◎ RICOH (リコー) XR RIKENON 28mm/f3.5《富岡光学製》(PK)

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今回初めて取り扱う謎のモデルですが、そもそもネット上で検索してもたいしてヒットしませんし、このモデルの存在自体を全く知りませんでした。この当時の「XR RIKENON」シリーズは何本も今までにバラしているので内部の構造化は把握していますし、どのモデルが富岡光学製なのかも構成パーツやその構造から根拠として把握しています。例えば標準レンズのほうで「和製ズミクロン」の異名を持つ「XR RIKENON 50mm/f2」が有名ですが、このモデルも富岡光学製です・・その後世代交代した「RIKENON P 50mm/f2」モデルは日東光学製などとも案内されていますがバラしてみたところ、やはり富岡光学製である要素が多く含まれていました。今回オーバーホール済で出品するこのモデルもカタチこそ異なりますが内部の構造化や設計の考え方などがやはり他の富岡光学製モデルと通じる要素が多く富岡光学製と判断しています。

 【焦点距離28mmのRIKENONモデル】

XR RIKENON 28mm/f3.5:1977年発売
絞り羽根枚数:5枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:30cm
筐体:総金属製
レンズ銘板:金属製 (ネジ込み固定)

XR RIKENON 28mm/f2.8:1978年発売
絞り羽根枚数:6枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
筐体:総金属製
レンズ銘板:プラスティック製 (接着固定)

RIKENON P 28mm/f2.8:1984年発売
絞り羽根枚数:6枚
最小絞り値:f16
最短撮影距離:30cm
筐体:一部金属製
レンズ銘板:プラスティック製 (接着固定)

XR RIKENON 45mm/f2.8:1993年発売
絞り羽根枚数:6枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:60cm
筐体:総プラスティック製
レンズ銘板:プラスティック製 (接着固定)

XR RIKENON 28mm/f3.5 ASPHERIC:1994年発売
絞り羽根枚数:6枚
最小絞り値:f22
最短撮影距離:35cm
筐体:総プラスティック製
レンズ銘板:プラスティック製 (接着固定)

・・こんな感じです。一応発売年度を基に並べてみましたが今回出品するモデル「XR RIKENON 28mm/f3.5」が一番先頭に来ています。これは内部の構造化や構成パーツの仕上げ方などが当時の「XR RIKENON 50mm/f1.4」と近似しているからであり当然ながら富岡光学製になりますし、逆に最後のほうのパンケーキレンズは富岡光学製ではないと踏んでいます (当方未扱いなのでまだ不明)。

ちなみに、この焦点距離28mmの広角レンズにはモデル銘の後に「L」や「S」などが附随したモデルが発売されていないようなので1978年発売の「XR RIKENON 28mm/f2.8」以降は少々長い期間モデルチェンジがされていなかったのかも知れませんがよく分かりません。

今回初めてバラしてみたところ光学系は6群6枚のレトロフォーカス型でした。構成図はバラした際の光学硝子レンズのカタチからスケッチしたモノなので正確ではありません。第3群に大きな硝子の塊が配されており貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) が存在しません。

今回取り扱った最大の理由は市場でも有名なパンケーキレンズ「XR RIKENON 28mm/f3.5 ASPHERIC」の描写性よりもより鋭いピント面を構成し富岡光学製オールドレンズの特徴を良く現しているモデルだからですが年間でも数本レベルでしか出回らない稀少品でもあります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。部品点数自体はそれほど多くはありませんが富岡光学製オールドレンズに見られる「意味不明」 の構造化・・つまり無駄が多い・・が成されている箇所があります。

絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

5枚の絞り羽根を組み付けて鏡筒に絞りユニットをセットした時点の写真です。この絞り羽根の上には (まだ固定されていないので) 実際には「メクラ蓋」が被さります・・つまり上の写真は「後玉側」から撮っているんです。前玉側から組み付けることができない構造化です。しかもメクラ蓋を被せた後はさらに光学系後群がそのままダイレクトに入ってくるギリギリの設計をしています。

そしてこちらが前玉側から撮影した写真です。前玉方向にいきなし金属棒が突っ立っていますが「絞り羽根開閉アーム」でマウント面にある絞り連動レバーの動きに連動して絞り羽根を勢いよく開いたり閉じたりしているアームです。鏡筒の右端に位置している弧を描いた金属板 (プラスネジ2本で締め付け固定) は上の写真の鏡筒横から飛び出ている「絞り羽根開閉幅制御アーム」です・・絞り環の操作に連動して絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) を制御しているアームですね。

こちらは距離環やマウント部を組み付ける基台になりますが距離環の駆動域が狭いワリには基台の奥行きは深くなっています・・レトロフォーカス型の光路長が長い分があるからですね。しかもパンケーキれんずと違い光学系を6群6間椅子の構成で設計してきたので、このような深い基台になってしまいました。

基台だけで撮影するのを忘れてしまったので、既にヘリコイド (メス側) がネジ込まれています。無限遠位置のアタリを付けた場所までしかネジ込めません (最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません)。

鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

この状態で基台をひっくり返して撮影しました。左右に見えている金具は「直進キー」で距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツになります。鏡筒の右端には前述の「絞り羽根開閉幅制御アーム」が飛び出ています。

再びひっくり返して鏡筒内部を撮影しました。前述の「絞り羽根開閉アーム」のほうなのですが、何やら2本の爪で掴まれています・・マウント面の絞り連動レバーが動くことで、この「爪」が左右に勢いよく振られ (グリーン色の矢印)、結果絞り羽根が勢いよく開いたり閉じたりしているワケです。しかも、普通のオールドレンズではマウント部内部に装備させている「マイクロ・スプリング」をこんな場所に配置しています・・絞り連動レバーが戻るチカラを与えている役目のマイクロ・スプリングになりますが特大であり、しかもこの狭い鏡筒内部に装備させている変わった考え方の設計です。

マウント部の組み上げは少々面倒で一気に進めてしまいました・・従って途中の写真がありません。絞り環にベアリングを組み込んでセットするまではいいのですが、その後絞り環と絞り羽根との連係をさせる機構部が少々厄介でゆっくり写真を撮っている余裕がありませんでした。

この後は光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

 滅多に市場に出回らない珍しいモデル「XR RIKENON 28mm/f3.5」です。今回扱った理由はその鋭いピント面を構成する描写性から敢えてパンケーキレンズではないタイプをチョイスしました。もちろん富岡光学製オールドレンズとしての特徴をふんだんに備えているので質感表現能力の高さや立体的でリアル感タップリの画造りも愉しめます・・第3群に大きな硝子の塊を配した6群6枚の拘りが現れていますね。

光学系内の透明度はピカイチで「これでもか」と言うほどに透明度が高いです・・LED光照射でも非常に薄いクモリすら「皆無」です。

上の写真 (1枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しましたが極微細な点キズもたいして無いので写真は1枚だけです。

鏡筒の絞りユニットのすぐ直下に組み付けられる光学系後群ですが、同様に異常なほどの透明度を誇っています。

上の写真 (1枚) は、同様にあまりにもキレイな状態なので1枚しか写真を用意していませんが光学系後群のキズの状態を拡大撮影した写真です。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:7点、目立つ点キズ:5点
後群内:5点、目立つ点キズ:3点
コーティング層の経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:なし
バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズ無し)
LED光照射時の汚れ/クモリ:皆無
LED光照射時の極微細なキズ:あり
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際は清掃時除去できなかった極微細な点キズなので塵や埃ではありません。
光学系内の透明度は非常に高い個体です
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細なキズ<!–や汚れ、クモリなど–>もあります。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

5枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。この絞り羽根のすぐ脇 (鏡筒内の隙間部分) には前述の「変なカタチの爪」が居るワケで・・バラさなければそんなギミックが隠されているなどとも一切判らないままでしたね(笑)

ここからは鏡胴の写真ですが経年の使用感をほぼ感じさせない、まるで「新品同様品」のような大変キレイな筐体です。当方による「磨き」を入れたのでさらに落ち着いた美しい仕上がりになっていますし距離環のラバー製ローレット (滑り止め) 部分も業務用中性洗剤でシッカリ清掃したので経年の汚れや手垢なども一切残っていません。

先日女性の方にご落札頂きましたが、えらく喜んでおられました。自分はそんなに神経質ではないほうだが、さすがにオールドレンズのローレット (滑り止め) 部分はそのまま掴むには気持ち悪い・・と仰っていました。確かに長い時間様々な人の手に渡って触られ続けてきたのですから、その汚れを目にしただけでも気持ち悪く感じる方は多いと考え当方ではワザワザ業務用中性洗剤で洗い流しています (もちろん最後は自然乾燥)。元々家具屋に勤めていたこともあるので清掃に関しては何が一番効果が見込めて且つ安全 (素材にとっての安全面) なのかを知っています。ラバー製や金属製などそれぞれの材質に見合った適する清掃方法があり使う薬剤なども適していなければ逆に経年劣化を促す結果になり兼ねませんし、当然ながら表層面の塗膜に関しても知識が必要になってきます。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度」を塗布しています。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「完璧に均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

フジカ製「FUJINON」シリーズをず〜ッと出品してきましたが今回はリコーです。ちょっと目線を替えて珍しそうなモノばかりを集めてみましたがアッと言う間にご落札頂き本当に感謝に堪えないですね、ありがとう御座います!

今回の出品するモデル「XR RIKENON 28mm/f3.5」も敢えて開放F値「f3.5」を採ってきましたので、その理由を汲んで頂ければきっとご活用願えるかと期待しています。

当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでベッドライトが点灯します)。パンケーキレンズでは、この鋭いピント面が出てきませんから充分に価値のあるモデルだと思いますし別に存在する (有名なほうの) 開放F値「f2.8」と比べても余裕を持たせた光学系設計から安定した描写性を期待できます。

絞り環を回して次の絞り値「f5.6」で撮影しています。

F値「f8」で撮っています。

F値「f11」になりました。

F値は「f16」ですが、まだ極僅かに背景側にはボケが出ています。

最小絞り値「f22」の撮影になります。