◎ Tokyo Kogaku (東京光学) RE.Auto-Topcor 5.8cm/f1.8 silver《後期型》(RE/exakta)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、東京光学製
標準レンズ・・・・、
RE.Auto-Topcor 5.8cm/f1.8 silver《後期型》(RE/exakta)』です。


このモデルの扱い本数は累計で今回が16本目にあたります。同じ「RE.Auto-Topcorシリーズ」でも開放f値「f1.4」の上位モデルのほうは頻繁に扱っていますが、普及版のこのモデルはその描写性能に対してオーバーホール済で出品しても、見合う対価で落札されない傾向なので実は敬遠しているモデルです

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1963年に東京光学から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「RE SUPER」用セットレンズとして、開放f値「f1.4/f1.8」の2つの標準レンズが用意されていたようです。

特に開放f値「f1.4」モデルは市場での評価も当時から高く、東京光学の交換レンズ群の中にあって銘玉中の銘玉と評されているようです。

なお、発売された1963年〜1971年までの期間「アメリカ海軍向け仕様」モデルが合わせて製産されており、レンズ銘板に「Navy」を示す「N」刻印を伴い、且つ距離環にはノブが備わって操作性を向上させています (左写真)。


【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

「前期型」

指標値環基準マーカー:
距離環ローレットの縁:有
マウント面凹み:有

「後期型」

指標値環基準マーカー:
距離環ローレットの縁:
マウント面凹み:

・・ところが、製造番号との関連付けで捉えると、さらに細かいモデル・バリエーションの展開が見えてきます。

↑上の一覧表はこのモデルについて50本ほどサンプルをチェックして項目ごとにまとめたものです。

するとモデルバリエーションで言うところの「前期型/後期型」への切り替えは、ある特定のタイミングで一気に切り替わったのではなく、徐々に「前期型」の要素が消えて「後期型」へとチェンジしていったことがこれで分かります。

上の一覧表で 部分については完全に「前期型」の要素だけを表す時期のモデルですが、同じ桁数の製造番号にも拘わらず9901xxx」では「後期型」の要素が混在しています。

またまでの時期は「前期型/後期型」の要素が混在したままですが、 部分ではで完全に「後期型」の要素だけに変化しています。

さらに はレンズ銘板のモデル銘も「RE AUTO TOPCOR」に変わっています。従って⑥⑦のタイミングでは完全に「後期型」に切り替えが完了した時期と言えます。

なおの「9900xxxx」は何かしら意味を持つ先頭桁の番号ではないかと考えています。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して背景ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、そもそも光学系がダブルガウス型構成を基本としていいるので、明確な真円の円形ボケを表出させること自体が苦手であり、且つ円形ボケのエッジも収差の影響を受けるので歪なカタチになってしまいます (つまりキレイな円形ボケは表出しにくい)。

二段目
この段ではこのモデルの光学系の設計面で狙っていたことが見えてくる実写をピックアップしました。ダイナミックレンジが相当広いので明暗部での飛びが極端に少なくなだらかな階調と共に綺麗にグラデーションを維持するので、ご覧のように黒潰れもしにくく、且つ白飛びも耐えられるポテンシャルを持っています。

そして被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さがあるので、インパクトを伴う大変鋭いピント面を構成してくれます。右端の実写はまさに「トプコンの」ではないでしょうか。

三段目
この段がこのモデルの特徴的な描写性を示しますが、左側2枚のとおり、まるでポートレートレンズに匹敵するほどに非常にリアルな人物撮影をこなしてくれます。この人物のリアルな質感 (表現性) は上位格モデルの「f1.4」よりも、むしろ高いのではないかと感じられるほどですから、単なる下の格付「普及版」と見てしまうとちょっと違うような気がします。しかも、次の写真 (扉のノブ) のように予想に反する (意外にも) 浅い/狭い被写界深度なのもオドロキです (まるてf1.4並)。

光学系は5群6枚の拡張ダブル型構成ですが、右の構成図のとおり本来ならば貼り合わせレンズであるハズの第3群を「分割」させてしまった5群6枚なので (貼り合わせレンズではない)、いわゆる光学系前群がバラバラになっているウルトロン型とは異なります。

従ってこの構成図を見てすぐに典型的なダブルガウス型の画造りを思い浮かべることができますが、然し第3群の貼り合わせレンズを分割させて独立させている事から、色消し効果 (色収差の改善) よりむしろ「解像度の向上」を狙っていた事が分かります。

モノコーティングたる写りですが、それでもできる限り解像度を稼ぐ工夫を伴った光学系の 設計だったことが分かりますね。その意味で単なる「普及版」モデルと片付けてしまうと、 東京光学の思惑は忘れられてしまうように考えます。

上位格の「f1.4」モデルも銘玉ですが、当時の数多く存在する開放f値「f1.8」標準レンズの中にあって「十分に銘玉に入るポテンシャルを持つモデル」と評価しています。

貼り合わせレンズ
2枚〜3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。基本的な内部構造や各構成パーツの設計概念は、上位格モデルの「f1.4」と同じですが、光学系のサイズがだいぶ小振りです (従って筐体サイズも小さいモデル)。

左写真は当初バラした直後の、溶剤で洗浄してしまう前のヘリコイド (オスメス) と基台を撮影しています。

過去メンテナンス時に塗布された「白色系グリース」が、経年で劣化して「濃いグレー状」に変質しています。元々は白色のグリースだったワケですが、ヘリコイド (オスメス) のアルミ合金材が削れて摩耗してしまった「摩耗粉」が混じったので色が変わっています。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しているので別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚のペラペラに非常な薄い絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側) 方向から撮影しました。すると鏡筒裏には「制御系パーツ」がギッシリ密集しています。

連係アーム」は縦長の「L字型 (板状)」ですが、この長さがそっくりそのまま「鏡筒が繰り出されるスパン分」になっています。従って距離環の回転と共にこの「連係アーム」が確実に絞り環と連係できていなければ、絞り羽根の開閉制御ができなくなりますね。

制御環」の途中に用意されている「なだらかなカーブ」の勾配 (坂) に「カム」が突き当たることで絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり、坂を登りつめた頂上が開放側にあたります。

上の写真では「カム」が麓部分に位置するので最小絞り値まで絞り羽根がちゃんと閉じていますね。

連係アーム
鏡筒の繰り出し/収納時に絞り環から飛び出ている「連係爪」によって掴まれたまま設定絞り値を伝達する役目

制御環
絞り環の設定絞り値を具体的に絞り羽根の開閉角度として決定する役目の環 (リング/輪っか)

カム
なだらかなカーブ」に突き当たることで絞り羽根の開閉角度を決める役目

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑上の写真はヘリコイド (オス側) を撮影していますが、ヘリコイドの下部 (マウント面方向) には「直進キーガイド」と言うコの字型金具が取り付けられて、具体的に板状の「直進キー」が行ったり来たりスライドするような設計です (グリーンの矢印)。

従って、このモデルはヘリコイドグリースの粘性だけで距離環を回すトルクが決められません。この部位の微調整を行って初めて距離環を回すトルクが適切になるので、残念ながらシロウト整備では太刀打ちできない「プロ向け」モデルです。

直進キー
ヘリコイドの両サイドに刺さって距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

まず今回の個体で言える事は、過去メンテナンス時にこの部位の微調整ができない整備者だったようで「白色系グリース」に頼ることで距離環を回すトルクを適正化したようです(笑)

逆に言うと、このモデルの無限遠位置などをキッチリ適合させられるスキルを持つ整備者でなければ組み上げられないので「シロウト整備はムリ」とも言えますね。

このような感じで「直進キー」が両サイドに飛び出てくるので、ここにヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド」がガッチリ刺さるワケです。

従ってヘリコイド (オスメス) はヘリコイドグリースの粘性だけでトルクが決まる話ではありません。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で15箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

すると上の写真で「イモネジ用の穴」が3箇所ずつ、さらに均等配置で4セット分用意されています。距離環は全部で4個の「イモネジ」で締め付け固定されるので、当然ながらその穴は「製産時点は4個しか存在しない」のがオリジナルの状態です。

ところが今回の個体は3個ずつ穴が用意されており、上の写真の反対側にも同様2セット分の穴が用意されています。

全部で3個 x 4箇所=12個の穴ですね。これらの穴のうち正しい位置の「イモネジ用の穴」は「4個」しか無いので、他の8個が過去メンテナンス時にドリルで開けられてしまった穴だと言えます。

何を言いたいのか?

過去メンテナンス時に「原理原則」を理解できていない整備者の手でバラして組み上げられてしまったので、ヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置をミスっており距離環の固定位置が適合せずにドリルで故意に (ワザと)「イモネジ用の穴」を用意したことが、これで明白になってしまいました(笑)

つまり正しいのは赤色矢印グリーンの矢印の穴は必要ない (間違った位置の穴) と言えます。組み上げたら赤色矢印の位置にイモネジの穴が来なかったので(笑)、別途ドリルで穴を用意したワケです (グリーンの矢印)。

このようにこのモデルをバラして組み上げられるだけのスキルを持っていながら、しかし「原理原則」が理解できていないので(笑)「ごまかしの整備」をしていたワケです(笑)

↑完成したヘリコイド (オスメス) の中に「鏡筒」を落とし込んでから「締付環」で鏡筒を前玉側方向から締め付けて固定します (グリーンの矢印)。

こんな感じで鏡筒が入って「締付環」で締め付け固定されるのですが、実はこの「締付環」もヘリコイド (オス側) も共にアルミ合金材です。

ネジ山が合致した位置で「締付環」をネジ込んでいれば大丈夫ですが、中にはネジ山が合っておらずきつくなってしまい咬んでしまっている個体があったりします (つまり完全解体できない時がある)。

↑基台に基準「」マーカーが刻印されている指標値環をセットします。

↑絞り環ですが、このように解体できる設計です。「連係の爪」が前述のとおり鏡筒から飛び出てくる「連係アーム」をガッチリ掴んだままになるので、距離環を回してもちゃんと絞り環の設定絞り値が鏡筒に伝達されるワケですね。

↑絞り環をセットします。

↑マウント部をセットしたところですが、過去メンテナンス者はここでも「原理原則」が理解できておらず、ムリにマウント部内部のパーツを曲げて (変形させて) 連動させていました。

その結果一部に削れてしまった痕が残っています。もちろん今回のオーバーホールでは本来の正しいカタチに戻して組み上げたので、ちゃんとスムーズに各部位が連係しています。

↑距離環をイモネジで仮止めしてから (本来の正しい位置の穴を使って) 光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。当方の評価に反して市場では人気が無く、オーバーホールしたその作業分の対価を回収できないモデルなので「普段敬遠しているモデル」でもあります。従って前回扱ったのが2017年なのでとうとう2年が過ぎてしまいました(笑)

また次回の扱いは予定が無いので、ほとぼりが冷めた頃にやるつもりです(笑)

ご覧のとおりモデルバリエーションで言うと「後期型」なのですが、レンズ銘板の刻印は焦点距離が「5.8cm」なので「前期型」の要素ですね。

なお当方での「前期型/後期型」の区別は外見上の相違ではなく「内部の構成パーツの相違」を以て区分けしているので、少々ネット上の解説とは異なります。その根底には「使用構成パーツ」が異なれば製産ラインの工程も変わるので「前期型/後期型」の明らかな相違点とみなすことができるからです。

↑光学系内の透明度が高い状態を維持し個体なのですが、残念ながらカビ除去痕やコーティング層の経年劣化が相応に残っています。

カビ除去痕」が前後玉に多く残っており、特に後玉表面側にLED光照射で極薄いクモリを伴って浮かび上がります。またコーティング層経年劣化に伴う「汚れ状」が第2群の外周附近に集中的に残っているので、拭き残した汚れがあるように見えてしまいますが、4回清掃しても除去できていません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も透明度は高い状態を維持していますが、やはり後玉表面側にカビ除去痕が多めに残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い数ミリ長が数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(コーティング層経年劣化に伴う非常に薄いクモリが第2群〜第3君外周にあります)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前後玉表面側に経年相応なカビ除去痕が数箇所残っておりLED光照射で微かに極薄いクモリを伴い浮かび上がります。しかし集中的に発生していないので写真に影響するレベルではありません。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(但しLED光照射で一部領域で微かにクモリあり)
・光学系内のコーティング層には一部に拭き残しのように見えてしまうコーティング層経年劣化が線状に見る角度により光に反射させると視認する事ができますが拭き残しではありません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」したまま閉じていきます (極僅かに歪なカタチ)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・マウント面の一部に擦れキズが僅かにあります。
・距離環の縁に1箇所打痕があります。

↑マウント部内部の構成パーツの変形 (過去メンテナンス時に故意に曲げられてしまったパーツ) を正し、ヘリコイドのネジ込み位置ミスも正しい位置でネジ込み、さらに光学系の格納も適正ではなかったので簡易検査具で検査しつつ鋭いピント面に改善できました。

過去メンテナンス時には至る箇所に「緑色の固着剤」が塗られていましたが(笑)、そもそもヘリコイドのネジ込み位置をミスったり光学系の光路長も足りなかったりですから、いったい何の為に固着剤を塗りたくっているのか全く以て意味が分かりません(笑)

いわゆる「整備者の自己満足」みたいな話で(笑)、そういう慣例だからそのまま続けて全ての箇所に固着剤を塗っている整備者がいまだに居ますね(笑)

何故なら塗布されていた「白色系グリース」は数年内の劣化状況であり、且つ「緑色の固着剤」となれば10年以上前の話でありません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値は「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。