〓 Kamerabau-Anstalt-Vaduz (カメラバウ・アンシュタルト・ファドゥーツ) Kilfitt-Makro-Kilar D 4cm/f2.8 C ・・・ (silver)《後期型》(exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、リヒテンシュタイン公国は
Kamerabau-Snstalt-Vaduz製マクロレンズ・・・・、
Kilfitt-Makro-Kilar D 4cm/f2.8 C (silver)《後期型》(exakta)』
        です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で焦点距離「4cm/f2.8」の括りで捉えると累計で71本目にあたりますが、距離環を回し切った時の最短撮影距離が「5cm」と言う1:1の等倍撮影が可能な「タイプD」だけでカウントすると、今回扱った個体が40本目です。

他に1/2倍撮影のハーフマクロ「タイプE」が23本、さらに同様ハーフマクロながらも繰り出しがダブルヘリコイド方式になる「タイプA」が8本などを今までに扱っています。

それら扱ってきた個体の多くが今までに承ったオーバーホール/修理ご依頼分なので、実際にオーバーホール済でヤフオク! 出品してきた個体数は凡そ半数弱です。

オーバーホール/修理ご依頼の内訳を調べると日本国内が凡そ半数ですが、残りは海外の様々な国からのご依頼分で、アメリカやイギリスにオランダ、或いは本場ドイツの他、アジア地域からは懐かしい香港やシンガポールなどからもご依頼品が届くので、なかなか国際色豊かです。

今現在も「タイプD」1本のオーバーホール/修理ご依頼についてカナダから問い合わせを受けており、英文でメールのやり取りをしている最中です (届くのはおそらく年明けではないかとみています)。

ちなみに今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は「何しろ光学系の状態が凄まじくスカッとクリア」なので、おそらく今まで扱ってきた個体数71本の中で最高の部類に入ると思います。

逆に言うとマクロレンズなので光学系第1群の前玉が奥まった位置に配置されているものの、既に経年劣化進行から特に蒸着コーティング層の劣化「クラック/剥がれ/白濁化」が大きなリスクに至っています。従って海外オークションebayなどで調達するにも掲載写真だけを見て判断するには相当ハードルが高く、或いは光学系後群側の「貼り合わせレンズのバルサム切れ」もまるで当たり前のようにどの個体にも起きていたりしますから、なかなかポチッとする勇気が湧きません。

バルサム切れも貼り合わせレンズを剥がして再接着すれば十分改善を期待できますが、実は蒸着コーティング層の違いにより「貼り合わせ面のコーティング層に経年劣化の進行が現れてしまう」のがヤバいのです。多くの個体の場合で「貼り合わせ面の一方側に (たいていの個体で絞りユニット側方向の面) バルサム切れしていた領域に限って薄いクモリが残ってしまう」のでどうにもなりません(泣)

従ってせっかく一旦剥離してから再接着しても結局貼り合わせ面の薄いクモリは何ら除去できておらず、特にこのような3群4枚のエルマー型光学系構成となれば貼り合わせレンズの薄いクモリは致命的で「低コントラストな写りに堕ちてしまう」のが改善できません。

何処ぞの工業機械製造会社で「光学硝子レンズの研磨機械」を家庭サイズで開発してもらい、そこそこの価格で発売してほしいくらいです(泣) 合わせてコーティング層蒸着釜のコンパクト版もお願いして「薄膜蒸着」で構わないのでマジッで切望してしまいますね(笑)

なおこの当時の「Makro-Kilarシリーズ」は全てのモデルバリエーションで「筐体最前面端/レンズ銘板端から被写体までの実距離を最短撮影距離と表示していた」ので、当時の他のオールドレンズや今ドキのデジタルなレンズで言う処の「被写体と撮像面 (フィルムカメラならフィルム印画紙面/デジカメ一眼・ミラーレス一眼なら撮像素子面) 迄の距離を現していません」からご注意下さいませ。

マジッで被写体までレンズ銘板が5cmの空きしかないので、下手すると被写体が陰ったりしてしまいます(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はMakro-Kilar 4cm/f2.8 《後期型》(M42)のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。当初バラす前の時点ではヘリコイドの繰り出し時にトルクの重さとヘリコイド筒の移行時にトルクムラが起きていました。

出品個体は「タイプD」なので、ダブルヘリコイド方式の最短撮影距離「5cm」を誇る1:1等倍撮影が可能なマクロキラーです。さらにありがたい事にちゃんとフロントベゼルが附属していたので「MCレンズガード」をご覧のように装着して前玉側方向からの掲載写真を撮った次第です (だからマルチコーティングの光彩を放って写っている)。

ネット上の解説を観るとこのフロントベゼルのことを指して「専用フード」と説明しているサイトがありますが、そもそもマクロレンズである以上、光学系第1群の前玉が奥まった位置に配されているので遮光環が臼状に囲っている為に「たかだか4mmほどの突出をさせてもフードの意味がない」のに全く考察できていません (プロの写真家なのに)(笑)

専用フードではなくて「開発設計者のHeinz Kilfittが前玉直前にしかフィルターの類の装着を認めていなかったから、その装着に際し必須アイテムのフロントベゼル」と言うのが正しい認識です。従ってこのフロントベゼルはカチャッとハメ込み式の着脱方法を採っており、指で掴んで簡単に着脱操作が適います (ちゃんとダボで挟んでいるので容易に脱落しない)。

ちなみに後ほどこのブログの下のほうでちゃんと解説しますが「装着できるフィルターの類は厚み4mm/外径サイズ⌀ 31mm未満」なので、特にこの「厚み4mm」を極僅かでも超過すると「前玉の外枠に当たってしまいこのフロントベゼルがカチャッと填め込みできなくなる不具合が発生する」ので要注意です。

また入れ込む/差し込む/ハメ込むフィルターのサイズは「製品のネジ山径ではなくて製品外径サイズが重要」である点も合わせて注意が必要です。実際今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際し附属させているフィルターも「製品のネジ山径サイズは⌀ 28mmのMCフィルター」を新品購入してセットしていますが、必要なのはその「製品外径サイズ」であるものの、実は肝心な製品仕様諸元値を発売元の「HAKUBA (ハクバ)」でさえ自社ホームページに一切告知していないと言う為体な企業姿勢で、全く以て自社製品の顧客による使われ方にまで全く配慮を示さないと言う情けない企業です (marumiも諸元値を告知していませんが)。

どうしてHAKUBAよりもmarumiのほうの肩を持つのかと言うと、実は附属させているフィルター類は「それぞれの会社の製品で最も低価格な商品」ですが、製造国が中国としても「HAKUBEのフィルターは新品を開封してもフィルター両面に附着している微細な埃がとても多い」と指摘でき、一方marumi製も同じ中国製ですが「フィルターの裏面側に微細な埃が付着しているだけ」で明らかにHAKUBA製品のほうが埃まみれです。

結果、いちいち当方が開封して附属させたフィルターの両面を「光学清掃」している始末で、ここでも出品オールドレンズの過去メンテナンス時の不始末の尻拭いにプラスして、今現在流通している製品の不始末までヤラされているワケで・・世の中世知辛い限りです(涙)

ちなみにこの低価格なフィルター類は何処の製品も開封して両面を光学清掃すると「光学硝子面に薄膜処理されている」のが分かります。おそらく静電気の帯電防止剤か何かの薬品が塗布されているのだと受け取っていますが、はたしてフィルターのような光学製品にそのような薄膜処置を施すのが「」なのか甚だ疑念が募ります(笑) そしてもっと言うなら「下手な無名メーカー品のフィルター」に手を出すと、そのフィルター装着で撮影される写真に影響が現れたりするので (特に韓国製に対する性能評価は画質に影響が多く厳しい状況) こんな処でも中国製品と韓国製品との間で性能評価が分かれており、何だかお国柄にも感じてしまいます(笑)

脅威なのは最近の中国製品の製品性能が相当な勢いで向上している点で、そこを採って日本企業も中国製に一部の自社製品を預けるのでしょうが、残念ながら肝心な製品管理面まで明け渡してしまうから/委託してしまうからこんな結末に至ります。

話が反れましたが、そんなワケで仕方ないので幾つかのフィルターを買い漁って装着の検証を行う必要が起きてしまい、全く以て腹が立ちます!

なお一部のマクロキラーで (個体で) このフロントベゼルがちゃんとカチャッと填まらずに、レンズを下向きにするとすぐに外れて落下してしまう個体があったりしますが、それは設計の問題ではなくて「3箇所の均等配置で入れ込んである3つのダボを押し込んでいる円形ハガネの経年劣化」が因果関係ですから、一旦バラして新たな円形ハガネを用意して入れ替える必要があります。逆に言うと円形ハガネの反発力を強くしようとクルクル丸めたりすると「バキン!」と折れるので怖いです(怖)

とても細かい話をしていますが、こう言う内容は「完全解体してバラしていない限り一切見えてこない話ばかり」なので、それを指して批判される謂れもありませんね(笑)

逆に言えば「ご落札者様の所有欲を充たすにはあらゆる事柄について細心の観察と考察を行う」ことが必要との覚悟だったりします。もっと言うならそのような覚悟で臨んでいない「オールドレンズの整備っていったい何の為なの?」との命題に則して臨んでいない「」でもあり、当方も努力して心掛けていますが最近は自身の思い込みなどからご迷惑を掛けることが多くなってきています (ご迷惑を掛けてしまった皆様方、本当に申し訳御座いませんでした!)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

さすがにこのモデル「Makro-Kilarシリーズ」でこんだけスカッとクリアな個体も本当に珍しいです。あまりにもクリアすぎるので「本当に微細な気泡までキラッと微かに光って見えてしまう」くらいなのである意味脅威です(笑)

もちろん上の掲載写真はフロントベゼルを取り外して撮影した光学系内の写真です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

・・ご覧のようにまるで新品状態です(笑)

もちろん完全解体した際にオーバーホール工程の中で光学系の締付環や遮光環に格納筒内壁などあらゆる箇所に塗られまくっていた「反射防止黒色塗料」を溶剤で除去しまくったので、上の写真のとおり垢抜けしたような印象の仕上がりに至っている次第です(笑)

逆に言うならこのようにちゃんと製産時点からして「反射防止黒色焼付塗装」が施されているのに、どうしてそこに敢えて「再び反射防止黒色塗料を塗りまくるのか?」全く以て不思議でなりません。

↑光学系後群側もこのようにスカッとクリアです! 特に後玉の露出面がこんだけキレイな状態に維持されている個体と言うのもそうザラに出現しませんから、ある意味希少だったりします。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:7点
後群内:16点、目立つ点キズ:10点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな点状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大3mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑10枚のフッ素加工が施された絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環/絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ちなみにこのモデルは「回転式ヘリコイド駆動」の設計なので、距離環を回して繰り出し/収納していくと、その回転に従い「プリセット絞り環/絞り環側まで一緒に回ってしまう」操作性です。普通一般的に多いオールドレンズは「直進式ヘリコイド駆動」なので内部に実装される鏡筒は距離環が回っても一緒に回転しませんが、このモデルはクルクル回っていきます。

従ってプリセット絞り環/絞り環側に刻印されている絞り値が両サイドの2箇所に備わります。

するとここで (この話が出てきた時点で) 気づかなければイケナイのですが、距離環を回してピント合わせした後に「ボケ具合をイジりたくて絞り環操作するとそれに合わせてピント位置がズレてしまう」点です。

つまり距離環を回すとプリセット絞り環/絞り環側が一緒に回ると言う事は、逆にプリセット絞り環/絞り環を回しても「距離環が回ってしまう事のイコールの話」である事を意味し、このモデルに於ける撮影時の操作性について留意する必要が生じます。

一般的なオールドレンズでは距離環でピント合わせした後にボケ具合を絞り環操作でイジれますが (ピント位置が一切ズレないから)、このモデルは「先にボケ具合/絞り値を決めてからピント合わせする逆の操作が必要」との認識に到達します。

そこで今回のオーバーホールでは特に配慮して「距離環側のトルクを軽めに仕上げつつもさらにそれよりも軽い操作性で絞り環側のトルクを微調整している」話になります。

但しそうは言っても何しろヘリコイドが「回転式ヘリコイド駆動」の設計なので、100%必ず絞り環操作してもピント位置がズレないとは言い切れません。そこまで配慮してズレにくいように「トルク調整を施してある」ので、撮影時の使い方のコツを掴んでしまえば一般的なオールドレンズ同様にピント合わせ後にボケ具合をイジる事も可能です。

・・こう言う配慮も所有欲を充たす一つの材料になっていきますね(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

残念ながら距離環のラバー製ローレット (滑り止め) は既に経年劣化に進行に伴い相当微細なヒビ割れが起きていますが、決して剥離しているワケではないのでこのままご使用頂いて大丈夫です。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】<(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(擦れ感強め)。
・当モデルは回転式ヘリコイド駆動方式の為距離環を回して鏡筒を繰り出すと(ピント合わせすると)その回転に伴い絞り環側も(鏡筒側も)一緒に回転していく駆動系の設計です。距離環側と絞り環側とのトルクバランスをちゃんと考慮してオーバーホールを仕上げていますが、ピント合わせ後の絞り環操作で必ずしもピント位置がズレない話ではありません。絞り環側を勢い良く回さなければ、多くの場合でピント合わせ後にボケ具合をイジッて撮影が適います。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
本体『Kilfitt-Makro-Kilar D 4cm/f2.8 C (silver)《後期型》(exakta)』
汎用樹脂製バヨネット式後キャップ (新品/3Dプリンタ出力製品)
 社外品樹脂製被せ式前キャップ (中古品/輸送時保護用として)
純正専用金属製フロントベゼル (中古品/フィルター類装着用)
HAKUBA製MCレンズガード (新品)

↑ここからはこのフロントベゼルについて解説していきます。冒頭解説の通りこのフロントベゼルはフードではなく「フィルター類装着用の道具」で純正の附属品です。上の写真では右側に今回新品購入した「HAKUBA製MCレンズガード」を並べて撮っています。

↑フロントベゼルをひっくり返すと反対側はこんな感じになっています (つまり後玉側方向に向けて撮っている)。表側方向がちゃんと遮光環になっているのが分かります (裏側はこの通りツルツル状態)。

ちゃんとオーバーホール工程の途中で経年で生じていた赤サビなんかも除去してあるのでとてもキレイにツルツルです(笑)

↑そのひっくり返しているフロントベゼルの「フィルター装着部」を拡大撮影して解説しています。両サイドに「押さえ板」と言う赤色矢印で指し示している指で容易に曲げられる少し柔らかい円形状の板が備わります。

この「押さえ板」でハメ込む/セットする/入れ込むフィルター類をガッチリ保持する仕組みです。またその90度ズレた位置には「円形状の切り欠き」が用意してあって、要は「指掛かり」です (グリーンの矢印)。

フロントベゼルに入れ込むフィルター類を指で掴んだままこの切り欠き部分を利用してシッカリとハメ込むワケです。

↑実際に一つ前の写真で右横に並べていたフィルターをフロントベゼルにその位置のままでハメ込んで撮影しました (赤色矢印)。

↑このフロントベゼルのフィルター類装着部の内寸はこんな感じのサイズになっています (グリーンの矢印)。

このように真横から見ると一目瞭然ですが、附属品として新品購入したHAKUBA製MCレンズガードでさえも極僅かに飛び出ているのが分かると思います。これ以上製品全高が増えると (例え極僅かでも) 前玉の締め付け環にあたってしまいこのフロントベゼルが装着できなくなるので要注意なのです。

・・そんな意味もあって附属品として新品購入して揃えた次第(笑)

ちなみに上の写真でもグリーンの矢印で写真上方向を指し示していますが、装着するフィルターを「表裏逆方向にセットする」のがポイントです。

↑さらにこのフロントベゼルの赤色矢印で指し示した箇所が「ダボでカチャッと填まる箇所 (のクビレ部分)」です。この溝のようにクビレている箇所にダボが填まるのでカチャッと言う音が聞こえてシッカリと保持されるのです。

↑本体の前玉側方向からその「3箇所均等配置されているダボ」を露出オーバー気味で撮影しました・・見えるでしょうか。丸頭が僅かに突出しているのがダボで、この内部に「円形ハガネ」が入っているので、そのチカラでダボが引っ込んだり飛び出たりしますから要は円形ハガネがクッション性を実現している話です。

すると何しろこのフロントベゼルを装着しても、そもそもオールドレンズの筐体から飛び出すのは「僅か4mm少々」なので、いくら指で掴むとしてもそれほど掴み易い話ではありません(汗)

従ってこの「ダボのクッション性が強すぎても辛いし弱すぎても心許ない」と言う話になるので、そこに「所有欲を充たす使命感!」が働くとなれば、自ずとこのダボのクッション性にまでこだわりが出てきたりするワケです(笑)

・・技術スキルが低いのでどうでもいい話にこだわるしか手がないのが丸出し状態らしい(笑)

はい、まさにそのようにSNSで批判されているようです(笑) まぁ〜事実なので特に反論しませんが(笑)

↑ここからはこのモデル「Makro-Kilarシリーズ」の「回転式ヘリコイド駆動」と、合わせてそれに伴い1:1等倍撮影状態まで繰り出していく様子を説明していきます。このモデルを初めてご覧頂く方々の為に配慮しての解説です。

グリーンのラインで示していますが、ちゃんとプリセット絞り環/絞り環/絞り環用基準「」マーカー/鏡胴基準「」マーカーのそれぞれの位置が縦一直線上に並んでいるのが判ります。

この鏡胴側 (マウント部直前) の基準「」マーカーを目安として操作していきます (赤色矢印)。まずは距離環を繰り出し操作してみましょう。ブルーの矢印①方向に回していくと鏡筒が繰り出し始めます。

↑グルグルと距離環が回ると合わせてプリセット絞り環/絞り環側まで一緒に回っていき、どんどん繰り出していきます。

ちょうど一周回ったところで一旦止めて撮影したのが上の写真で「1/2倍のハーフマクロ撮影が適う位置」です (赤色矢印)。同様鏡胴の基準「」マーカーと直線状が一致しているのが分かりますし (グリーンのライン)、合わせてちゃんと距離環にまで「1:2」と赤色文字で刻印されています。

ちなみにこの「Makro-Kilarシリーズ」で「タイプE」などのモデルバリエーションでは「シングルヘリコイド」なので、この1/2倍撮影の位置でヘリコイドがカツンと突き当て停止してしまいます。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は「タイプD」でダブルヘリコイドなのでさらにブルーの矢印②方向に繰り出しが適います。

↑さらにどんどん繰り出し量が増えていって一周回るとようやくその位置でカチンとヘリコイドが突き当て停止します (実際はグッと僅かに詰まったような印象の抵抗感になる/カチン音が聞こえない)。

同様に突き当て停止した位置がちゃんと鏡胴側基準「」マーカーと同一上に並んでいるのが「適切に仕上げられた個体の状態」です (グリーンのライン)。

ちなみに距離環側の刻印はどう言うワケかその手前位置で「1:1.1」と刻印されています。従って基準「」マーカーと同一ライン上の突き当て停止した位置が「1:1等倍撮影の位置」との話になります。

なお、この位置から今度は逆方向に距離環を回して「鏡筒の収納 (ヘリコイド筒の収納の意味にもなる)」を始めていくと「全部で3つ存在するヘリコイド筒の2組が先に収納していくのでカツン音が聞こえて抵抗が起きる」のが正しいヘリコイドの収納状態です。

これが例えば「古いグリースが必要以上に塗られている場合」などの時は「ネチネチした操作感のまま詰まっていく感じ」なので、まるで今回の個体をバラす前の当初の状態に近くなります。

ちゃんと新しいグリースに入れ替えてあげるとこのように小気味良い操作性に変化します(笑)

↑ここからはこのモデル「Makro-Kilarシリーズ」のプリセット絞り環]絞り環操作について、ご存知ない方の為に解説していきます。

この「プリセット絞り機構」の使い方もネット上の解説や下手するとヤフオク! の出品者 (プロのカメラマン) でさえも間違った認識をしていて変な解説を平気で流している人が居ますが(笑)、何も難しい事はなく「撮影時の挙動に従えば自ずと理に適った操作方法で設計されている」ので、例えば「考えとは逆の方法で使うようになっている」などと意味不明な説明をロシアンレンズなどでも述べていますが全く違います(笑)

そもそもそう言う人に限って「プリセット絞り環」と「絞り環」の位置を正しく認識していません(笑)

概念的に言うなら「プリセット絞り機構は使うであろう絞り値の範囲を事前に設定しておく機能」であり「絞り環は実際に絞り羽根を開閉させる機能」との定義がちゃんと認識できていないからチグハグな捉え方になり、結果説明も変な話になってしまいます(笑)

従って今回のモデルでも同じですが「プリセット絞り環/絞り環」を逆に捉えてしまうと何一つまともに説明できません(笑)

プリセット絞り環」はプリセット絞り値を指定する環/リング/輪っかなので「基本的に絞り値が刻印されている環/リング/輪っか」なのが至極当然な話のハズです(笑)

一方「絞り環が絞り羽根の開閉動作だけ」となれば「事前にプリセット絞り値が設定されている使い方/機能として設計されているのがプリセット絞り機構」との概念に則れば「絞り環はただの環/リング/輪っかだけでただ回すだけの役目 (つまり単に絞り羽根を開閉するだけの役目)」と明言できます。

だからこそ上の写真解説のとおりで「プリセット絞り環と絞り環のの互いの関係性」が理に適っています(笑)

重要なのはグリーンの矢印で指し示した基準「」マーカーであって、ここに何が来ているのかがポイントです。オールドレンズは常に基準「△」マーカーが重要ですね。

すると上の写真ではまだ撮影する前段階なので、これから使うであろう「プリセット絞り値をセットする」動作が必要になります。

上の写真ではグリーンの矢印で指し示した基準「」マーカー位置に「f2.8」が来ているので、且つ「絞り環のマーカー ()まで同じ位置なので」絞り羽根が完全開放状態なのが一目瞭然です (実際に光学系内を覗き込んでも完全開放している)。

この時「プリセット絞り環側f2.8に絞り環側 () が合致しているので設定してあるプリセット絞り値はf2.8」になります。

つまり「絞り環側 () は設定したプリセット絞り値を示す」ワケです。単に設定したプリセット絞り値を忘れないように明示するだけの為に「」刻印があるだけで、本来の役目は「絞り環は絞り羽根の開閉動作だけ」との認識です。

それではここから仮に「プリセット絞り値をf8に設定する」作業を行います。絞り環側の「」をグリーンの矢印で指し示している基準「」マーカー位置に合わせた状態のまま「プリセット絞り環側だけをブルーの矢印①方向に回す」と僅かにクリック感を感じつつ廻ります。

↑設定プリセット絞り値の「f8」がグリーンの矢印で指し示している基準「」マーカーに合致し、且つ絞り環側マーカー () も同じ位置なので「現在プリセット絞り値がf5.6に設定されてしかも絞り羽根がf8まで閉じている」話になります。実際光学系を覗き込めばそのように絞り羽根が閉じていきます。

ここで撮影でピント合わせが必要ですから、一旦絞り羽根を開いて完全開放状態でピント合わせします。「f8まで閉じてしまった絞り環をブルー矢印②方向に回してf2.8」に合わせれば完全開放します」ョね・・?(笑)

つまり前述のとおり「絞り環の役目は単に絞り羽根の開閉動作だけ」と説明したので、ここではブルーの矢印②方向に純粋に絞り環を回すだけです。

↑何となく最初の写真と同じように見えますが、実は「絞り環側マーカー () がf8の位置に居る」ので「設定絞り値はf8」なのが一目瞭然です。しかし現在グリーンの矢印で指し示している基準「」マーカーには「f2.8」が居るので完全開放状態なのが当然な話です (覗き込んでもちゃんと絞り羽根が開いている)。

従ってここで距離環を回してピント合わせを行います。ピント合わせが神部気になったらいよいよシャッターボタン押し下げなので「その前に狙ったボケ具合たるf8まで絞り羽根を閉じる必要がある」ので、やはり純粋に「絞り羽根を閉じちゃう!」のでブルーの矢印③方向に絞り環を「ただ回すだけ」です。

このように「ただ回すだけ」との認識が「操作がし易い/分かり易い」の分かれ目になる話なので、プリセット絞り環/絞り環の認識違いが大きくこの操作性に影響してくるのだと指摘できます (いちいち操作手順を覚える必要がない/カラダが撮影に従い自然に動いているから)。

これが「撮影に臨む自然体の設計なのか否かのポイント」であって、決して「この時代は逆の認識だった」なんてとてもそんなムチャな道理が通るワケがありません(笑)

・・自分でそんな説明していて違和感覚えないのですかねぇ〜?(笑)

↑単に絞り環を回しただけですが、ちゃんと基準「」マーカー位置に「f8」が来ていて (赤色矢印)、もちろん絞り羽根が設定絞り値まで閉じるので「シャッターボタンを押して撮影」します。

バッチリキレイな写真が撮れて撮影が終わったら(笑)、再び開放f値「f2.8」までプリセット絞り値を戻します。最初の逆手順になるだけの話しですが、絞り環側基準「」マーカーを指で保持したままブルーの矢印④方向に「プリセット絞り環だけを回す」とクリック感を感じながら左方向にプリセット絞り環が回ります。

↑まさに最初の状態に戻っただけの話ですが、グリーンの矢印で指し示した基準「」マーカーの位置に開放f値「f2.8」が来て、且つ絞り環側基準「」マーカーも同じ位置なので絞り羽根が完全開放していますし、何よりもプリセット絞り環も絞り環も両方とも固定されていて「f2.8の位置から動きません」と言うのがポイントです (赤色矢印)。

要は「プリセット絞り環/絞り環」の定義さえ理解できていれば、まさに説明してきたとおり「撮影時の挙動に即した操作方法」なのがプリセット絞り機構の概念なので何一つ難しい話しがありませんし、別に実際に撮影する時の操作も決してプロのカメラマンが言うような逆の操作方法にもなっていませんね(笑)

使う絞り値との間で動くのがプリセット絞り環なので上の写真の設定状態では「f2.8からプリセット絞り環も絞り環も動かないのが正しい」のが歴然です。

いったいこの何処に「逆の考え方」が在るのかプロのカメラマンの方はちゃんと説明してほしいです(笑)

  ●               

以上このモデル「Makro-Kilarシリーズ」の操作方法やプリセット絞り機構の動きや概念について知らない方向けに解説してきました。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は、距離環やプリセット絞り環/絞り環の操作性、或いはフロントベゼルの着脱感、ピント合わせとボケ具合微調整時に於けるトルクバランスの問題など、凡そ今までに当方が手掛けてきた個体と全く同一の内容で仕上げてありますから「即決価格69,500円」まで同じです(笑)

・・然し光学系内の透明環だけはもの凄いレベルの個体です!

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑マクロレンズですがちょっと離れた位置からミニスタジオの被写体全体を写すとこんな感じで開放f値の写真に仕上がります。しかしマクロレンズとしての近接撮影を行うと「とても信じられないくらいの被写界深度に変化する」から本当に愉しいモデルです!(笑)

・・正直最小絞り値「f22」でもまだボケるから困るくらい!(笑)

↑当レンズの最短撮影距離5cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「手前側の縁部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

本当は電球にピントを合わせたかったのですが、何しろ被写界深度が極度に狭い/浅い/薄いので電球に合わせると、より手前に来てしまうボディ部分が「前ボケに至る」ので仕方なくそのボディ側のヘッドライトの縁部分にピントを合わせています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。全くと言って良いくらいに被写界深度が広がらないのでまるでトッロトロボケ状態です(笑)

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しました。ようやく被写界深度が広がり始めました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。「f5.6」とか言われても信じてしまうくらいです(笑)

↑f値「f16」での撮影ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じてきている状態です。それでこれだけの被写界深度の狭さ/浅さ/薄さなので恐れ入ってしまいます(笑)

↑最小絞り値「f22」での撮影です。ようやく何とか「回折現象」の影響が現れ始めたでしょうか?(笑)

世界初のマクロレンズ・・恐るべしです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。