◎ ASAHI PENTAX (旭光学工業) smc PENTAXーA 50mm/f1.2《後期型》(PK)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回オーバーホール/修理を承ったのは・・、

smc PENTAX-A 50mm/f1.2《後期型》(PK) ※製造番号末尾「6」
smc PENTAX-A 50mm/f1.2《後期型》(PK) ※製造番号末尾「2」
ロシアンレンズ LZOS JUPITER-9 85mm/f2 (M42)

・・の3本です。特にについては2017年に「前期型」タイプをオーバーホールしましたが、今回の「後期型」は初めてです。「前期/後期」で外観の相違があるものの内部構造はたいして変わっていないだろうと、たかをくくってオーバーホール/修理ご依頼をお受けしましたが浅はかでした。

2年前にオーバーホールした「前期型」は、発売当時のオールドレンズに倣い相応の内部構造でしたが、今回の「後期型」はそれに比して難しいのなんの・・正直、承ったのを後悔しながら作業をしていた次第です (当方の技術スキルの低さを思い知らされました)(笑)

  ●                

時勢に倣い従前の「ペンタックス・スクリューマウント (いわゆるM42マウント)」からバヨネット型マウントに大きく仕様変更して、1975年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「PENTAX K2」の交換レンズ群として用意された標準レンズの中で、開放f値「f1.2」を実現した焦点距離50mmのモデルは当時世界初の登場でした (焦点距離で捉えると57mm〜58mmが他社光学メーカーのモデルで存在する)。

その時のタイプが「前期型」にあたり、レンズ銘板を伴う⌀49mmのフィルター枠を採っていた従前の「SMC TAKUMARシリーズ」からの発展系 (PKマウントへの仕様変更) です。

開放f値「f1.2」から大口径を採り入れた光学設計ですが絞り羽根枚数が「8枚」でした。

一方、1984年になるとPENTAX初のマルチモードAE機種 (プログラムAE/絞り優先AE/シャッター速度優先AE/TTLオートストロボ/外光オートストロボ/マニュアル) として一眼レフ (フィルム) カメラ「PENTAX SUPER A」を発売してきます。

この時に用意された標準レンズの開放f値「f1.2」タイプが今回扱う「後期型」になり、レンズ銘板がフィルター枠から距離環側へと変更され、同時に絞り羽根枚数が1枚増えて「9枚」装備してきました。

この「後期型」は今回が初めての扱いだったワケですが、マウント面に電気接点端子を装備しつつも、特に問題視せずにオーバーホール/修理を承りました。

然し、意外にもその電気接点端子の構造が厄介で、且つ非常に難しかったのがその他の部位でした。この「後期型」で泣かされるハメに陥ったのは「組み立て手順の考察と各部位の調整度合い」であり、当方にとっては「高難易度モデル」に匹敵する作業に至りました。

光学系の構成は「前期型」から変化していませんが、光学設計は再設計されています。右図は1975年に登場した「前期型」の構成図で6群7枚の拡張ウルトロン型です。清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

一方、右図が今回の「後期型」にあたり、やはりバラした際の清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

同様に6群7枚の拡張ウルトロン型ですが、全ての群の光学硝子レンズでビミョ〜にサイズや曲率などに相違があり再設計していたことが判明しました。

前期型」では第2群で屈折率を高く採っていますが「後期型」では第1群 (前玉) から上げています。また後群側の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) の屈折率や後玉外径の相違もみられ、特にコーティング層と光学硝子材の技術革新に伴う解像度の向上、及び諸収差の大幅な改善度合いから光学系の再設計に至ったことが分かります (もちろん絞り羽根枚数も9枚に増えてより厳格に入射光制御している)。


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが円形ボケを経て背景ボケになりトロトロ溶けていく様をピックアップしました。あまり特徴的な実写が載っていないので少々分かりにくいです。光学系がウルトロン型を基本としているので、キレイな真円のシャボン玉ボケ表出が苦手です。ピント面のエッジが非常に繊細に (極細で) 出てくるもののアウトフォーカス部とすぐに階調豊かに (大変滑らかに) 滲んでいく為、違和感を感じず決してマイルドにも堕ちずバランスの執れた自然な表現性です。

二段目
人物撮影がリアルですがダイナミックレンジはそれほど広くなく暗部が急にストンと堕ちてしまいます。従ってこの明暗の差を上手く活用してあげると人物撮影もさらにリアル感を増してくると思います。また決してコッテリ乗らないナチュラル的な発色性ながらも「赤色」に極端に反応します (ピックアップ写真では残念ながら色飽和した実写になっている)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ひたすらに「 (リング/輪っか)」の集まりですが、ハッキリ言って「前期型」よりも増えていたのが分かりビックリです (普通は後のモデルのほうが構成パーツ点数は減じられる事が多い)(笑)

2年前にオーバーホールした「前期型」と似たような構造だろうとたかをくくっていたのも問題ですが、そもそも「組み立て手順の考察」で泣くハメに陥ると全く予想せずにバラしていってしまったのが仇となりました(笑) もちろんバラす際は「観察と考察」により組み立て工程を考えながら解体していったのですが、それだけではダメなモデルでした (後悔先に立たず)。

さらに問題だったのが「トラップ」です。内部に2箇所トラップが仕掛けられていて、そこをクリアしない限り完全解体できません (下手すれば壊してしまう)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

↑こちらは絞りユニットの構成パーツですが「開閉環/位置決め環」です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

まずはこの絞りユニットの組み立て工程でハマりました・・(笑)

開閉環」側は当然ながら絞り羽根を開閉する役目ですから「稼動部」なのですが、何と「位置決め環」側は動かないものの「キーの移動範囲 (スリット) が存在する」特殊な設計です。つまりこのモデルは「開閉環/位置決め環」両方で絞り羽根が動いていく変わった設計を採っていました。

上の写真では「開閉環/位置決め環」の間に絞り羽根がサンドイッチされます。

↑実際に9枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させたところですが、そもそも絞り羽根を組み付ける時点で「思い付き」がなければ絞り羽根をセットできない特殊な設計です (まずこの工程で一番最初泣かされた)。

↑「前期型」の時と同じですが、第4群の貼り合わせレンズを後からセットできない為、この工程で先に組み込みます。するとご覧のように曲率が高いので、このまま硝子レンズ側を下向きにして置いたりするとキズが付いてしまいます。

つまりこのモデルは常に後群側を下向きに置けないまま作業をしていく大変面倒な設計です。

↑既に後群側の第4群が組み込まれていますが、絞りユニットの直下に「制御環」の機構部がセットされます。OLYMPUS製オールドレンズと同じ設計概念ですが、単純に絞り羽根の開閉角度を決めるだけではなく、絞り羽根の開閉動作自体も同時に制御してしまう賢い設計を採っています (だから環/リング/輪っかが2本組み合わさっている)。

↑前の工程で完成している絞りユニットを「C型固定環」を使って鏡筒にセットします。上の写真を見ると簡単に組み込んでいるように見えてしまいますが、実はこの工程で (この写真を撮るまでに) 6時間が経過しています。

はい、この工程でも目一杯ハマりまくりました・・(笑)

C型固定環」には締付ネジが4本備わっているのですが、このネジの位置が均等配置ではありません。この意味 (理由) に気がつかずに最初組み上げてしまったところ「絞り羽根の開閉異常」に陥った次第です (しかも最後まで組み立ててから不具合が発生)。

結局、最後まで組み立て終わったのに再びここまでバラして (戻って) 調整をし直しています。そもそも「絞り羽根の開閉異常」が起きた時点で、すぐにここの工程の調整ミスだとは気がつきませんから(笑)、まずは原因箇所を特定するだけで2時間を要している始末です。

この工程の調整が問題なのだと気がついてからの再調整で、さらに4時間が経過しました(笑)

どんだけ技術スキル低いんだョ!

・・と腹立たしい限りです(笑)

↑6時間後にやっとのことで正常に絞り羽根が開閉するよう調整が終わって、次の工程に進みました。ヘリコイド用のベース環です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で6箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をネジ込んでも、ご覧のように光学系後群側を下向きにして置くことができません (キズが付くから)。

↑後群側からみた写真ですが「直進キー」がセットされています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

距離環を回す時のトルク感が滑らかで軽い操作性に仕上がるか否かを決めるのが、実は「直進キーの調整」でありヘリコイドグリースの問題ではありません。その調整が面倒くさいから近年は「白色系グリース」を使う整備者が圧倒的に増えてしまいましたが (均一なトルク感に簡単に仕上げられるから)、製産されていた当時に使われていたのはもちろん「黄褐色系グリース」です。

逆に言えば「黄褐色系グリース (もちろん純正の専用グリース)」を塗布する前提でヘリコイドの設計 (ネジ山の切削) をしていたハズなのに、今では平気で「白色系グリース」が塗られてしまいます。

もっと言うなら、今回の個体は共に過去メンテナンス時に「オリジナルな黄褐色系グリースの上から白色系グリースを塗り足していた」始末で、平気で種別の異なるヘリコイドグリースを混ぜてしまっています。

これは今でも施されている処置ですが「同じ潤滑剤だから」と言うことで整備会社では「グリースの補充」と言う言い方をして、古い黄褐色系グリースを (洗浄して) 除去せずに、その上から性質の異なる「白色系グリース」を塗り足してしまいます。

もちろん当方が以前グリース業界の方にお聞きしたところ「種別の異なるグリースを混ぜるなど考えられない」とのお話でしたが(笑)、現実としてバラしてみると過去メンテナンス時にその処置が施されていたりします。

モノは言いようで「グリースの補充」とは恐れ入ってしまいますね(笑) 当方のようなシロウト考えでも、種別の異なるグリースを混ぜるのは良くないだろうと気になるのですが、単に当方の気が小さいだけの話なのでしょう(笑)

ちなみに、今回の個体 (2本) は共に「白色系グリース」側の経年劣化に伴う液化進行が影響して、アルミ合金材ヘリコイドのネジ山一部に酸化/腐食/錆びが生じています。これが「黄褐色系グリース」ならば、例え製産時点の古い純正グリースだとしてもアルミ合金材を酸化/腐食/錆びさせてしまう原因には至りません (既に検証済ですしグリース業界の方に確認済)。もちろん「白色系グリース」によりアルミ合金材のネジ山摩耗が進行していた為、当初バラした直後は白色ではなく「濃いグレー状」にヘリコイドグリースは変質しています。

↑「開閉アーム」の機構部をここでセットします。

↑絞り環との連係機構部を内側に組み付けてから基台をセットします。

↑ベアリングを組み込んでから絞り環をセットしますが、ここで再びハマります(笑)

AE機能時のロックボタンが備わっているのですが、それを絞り環に組み込んだまま、且つマウント面の電気接点端子部の機構を同時に組み込み、さらに2本のアームとも噛み合わせる必要があります。ここの組み立て手順を把握するのに時間が掛かってしまいました (単に組み込んだのでは上手く動いてくれない)。

↑ようやく光学系後群側を組み付けられます。「開閉アーム」にカタチがついているワケですが、それを避けつつ光学系後群側をセットしなければイケマセン。

↑マウント部をセットしてからメクラ環を被せますが、このメクラ環にもトラップが仕掛けられていました(笑)

↑やっとのことで距離環の仮止めまで進めました。この後は光学系前群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告     DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑まさかこんなに難しいモデルだとは全く予想せずにオーバーホール/修理を承ってしまいました (しかも2本)。「前期型」のほうが断然簡単ですね。いえ、単に当方の技術スキルが低いだけなので、このブログをご覧の皆様も重々ご承知置き下さいませ。プロのカメラ店様や修理専門会社様であれば数時間程度で整備完了してしまうハズです(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い個体です (2本とも)。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。2本共にカビが発生しているとの事でしたが、極微細なカビの発生だけでしたのでクモリなどが残っていたりしません。

それよりも問題だったのはの個体で、経年の揮発油成分が相当頑固に油膜となって光学硝子レンズに附着していました (の個体は普通レベル)。

従って普通の洗浄だけでは油成分を除去できなかったので少々強めに硝子レンズを清掃してようやく除去できました。特に第1群 (前玉) 裏面と第2群 (表裏)、及び第4群が相当なレベルです。結果、一部の群に清掃時の微細な線状コーティングハガレが2本付いてしまいました。申し訳御座いません・・。

光学硝子レンズを角度を付けて反射させつつ覗き込むと2本の非常に薄いヘアラインキズが見えますが、LED光照射すると視認できません。つまりキズではないのですが (コーティング層の極微細な線状ハガレ) キズだと言い張る方もいらっしゃるので、もしもご納得頂けない場合はご請求額より「減額申請」にてご納得頂ける必要額分減額下さいませ (減額の最大値は無償扱いまでになり弁償はできません)。申し訳御座いません・・。

↑光学系後群側もキレイになりましたがCO2溶解による極微細な点キズは光学系内に数点残っています (何度清掃しても除去できません/一応5回清掃済)。

↑9枚の絞り羽根もキレイになり2本共に正しい絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) で絞り環刻印絞り値との整合性も簡易検査具でチェック/調整できています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びなどが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗りました。距離環を回すトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。極軽いチカラだけでピント合わせできるので操作性も当初の抵抗/負荷/摩擦を感じるレベルに比べると改善できています。

↑今回初めてこの「後期型」を扱いましたが、申し訳御座いませんが内部構造が全く別モノでしたので「構造検討」料金を加算させて頂きます。また他に「難易度加算」も追加になります。申し訳御座いません・・。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」になりました。

恐ろしいことに、このf値でも「回折現象」が出ておらず (許容範囲内)、解像度/コントラスト共に著しく低下していません。

回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。極僅かに「回折現象」が出ているかどうかと言うレベルですから、絞り羽根が閉じきっていて本当に小さな開口部しか空いていないのにたいしたものです。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。

  ●                

なお、3本目のLZOS製ロシアンレンズ「JUPITER-9 85mm/f2 (M42)」の光学系清掃も完了しており、ご指摘の「極薄いクモリ」は完全除去できています。一部にコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが汚れ状に残っている箇所がありますが、僅か (約3mm大) なので全く写真には影響ありません (生じていた「極薄いクモリ」の原因は経年の揮発油成分)。