製UVフィルターは「⌀ 40.0mm」なので、意外と探すのが大変だと思うので附属品として用意しました。純正の金属製フードやファインダーもちゃんと清掃してあります (磨きいれ済なのでキレイです)。

もちろん肝心な操作性も前述のとおり「距離環のトルクをちゃんと軽めに仕上げてもなお、絞り環側操作でピント位置がズレないようトルクのバランスに配慮して仕上げてある」次第です。そうは言っても「絞り値f8〜f16までは絞り羽根が互いに重なり合う為に距離環側が動いてしまう」ため、できれば先に絞り値を決めてからピント合わせするほうが無難です(笑)

その一方で、前述のとおり「ピントのピークを緩やかに迎える」ピント合わせになるので、それに最大限に配慮して軽い操作性に距離環を仕上げてあります。もちろん無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で詰まって停止するのは設計上の仕様なので仕方ありませんが、そこもちゃんと「磨き研磨」で微調整済なので、思ったほど詰まって固まったりしないよう処置してあります。

その意味ではこのモデル『Chiyoko SUPER ROKKOR 8.5cm/f2.8 ©《前期型》(L39)』の中では最も操作性の良い仕上がりに至っているハズです(笑) まぁ〜自分で納得できているのでそのように明言できるワケですが、それこそが22回の組み直しの成果とも言えます(汗)

確かに筐体が「真鍮 (黄鋼) 製/ブラス製」と381gですから重たいモデルですが、そのワリに中望遠レンズながら意外にコンパクトな造りなので、これはこれで使い出があるモデルだと考えます。

・・特に光の留め方が素晴らしい描写なので、是非ご堪能頂きたくご検討下さいませ!(涙)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑純正の金属製フードを装着するとこんなふうに相当長く見えますが、意外とコンパクトです(笑) UVですがちゃんとフィルターもセット済なので、このまますぐにご使用頂けます。

↑金属製フードには経年並のキズや擦れが残っています。金属製の後キャップもちゃんと磨きました!(笑) そういう一つ一つが「所有欲の充足感」に繋がっていくと信じています(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離1.2m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード装着済での撮影になります。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。極僅かですが「回折現象」の影響が現れ始めていて解像度と共にコントラストの低下が見られます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。