◎ Heinz Kilfitt München (ハインツ・キルフィット・ミュンヘン) Makro-Kilar D 4cm/f2.8 ●●●(arri STD)

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 この掲載はオーバーホール/修理ご依頼分についてご依頼者様や一般の方々へのご案内ですので、ヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付解説のほうが分かり易いため今回は無料で掲載しています (オーバーホール/修理全行程の写真掲載/解説は有料)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


今回オーバーホール/修理ご依頼を承ったモデルは、1955年に発売された世界初マクロレンズで旧西ドイツHeinz Kilfitt München製『Makro-Kilar D 4cm/f2.8 (arri STD)』です。

Kilfitt

開発設計者は「Heinz Kilfitt (ハインツ・キルフィット:1898-1973)」で戦前ドイツ、バイエルン州 München (ミュンヘン) の Höntrop (ハントロープ) と言う町で1898年時計店を営む両親の子として生まれます。時計職人の父親に倣い自身も時計の修理や設計などを手掛けていましたが、同時に光学製品への興味と関心からカメラの発案設計も手掛けていました。

Kilfittは27歳の頃発案したゼンマイ仕掛けによる自動巻き上げ式カメラ (箱形筐体にCarl Zeiss Jena製Biotar 2.5cm/f1.4レンズを実装したフィルムカメラ) のプロトタイプに関する案件をOtto Berning (オットー・ベルニング) 氏に売却します。このカメラは後の1933年にはより小型になりカメラらしい筐体となって世界で初めての自動連続撮影が可能なフィルムカメラ「robot I」型 (ゼンマイ式自動巻き上げ機構を搭載した 24x24mm フォーマット) としてオットー・ベルニング社から発売されています。ネット上の解説では、このフィルムカメラ「robot I型」の設計者がHeinz Kilfittであると解説されていますが、正しくはKilfittの案件を基にオットー・ベルニング社が小型化してカメラらしいフォルムにまとめ上げて開発設計したので少々異なります。この案件売却の資金を基にKilfittは長い間温めていた光学レンズの試作製造を実現するためにミュンヘン市の町工場を1941年に買い取り試作生産を始めています。

大戦後1947年には隣国リヒテンシュタイン公国首都ファドゥーツ (Vaduz) にて、念願の光学製品メーカー「Kamerabau-Anstalt-Vaduz (KAV:ファドゥーツ写真機研究所)」を創業し様々な光学製品の開発・製造販売を始めました。会社名は「Heinz Kilfitt」「Kilfitt」後に1960年念願の生まれ故郷München (旧西ドイツ) に会社を移し「Heinz Kilfitt München」としたのでレンズ銘板刻印もそれに伴い変わっています。その後1968年にはアメリカのニューヨーク州ロングアイランドで会社を営むFrank G. Back博士に会社を売却し引退してしまいます。Kilfitt引退後に社名は「Zoomar」(商品名もMakro-KilarからZoomatarに変更) に変わり終息しています。つまり会社名はKilfitt在籍中のみ自身の名前が使われていたワケですね。

ちなみに会社売却先のFrank G. Back博士は有名な現代物理学の父とも呼ばれるノーベル物理学賞受賞のアインシュタイン博士の友人でもあり、2人はこぞってKilfittが造り出す光学機器に高い関心を抱いていたようです (特に光学顕微鏡など)。

今回のモデル『Heinz Kilfitt München Makro-Kilar D 4cm/f2.8  (arri STD)』はレンズ銘板に「Heinz Kilfit München」の刻印があるので、まさしく生まれ故郷ミュンヘンに戻ってきた1960年〜1961年に生産された個体と推測できます (後に社名はKilfitt Münchenに変わります)。

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「シャボン玉ボケ・リングボケ・玉ボケ・背景ボケ」で、下段左端に移って「被写界深度・発色性①・発色性②・逆光」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

世界初のマクロレンズですが、もちろんちゃんと普通の写真も撮れます。特にコントラストが極端に誇張されることなく、かと言ってナチュラル派にも偏らない独特なドライ感を感じる画造りが魅力で、接写能力を高めたオールドレンズにしては筐体のコンパクトさからもなかなか使い出のあるモデルです。

光学系は3群4枚の典型的なテッサー型構成ですが、とても小さな光学硝子レンズでよくぞここまで光学性能を凝縮してまとめ上げたものだと感心します。

今回の個体はレンズ銘板に「」ドット刻印があるので厳密に入射光の色収差を改善させた「アポクロマートレンズ」であり、当時は高額で生産数自体が少なかった希少な個体です。

光学系を光に翳すと「アンバーパープルブルー」の3色の光彩を放ちます。この光彩の色合いが3色なのを以てマルチコーティングと主張する人も居ますが、モデルの変遷や技術的な時代背景などをもとに考察するとマルチコーティング化が達成されるにはさらに10年の歳月が必要でしたから、あまりにも先取りしすぎです (マルチコーティング技術の目的は色収差改善のみに留まらず解像度の向上やその他の様々な収差の改善を狙った技術だから)。

そもそも当時の自然光の解釈 (つまり色の三原色) が「」であり、現在のデジタルに於ける「RGB ()」とは異なっています (現在の最新技術では「RGBY ()」も採用されている)。「色の三原色」は総天然色を表現する上での考え方なので、必然的に入射光の色ズレ (色収差) を改善させようとすれば (当時は)「」つまり「アンバーパープルブルー」の
3色に対して入射光の表面反射を防ぐ必要があり、それは3つの資料 (基となる材料) を使った薄膜蒸着に至ったと考えられます (つまりアポクロマートレンズの説明が成り立つ)。

従って、古い時代の3色の色合いは「モノコーティング (複層膜コーティング)」の一種だと考えれば、マルチコーティングとの時系列的な相違や説明も付くと言う考え方です (3色の光彩
=マルチコーティングは思い込み)。

この世界初のマクロレンズは、大きく3つのモデルバリエーションがあります。

【モデルバリエーション】
※ 製造番号の先頭3桁がモデル系列番号を表す。タイプ別はレンズ銘板に刻印あり。

① 1:2 倍撮影が可能なシングルヘリコイド:タイプE
初期型:モデル系列番号「209-xxxx」
開放f値3.5、最短撮影距離10cm、実絞り、フロントベゼル無し
後期型:モデル系列番号「246-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離10cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り

② 1:1 の等倍撮影が可能なダブルヘリコイド:タイプD
初期型:モデル系列番号「211-xxxx」
開放f値3.5、最短撮影距離5cm、実絞り、フロントベゼル無し
後期型:モデル系列番号「245-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離5cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り

③ 1:2 倍撮影が可能なダブルヘリコイド:タイプA
モデル系列番号「254-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離10cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り
※ xxxx はシリアル値の製造番号

 

設計者のKilfittは、前玉直前にフィルターを配置することに拘っていたので、上の写真のように「フロントベゼル」はフィルターを組み込むために用意されている着脱式の附属品です。
着脱式であることも手伝いネット上の解説やライターの説明では「フード」と案内されていますが、そもそも光学系第1群 (前玉) の位置が奥まっているので、前玉周囲の反射防止環自体がフードの役目を兼ねており僅か数ミリ分の突出だけでフードの役目にはなりませんね (つまり単なる思い込みです)(笑)
※ 上の写真は説明用にオレンジ色フィルターをセットしています。

また、着脱方式に「ベアリングを使っている」と解説されていますがそれも間違いで、右写真のようにベアリングではなく「ダボ」を前玉直前に埋め込んでおりハガネの反発力で着脱式を実現しています。
このような話は外から観察しただけではなかなか判明しませんね(笑)
バラしている人にしか分からないでしょう。

なお、このモデルは「回転式繰り出し/収納」方式を採っているので、距離環を回すと鏡筒と絞り環が一緒になってグルグルと回転しながら繰り出し/収納をします。つまり、絞り環もクルクル回っていくことになるので2箇所 (両サイド) に指標値が刻印されていますから、操作性は最初とっつきが悪いかも知れません (すぐに慣れます)。

ちなみに、レンズ銘板で前期のモデルは「C」刻印がモノコーティングを表していましたが、後の後期型では「Makro-Kilar」のように「Makro」と赤色刻印することで代用しています。

 

今回ご依頼の内容は以下になります。

当初バラす前のチェック項目

  1. 光学系内にクモリや汚れ/埃がある。
  2. プリセット絞り環が固着しており動かない。
  3. 無限遠がギリギリ出ている (合焦している) 状態。

バラした後の問題点

4. 過去1回だけメンテナンスされており「白色系グリース」を塗布。
5. その後「潤滑油」を注入されている。
6. 距離環ローレット (滑り止め) の経年劣化。
7. 絞り環制限キー欠落。
8. 無限遠位置でマウント部とヘリコイドの干渉あり。
9. フランジバック超過。

  

上の写真は海外オークションebayから拾ってきた「arriflex standard (arri STD)」マウントのMakro-Kilarですが、解説のとおりこのモデル (焦点距離:40mmのみ) の場合、マウントの「」固定方法は「マウント環 (グリーンの矢印) 」に具体的なマウント種別の「 (マウント部赤色矢印)」を3本の固定ネジで締め付け固定する方法を採っています

右写真はその「マウント部の爪」の相違を実際の「arri STD」マウント用の爪とexaktaマウントとを並べて比較しています (当方の手持ち在庫)。2つともオリジナルの個体から取り外したマウントの爪なのですが「3本の固定ネジに拠る締め付け固定」であることがお分かり頂けると思います。他のマウント種別 (CマウントやM42等々) も含めて全てこの方式で一貫しています。

ところが今回の個体は、そもそも「マウント環」が存在せずにそのまま一体型でアルミ合金材による「arri STD」マウントになっていたので、正直初めて見るマウント部です。

しかし実際にバラしてみると無限遠位置の時、上の問題点6.のとおりヘリコイドがアルミ合金材のマウント部内部に干渉して停止していました。オリジナルの「マウント環」の場合、無限遠位置の時ヘリコイドとの干渉を避ける目的からマウント環内部は一段切削加工されているのですが、今回のアルミ合金材マウント部にはありません (従って干渉するのは当たり前)。

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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構成パーツ点数が少ないですが、そもそもバラす方法が分からないでしょうから、ここまで完全解体できる人はそんなに多くないと思います。

今回のマウント種別は「arri STD」ですが、過去に扱った同種の個体とは構造化や構成パーツの一部に相違があります。そもそもKilfittでは筐体外装も含めて「紫色」のメッキ塗り重ねで最終的に黒色になるよう加工しているので、一部だとしてもクロームメッキで加工されているパーツを見たのは今回が初めてでした。

↑上の写真は今回の個体のマウント部 (左) と当方手持ち在庫のマウント部 (右) を並べていますが、よ〜く観察すると今回のアルミ合金製マウントには細かい仕様の相違がありマウントの「」の高さが違ったりしています。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。

↑フッ素加工が施された10枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑ダブルヘリコイドなので、ヘリコイド (オス側) に内ヘリコイドをネジ込みます。この外側にさらに外ヘリコイドがネジ込まれてダブルヘリコイドになるので、全てのネジ込み位置が適正でないと当然ながら無限遠位置がズレますし基準「Ι」マーカー位置や絞り環の位置までズレてしまいます。ネジ込み位置は互いに46箇所、或いは52箇所あるので微調整はできますが、無限遠位置 (基準マーカー位置) は一つしか無いので合致するまでネジ込みを繰り返します。

↑さて、冒頭でご案内した今回のご依頼内容「2.プリセット絞り環が固着しており動かない」と「7.絞り環制限キー欠落」の問題がこの工程解説です。

先ず、そもそもグリーンの矢印にネジ込まれているべき「制限キー」と言うシリンダーネジが欠落しています。シリンダーネジは金属製の円柱にネジ部が備わっている特殊ネジなので当然ながら当方に在庫などありません。

シリンダーネジがセットされることで絞り環操作が開放〜最小絞り値までを操作できカチンと言う音がしてちゃんと停止します (ブルーの矢印)。しかし、シリンダーネジが無いと絞り環はどんどん回ってしまい最後は外れてしまいます。

さらによ〜く観察するとグリーンの矢印の反対側にもネジ穴が用意されていますが銀色になっていません。つまり生産時の正しいネジ穴はそちらになりますが、後から新しいネジ穴が切削されたのがグリーンの矢印の穴です。にも拘わらずシリンダーネジが入っていませんでした。

プリセット絞り環を組み込んだり、ヘリコイドを全てセットしたりしながらいろいろと調べていくと、今回の個体が改造品である可能性が強くなってきました。

最初意味が分からずにグリーンの矢印箇所にネジ込む代用ネジを調達して組み立てましたが、絞り環/プリセット絞り環の指標値位置が基準マーカーの位置からズレてしまいます。反対側にある生産時の正しいネジ穴位置で代用ネジを止めても、やはりズレます・・。

基準「Ι」マーカーは外ヘリコイド側に白線があるので、最後まで組み上げなければ絞り環と プリセット絞り環が正しい位置でセットできたのか確認できません。この組み立ててはバラす作業を延々と2時間続けて8回目で結論しました。

どうもヘリコイド (オス側) と絞り環/プリセット絞り環はマウント種別が異なる別の個体から転用されたのではないかと推察します
何故ならばシリンダーネジが入るべきネジ穴は1箇所しか必要なく、その位置で合わせても基準「Ι」マーカーと合致せず、且つ何とプリセット絞り機構の操作が逆転してしまい、開放「f2.8」固定にセットした時最小絞り値「f22」まで絞り環が回ってしまいます (つまり最小絞り値セット時はf22固定で動かない)。

つまり、マウント種別が異なるが故にフランジバックの関係からシリンダーネジの固定位置が違っており、それは必然的に基準「Ι」マーカー位置とも合致しないと考えればこのような状況が説明できます (何故なら回転式繰り出し/収納方式で絞り環やプリセット絞り環と鏡筒が一緒に回る設計だから)。

そこで、ワザワザ新たにシリンダーネジ用のネジ穴を切削して用意したのにも拘わらず、肝心なシリンダーネジを入れていない理由は、過去のメンテナンス者がこのモデルの「プリセット絞り機構」とシリンダーネジの適正位置 (つまりフランジバックとの関係) を全く理解しておらず、最後は諦めて絞り環を最後まで回して締め付け固着させてしまったのだと推測できます。結果、プリセット絞り環のクリック操作だけで絞り羽根が開閉する状態に強制セットしていたと言えます。

↑上の写真はさらに4時間経過後に撮った写真です。結局、仕方ないのでこの個体で適正位置でシリンダーネジが入るよう当方にてドリルで3つ目の「ネジ穴」を用意して代用ネジを入れ、絞り環/プリセット絞り環が正しく機能するように強制的に処置しました。

もちろんダブルヘリコイドを全てセットして基準「Ι」マーカー位置と無限遠刻印「∞」位置、或いは絞り環/プリセット絞り環指標値 (上の写真の赤色) などが全てピタリと合致するように調整しました。

↑こんな感じでグリーンの矢印箇所に新たな3つ目のネジ穴を用意し代用ネジ (シリンダーネジは無いので単なるネジで代用) を入れました。但し、代用ネジが長すぎても頭が大きすぎてもダメなので、発見するまでには相応の時間が掛かってしまい (何度も締め付けては外して別を探すを繰り返した) ため、上の写真撮影は翌日に撮っています。

問題が改善できたのでようやく光学系前後群を組み付けられます。

↑今回の個体で初めて、このモデル (焦点距離40mmに限る) にシム環が存在することを知りました。シム環とは無限遠位置調整のために用意されている単なる環 (リング/輪っか) でスペーサーのような役目です。

↑こんな感じでシム環が鏡筒 (絞りユニット) にセットされます。普通一般的なオールドレンズはシム環が鏡筒の「後側」に入ることが多いのですが、この個体では前に入っていました。

実は、上の写真は2日目に撮っており、且つ一旦光学系前後群を絞りユニットに組み付けたところまで進んだにも拘わらず、再び外して撮影しています。

最後まで進んで (組み上げて) フランジバックが適合していなければまたバラすことになるので、解体が特殊なだけにそれは避けたい一心で仮組みして確認したワケです。

つまり、このシム環の位置が「前に入っている」ことで今回の個体が「ニコイチ+マウント部改造品」であることに気がついた次第です。前述の絞り環/プリセット絞り環の組立工程でも「???」でしたが「ニコイチ」である可能性はだいぶ強く感じていました。

しかし、シム環が鏡筒の前に入るとなると「故意に鏡筒位置をマウント側に後退させている」ことになり、それはつまりフランジバックが適合していないことの「」になります。一般的なオールドレンズではマウント種別に従いマウント部の仕様を変更することでフランジバック調整をしている設計が多いですから、シム環を鏡筒の前に入れることは非常に希です。

そこで、今回の個体をバラして内部構成パーツをチェックした時に、今までに見たことが無いクロームメッキ加工が施されたパーツを見つけて不思議に感じていたのが納得できました。鏡筒位置が後退するが為に「絞り環からの連係環」と「シム環」の2つを用意しています。

ここで冒頭の問題点「3.無限遠がギリギリ出ている (合焦している) 状態」が説明できます。
シム環の長さが足りていないのです。逆に言うと、さらにもう少し鏡筒固定位置をマウント側に後退させなければ、現状フランジバック超過なので (つまりアンダーインフ状態) 無限遠位置が甘い描写に至っています

↑仕方ないので再び鏡筒を取り外して適正な鏡筒固定位置 (正しいフランジバック確保) を確定させ、ようやく「ベアリング+スプリング」を組み込みプリセット絞り環をセットしクリック感の調整も施した上で完成したのが上の写真、鏡胴「前部」です (フロントベゼルを装着済)。

ここまででさらに2時間を要しており、正直疲れてきました(笑)
ちょっともぅお腹いっぱいかなぁ〜と言う感じです(笑)

↑そして最後の最後、ダブルヘリコイドの組付けでハマったのが上の写真です。アルミ合金製のマウント部をセットすると、上の写真グリーンの矢印の突出分が無限遠位置附近でマウント部内壁に干渉してしまいトルクが急に重くなります。

仕方ないので、今度はマウント部内部のアルミ合金材を削りまくりました・・(笑)

4時間掛かりで削ったところ、今度は違う感触で擦れて抵抗/負荷/摩擦を感じます。ブルーの矢印の出っ張り分で、これはシム環の長さ (厚み) 分が影響していますが、前の工程で鏡筒位置をさらに後退させていますからシム環の長さを削るワケにはいきません (削ると再び無限遠が甘くなる)。そこで仕方なくアルミ合金材のマウント部内側を削ろうしましたが、何処で干渉しているのか分かりません。

これだけは明言できます・・今回の個体は過去メンテナンス者が以下の3つのパーツを自作していますが、面取りやメッキまで加工しているのでプロ (おそらく金属加工) の所為です。
しかし、残念ながらこのモデルの「原理原則」を理解できていないことと、フランジバックが足りないサイズで自作してしまったのが問題だったと言えます。

  • 絞り環連係環の自作 (クロームメッキパーツ)
  • シム環自作 (クロームメッキパーツ)
  • マウント部の自作 (アルミ合金材)

もちろん、そもそも別マウントの個体から転用して「ニコイチ」したのが間違いの始まりだったワケですが、何と丸2日掛かりでその尻ぬぐいをしたのが当方という結末です(笑)

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑ただでさえ完全解体がとても難しいモデルなので、正直な話あまり扱いたくないのですが、実はまだオーバーホール/修理ご依頼分の「Makro-Kilar」が全部で5本も残っています(笑)

もぉ〜、何でも来い!・・みたいな感じですョねぇ〜(笑)
1本仕上げるだけで丸2日掛かりだったワケで、残り5本を片付けるのに何日かかるのやら(笑)

ここまで「Makro-Kilar」をオーバーホールするなら、ちょっとミュンヘンに出向いてKilfittの末裔を訪ね、サポート料金を貰いたいくらいですョ(笑)

↑光学系内のクモリはほぼ除去しましたが、残念ながら第3群貼り合わせレンズのバルサム切れが進行しており、非常に薄いクモリだけは残っています。当方ではバルサム切れの処置ができないのでそのまま清掃後組み戻しています。ほんの微かなクモリなので、おそらく言われなければ気がつかないレベルですから描写性はだいぶ向上したと思います (バラす前のチェック時で確認したコントラスト低下は皆無)。

ご覧のように鏡筒 (絞りユニット) 前にクロームメッキ加工のシム環が居るので、本来この製品にはあり得ない「銀枠」が周囲に少しだけ見えてしまいますが隠せません (申し訳御座いません)。もしも気になるようでしたら請求額から必要額分減額下さいませ

↑後玉固定位置とフィルムカメラ装着時のミラー干渉防護環位置は当初位置のままで再セットしました。第3群貼り合わせレンズ (つまり後玉) のコーティング層は既に経年劣化からコーティングハガレなどが生じていますし、カビが発生していたのでカビ除去痕も残っています。

↑10枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環/プリセット絞り環共々確実に駆動するよう改善できています。

ここからは鏡胴の写真ですが、経年の使用感を僅かに感じるものの当方による「磨きいれ」を筐体外装に施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。一部指標値が清掃時に褪色したため着色しています。

↑ご依頼時に「現状のトルク感が気に入っている」とのことでしたが、当初バラした時にダブルヘリコイドには「白色系グリース」が過去メンテナンス時に塗布され、且つその後に「潤滑油」を注入されていたため、既に経年劣化と化学反応からグリースは「粘着性」を帯びていました。

このまま放置するとおそらく5年前後でヘリコイド固着に至り製品寿命を迎えていたと推察します。このモデルはヘリコイドネジ山が急勾配で、且つ大変細かいので固着した場合「カジリ付」になり専用工具を使っても二度と外れません (アルミ合金材なので噛んだら外れません)。

↑最終的に以下についてご報告します。

1. 光学系内にクモリや汚れ/埃がある。
当初バラす前のチェック段階で確認できたコントラスト低下は大幅に改善できていますが、
第3群 (後玉) 貼り合わせレンズのバルサム切れ進行から、極僅かなクモリが除去できずにそのまま残っています (当方では機械設備が無いのでバルサム切れ対処できません)。

2. プリセット絞り環が固着しており動かない。
7. 絞り環制限キー欠落。

制限キー欠落につき代用ネジ調達し、適正な固定位置を調査してセットしました為「絞り環」が機能しています。
なお、固着しているのはプリセット絞り環ではなく「絞り環」のほうで、プリセット絞り環はちゃんとクリック感を伴い当初より機能していました。
但し元々絞り環を故意に固着させていたためトルク調整ができず少々トルクムラが残り、且つ重めの操作性に至っています。可能な限り「磨き研磨」を施し改善させましたが現状の軽さが精一杯です。
このモデルは「回転式繰り出し/収納」なので距離環側よりも絞り環側を軽く仕上げないと、ピント合わせ後の絞り環操作でピント位置がズレてしまうので本来は絞り環操作のトルク感を「軽めに仕上げる」のがベストですが、申し訳御座いません (これ以上軽くできません)。

3. 無限遠がギリギリ出ている (合焦している) 状態。
9. フランジバック超過。

内部シム環と鏡筒との間にさらにスペーサーを咬まして「鏡筒位置を追加で後退させた」ので現状キレイに無限遠合焦しており、もちろんフランジバックも許容内に収まりました (但し、当方所有LMマウントアダプタにて確認/調整実施)。
なお第1群 (前玉) 外周にシム環の縁が一部露出しており (改善できません)、スミマセン。

4. 過去1回だけメンテナンスされており「白色系グリース」を塗布。
5. その後「潤滑油」を注入されている。
このままではネジ山が噛んでしまう「カジリ付」に至るのでヘリコイドグリースを入れ替えました。当方所有で最も「粘性:重め」のグリースを塗布しましたが、当初トルク感と比較するとだいぶ軽く仕上がっています。当方ではこれ以上重くできません。申し訳御座いません。

6. 距離環ローレット (滑り止め) の経年劣化。
既に経年劣化からボロボロになっています (硬化が進行しています)。再貼付時にどうしてもラバーを伸ばせないので (伸ばした時点でボロボロになるため) 1箇所で切りましたが、その際ボロボロに剥がれました。その箇所が汚く再貼付になっています。申し訳御座いません。また縁部分もキレイにしようとするとヒビが入る為、そのままにしています。申し訳御座いません。

8. 無限遠位置でマウント部とヘリコイドの干渉あり。
この原因はアルミ合金製マウント部の設計諸元が適合していない為なので、無限遠位置でヘリコイドが干渉する分はアルミ合金材を削りましたが、残念ながらシム環の突出分が干渉している部分は「マウント部の内寸径のミス」なので、当方には機械設備が無く対処しようがありません。申し訳御座いません。一応「磨き研磨」で可能な限り抵抗/負荷/摩擦を低減させていますが、距離環の無限遠位置附近で僅かに抵抗/負荷/摩擦によるトルクムラが発生しています

10. 現状の操作性について
距離環を回してピント合わせした後に、絞り環操作するとピント位置がズレてしまいます。
絞り環側のトルク感をこれ以上軽くできないので (或いは距離環側のトルク感をこれ以上重くできないので) 可能であれば設定絞り値を事前確認後にプリセット頂き、それからピント合わせするご使用方法が最善かと思います。

・・以上ご留意下さいませ。なお、上記1.〜10.についてご納得頂けない分についてはご請求額より必要額分減額下さいませ (減額の最大値は無償扱いまでになります/当方による弁償などはできません)。
大変申し訳御座いません、お詫び申し上げます。

↑レンズ銘板に「」ドットが刻印されているので希少なアポクロマートレンズです。
当初バラす前の実写チェックで、無限遠位置のみならず3m前後や近接撮影も確認しましたが低コントラストであることを除いてもピント面の鋭さが足りないような印象を持ちました。
原因は、おそらくフランジバックが適正ではなかった点と、それに伴い鏡筒の固定位置が僅かに超過していたための描写劣化と推測します。

現状、このモデル本来の鋭いピント面に至っていると思います・・。

↑当レンズによる最短撮影距離5cm (実際は10cmほど離れています) での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値「f8」になっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。3カ月間にも渡り大変お待たせしましたこと、改めてお詫び申し上げます。申し訳御座いませんでした。