◎ Rollei (ローライ) Tele-Tessar 200mm/f4 Rollei-HFT Made by Rollei《後期型》(QBM)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わってご案内するモデルは、旧西ドイツの
Rollei製中望遠レンズ・・・・、
 『Tele-Tessar 200mm/f4 Rollei-HFT Made by Rollei《後期型》(QBM)』です。


オーバーホール/修理ご依頼分ですが当方の記録用として掲載しており、ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)

今回の扱いが初めてになりますが、今回の個体は既に一度解体されており前オーナーの手により組み立てに挑戦したものの、正しく組み上げられなかったという個体です。今回のオーバーホール/修理ご依頼者様がおそらくそのような個体を掴まされてしまったようで、何とも哀しい現実です。

特に海外オークションebayでは、今もそのような個体が頻繁に流通しているままなので要注意ですが、そもそもそれを見破る手立てがありません(泣) つまり海外オークションebayを使う 限り「リスク覚悟」の上でのオールドレンズ調達とも言い替えられますね。

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ご依頼者様から貴重な情報提供があり、特に光学系やモデルバリエーションの変遷などが掴めました。この場を借りてお礼申し上げます! ありがとう御座います!!!

当方にとってはこの上ないプレゼントですね・・!(涙)

1970年に旧西ドイツの光学メーカーRollei (ローライ) から発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「Rolleiflex SL35」が採用したマウント規格が「QBMマウント」です。

このフィルムカメラは本来旧西ドイツのZeiss Ikonが扱っていた「ICAREX (イカレックス) シリーズ」の最終モデル「SL706」などの製産を旧西ドイツのバーデン=ヴェルテンベルク州Oberkochen (オーバーコッヘン) の工場で行っていた事から複雑な背景になります。

そもそも旧西ドイツの光学メーカーZeiss Ikonが1971年にフィルムカメラ事業から撤退して しまったので、その時の背景がこの当時のフィルムカメラやオールドレンズとの関わりを難しくしています。

【旧西ドイツZeiss Ikonを取り巻く背景】
1756年:オーストリアのウィーンでVOIGTLÄNDERが創業
1849年:戦前ドイツのブラウンシュヴァイクに本社/工場を移転
1889年:戦前ドイツでCarl Zeissを傘下にしたカールツァイス財団発足
1926年:戦前ドイツのDresdenでZeiss Ikonが発足
1932年:Zeiss Ikonがレンジファインダーカメラ「CONTAX I型」発売

ドイツ敗戦時に旧東西ドイツに分断される

1945年:旧西ドイツのシュトゥットガルトを本拠地としてZeiss Ikonが活動開始
1945年:旧東ドイツのドレスデンを本拠地のままZeiss IkonがCarl Zeiss Jenaに吸収
1956年:旧西ドイツでVOIGTLÄNDERとZeiss Ikonがカルテル提携
1969年:旧西ドイツでZeiss IkonがVOIGTLÄNDERを完全合弁化 (吸収合併)
1971年:旧西ドイツのZeiss Ikonがフィルムカメラ市場から撤退
1972年:旧西ドイツでZeiss Ikonがカメラ事業とVOIGTLÄNDERをRolleiに譲渡
1974年:旧西ドイツのCarl Zeissが日本のヤシカと提携し「CONTAX RTS」発売
1974年:旧西ドイツのRolleiが工場をブラウンシュヴァイクからシンガポール工場に移管
1981年:旧西ドイツのRolleiが倒産
1989年:「ベルリンの壁崩壊」事件勃発
1990年:東西ドイツ再統一によりCarl Zeiss JenaがZeissに吸収される

・・このような感じの年表で捉えると分かり易いかも知れません。

すると上の年表で赤色表記の年代部分が工場との関わりになります。当初は旧西ドイツの
oberkochenにあった製産工場は1969年VOIGTLÄNDERブラウンシュヴァイク工場に 移管されます。その後今度は1974年Rolleiに譲渡された為、後にはシンガポール工場へと 引き継がれていきました。

従って最終的にこれらの光学メーカーから登場していたフィルムカメラ製品やオールドレンズなどはシンガポール工場へと移管されていった話になりますね。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

1970年発売初期型

供給製産:Carl Zeiss
製産工場:oberkochen工場製
筐体意匠:SL仕様 (銀枠飾り環あり)
コーティング層: モノコーティング
マウント規格:QBM/M42マウントのみ

1973年 (?) 発売後期型

供給製産:Carl Zeiss
製産工場:Braunschweig工場製
筐体意匠:黒色鏡胴 (銀枠飾り環なし)
コーティング層:マルチコーティング
マウント規格:QBM/M42マウントのみ


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
円形ボケを伴う実写が無いのでピント面の確認用にピックアップしました。基本的にピント面のエッジが繊細で細いのですが解像度はそれほど誇張的に感じられません。コントラストも高めですがいわゆるコッテリ系の写りではなく、やはりそこはRollei HFTの「自然で忠実な色再現性追求」がちゃんと感じられますね。とても好感が持てる画造りです。

二段目
ダイナミックレンジが広いので明暗部がギリギリまで耐え凌ぎ見事な階調幅でグラデーション表現できます。ハッキリ言ってもっと解像度感を有する200mmが他のオールドレンズには数多くあると思うのですが、何かこのモデルはリアル感が高くて目が留まります。人の目で見た自然な印象があるからでしょうか。

光学系は当時のカタログやネット上のサイト解説などから5群6枚の 変形ペッツパール型構成と推定していますが、左図は今回オーバー ホール/修理ご依頼者様から分けて頂いた情報からの抜粋です。

確かにネット上での解説でもこの構成図が使われているのですが、もちろんメーカーが供給していた資料からの転載なので間違いないワケです。

ところが今回バラしたところ、全く違う光学系が実装されていました!(驚)

5群6枚の変形ペッツパール型構成は同じなのですが、何と絞りユニットの配置を変更しており前群と後群とのパワー バランスを変えて再設計しています。

頂いた資料 (ドイツ語) を読み解くと、どうやら第4世代で マルチコーティング化に伴い光学系が再設計されている
ようです。

右構成図は今回バラして光学系の清掃時に、各群を当方の手によりデジタルノギスで計測したトレース図です。当方の計測なので信憑性が低いです (参考に一切なりません)。

確かに様々なサイトで案内されている情報とは違うかも知れませんが、申し訳御座いませんが、一応ちゃんとデジタルノギスで計測したのでウソを掲載しているつもりは全く御座いません
そのようなご指摘はどうかご容赦下さいませ・・スミマセン。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回初めての 扱いなのですが、既に一度バラされており組み立てが正しくされていない状況の個体です。

従って完全解体するのは簡単なハズなのですが、各部位の組み立てを見るとこの前オーナーは「単にバラして同じ箇所で再び固定して組み直す一般的な整備者」である事が分かってしまいます(笑) どうしてそんな事まで判明するのかと言えば、当方のように「観察と考察」をしながら逐一使われている構成パーツとの整合性を考え、且つ「原理原則」にちゃんと則っているのかを全ての部位で確認しながら作業していないからです。

つまりな〜んにも考えずに(笑)、ただ単にバラした時の位置で再びネジ止めして組み立てていくだけの整備です。このような整備は今現在も非常に多くの整備会社で執り行われ続けていますが、実はひとたび過去メンテナンス時の整備者がミスると、そのまま次の整備者も同じ位置で締め付け固定していくので「ミスが継承されていく整備」とも言い替えられます(笑)

ところが、他の部位の組み立て方をチェックすると、また異なる組み上げをしていたりするので「そこだけがミスの継承だった」事まで判明してしまい(笑)、オモシロイことに過去の整備履歴まで分かってしまうと言うのが当方がやっている「観察と考察」のメリットです。

今回の個体を整備した前オーナーは「それらしく組み上げられるスキルを持つ」レベルなので決してシロウト整備ではありません。至る箇所の「原理原則」が無視されたままなので(笑)、な〜んにも分かっていない低いスキルレベルではありますが、それでもこのモデルをイッパシに最後まで組み上げられるスキルを持つ整備者は、シロウト整備では不可能です

↑当初バラした直後に溶剤で洗浄してしまう前に撮影した「絞り環」に附随する「絞り値キー (板状パーツ)」を拡大撮影しています (赤色矢印)。

するとムリなチカラが掛かってしまいパーツが水平を維持しておらず変形したままです。グリーンの矢印の方向で「絞り値キー」がめくれ上がったり沈んだりしているので、これは「この絞り環をセットした時の制御環の位置が適切ではなかった」のに、そのままムリヤリ組み上げようとチカラ任せだった事が分かってしまいますね(笑)

つまり鏡胴の特にマウント部を固定する締付ネジ3本を締め付け固定する際に、おそらくネジを締め付けている最中に途中から重くなったハズなのですが、えいやぁ〜ッ!と最後まで締め付けてしまったワケです(笑)

そのチカラのせいで制御環側のパーツが干渉して変形してしまいました。

もちろん今回のオーバーホールではこの「絞り値キー」をちゃんと水平状態に戻してから絞り環をセットするワケで、余計な作業をするハメに陥りますね(笑) だいたいこういう過去のミスを尻ぬぐいしているのは当方だったりするのですが、その影響で今度はちゃんと駆動しない箇所が出てきますから、その責任まで当方に係ってきてしまい「何とも不条理な話」です(涙)

バラした以上、キッチリ整備するのがアンタの仕事だろ!・・と仰れば、まさしくご尤もと 頷く以外ありませんね(笑) つまりはそれらしく組み上げて出品してしまった前オーナーが「勝ち組」であり、その尻ぬぐいまでさせられる当方は「負け組」と言うポジショニングで、意外としょっちゅうあるパターンだったりしますね(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。鏡筒外壁にヘリコイド (オス側) のネジ山が切削されています。

最深部に絞りユニットがセットされるのですが、既に「位置決め環」言うパーツ (リング/輪っか) が組み込まれています。

↑このモデルも他のRollei製オールドレンズと同様「1枚の板金をプレッシングだけで折り曲げて両サイドにアームを用意」する設計概念です。上の写真は「開閉環」と言う絞りユニットの中で使われる構成パーツなので「絞り羽根の開閉キー」が刺さる穴がちゃんと6箇所にありますね。

↑「開閉環」をひっくり返して今度は裏側を撮影しましたが、赤色矢印のように曲げだけで用意されているアームなので、曲げの付け根部分 (赤色矢印) が一番弱い箇所になりますからQBMマウント」のオールドレンズはゼッタイに絞り環操作でムリなチカラを与えてはイケマセン。このアームの付け根が弱っただけで、設定絞り値どおりに絞り羽根が閉じなくなる「絞り羽根の開閉異常」に陥り、しかも修復不可能なので「製品寿命」に堕ちるしかなくなります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて「開閉環」までセットし終わったところを撮影しましたが、このモデルは「光学系後群格納筒」自体が「絞りユニットの押さえ蓋兼用」と言う設計を採っています。従ってグリーンの矢印のとおり「光学系後群格納筒」を被せてようやく絞りユニットの完成です。

↑こんな感じで絞り羽根が最小絞り値まで閉じていくのですが・・「!!!」問題発生です!(泣)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真下側が前玉側方向になりますが「光学系後群格納筒」を被せる方法は一つしか無く、締付ネジ3本で単純に締め付け固定するだけです。

ところが「絞り羽根の開閉が途中で引っ掛かり停止する」と言う不具合が発生しました。このモデルは前述のとおり他の「QBMマウント」モデル同様、絞りユニットの絞り羽根はスルスルと無抵抗で駆動しなければ適切な仕上がりに至りません

↑実は上の写真は既に3時間が経過した後に撮っています(笑)

つまり絞り羽根がするすると引っ掛かり無く駆動するよう何度も何度もバラしては組み立て直して「原因探索モード」に入ったのですが、どうしても原因が掴めずにアッと言う間に3時間が経過してしまいました。

如何に当方の技術スキルが低いのかをまさに物語っています(笑)

犯人は「位置決め環」でした。このモデルは「位置決め環が製産時点にリベット打ちで固定」されている設計です。3箇所に赤色矢印のようにリベットが打ち込まれていて「位置決め環だけを取り外せない」設計です。

絞り羽根が変形しておらず、他のどのパーツにも異常が認められなかったので最後の最後で疑って掛かったら居ました!(笑) グリーンの矢印の方向に向かって「位置決め環自体が極僅かに変形している」のです。

この因果関係も明白で・・(笑)、前オーナーがミスッて「絞り羽根の向きを反対に組み付けてしまった」ワケです。しかもそれに気が付かぬまま「光学系後群格納筒」をエイッ!と被せて締め付けてしまったワケですね(笑)

たぶん途中で締め付けが重いのにすぐ気が付いたハズなのですが、相応の処までネジを締め付けてしまったのです。そのムリに締め付けたチカラの分だけ「位置決め環が曲がった」わけです。当然ながら「位置決め環」側にしてみれば3箇所をリベット打ちで固定されているので、掛けられてしまったムリなチカラは逃がしようがありません。従って上下方向で変形する逃げ方に至った次第です。

このように「観察と考察」する事で、まるでつい昨日の如くミスッて瞬間が浮かび上がりますね(笑)

おかげさまでこの変形した「位置決め環を水平に戻す作業」までやらされるハメに陥ったワケですが、残念ながらリベット打ちされているので水平に戻しようがありません。この「位置決め環」だけを取り出して水平に戻すなら可能ですが、固定されたまま水平に戻す事は不可能です。

従って可能な限り絞り羽根開閉に影響が出ない (つまりスルスルと無抵抗で動く) 事だけを最優先で形状を整えました

↑原因が判明して対処を施しようやく次の工程に進めます。制御系パーツを鏡筒裏側にセットします。

↑他の「QBMマウント」モデルと同じ設計概念ですが「制御環」の途中に用意されている「なだらかなカーブ」に「カム」が突き当たる事で、その時の勾配 (坂) の角度に従い「絞り羽根の開閉角度が決まる」仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり、坂を登り切った頂上が開放側にあたります (ブルーの矢印)。

↑このモデルは焦点距離200mと長いので、ご覧のように「連係アーム」がそれぞれ鏡筒の繰り出し量の分だけ長さを持っています。

↑上の写真は「開閉環」側ですが、ご覧のようにベアリングによってクルクルと回転する仕組みですから、このベアリングが仮に酸化/腐食/錆びていた場合、必然的に回転が重くなるので「絞り羽根開閉異常」に至りますね。今回はサビが生じていないのでこのまま使えます (良かった)。

↑またもう一方は「直進キーガイド筒」と言い「直進キー」が行ったり来たりスライドする為のガイドがある「」です (グリーンの矢印)。

するとガイドの溝が1本しか用意されていないので、このモデルの距離環を回すトルク感は「すてべがここで決まる」話になります。決して塗布するヘリコイドグリースの種類や粘性だけでどうにかできる問題ではありません。

何でもかんでもヘリコイドグリースだけでトルクが軽くできると考えているのが一般的ですが、まずそれは不可能です(笑)

確かに単焦点のオールドレンズは構造が簡単なのでしょうが、そうは言っても「金属 vs 金属」の工業製品ですから、自ずと操作性を向上させるには限界があり、その為の特別な処置を施さなければ軽い操作性で仕上げる事は適いません。

↑こんな感じでそれぞれのパーツがセットされて内部で動くワケです。なかなかの高層化構造ですね(笑)

↑距離環やマウント部が組み付けられる基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

焦点距離が長いのでその分だけヘリコイドも大型です。

↑後からセットできないのでここで先に距離環を入れ込みます。完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で21箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑・・とまぁ〜順調に工程が進んでいるように見えますが(笑)、実はここまでの写真はすべて「1日目に撮った写真」であり、ここから次の「2日目の作業に入る」次第です。

つまり「ここまで組み上げたのはあくまでも仮組み」なのです。どうして「仮組み」なのかと言えば、取りも直さず前オーナーが一度バラしていながらちゃんと組み立てていないからです。

要は各構成パーツが使われていた位置や固定箇所など、凡そ「デタラメ」ですから適正な固定箇所や微調整を判定する必要があるので、一旦仮組みしてから無限遠位置をチェックして合致させた上で「再びバラしてもう一度組み直す」と言う作業スケジュールです。

全く前オーナーのせいで本当に面倒くさい話です・・(笑)

↑こんな感じでマウント部にも「まだ絞り連動ピンをセットしていない空状態」のまま組み上げて、とにかくマウントの爪まで固定してから無限遠位置の実写をしたいワケです。

・・とそのつもりのスケジュールだったのですが「仮組みだとしても一応当方の原理原則に則り仮組みした」ら、何とピッタシカンカン!!!(笑)

ピタリと無限遠位置が合致してマジッでビックリです!(笑)

おぉ〜、これで1日分の作業が消滅したぞ!(涙)

・・と一人で喜んでいましたね(笑)

この後は既に光学系は前後群共に清掃済で組み付けられているので「絞り連動ピン」機構部をセットして「絞り値伝達機構」を組み込んでから再度、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑予想外に1日分の作業スケジュールが消滅したので「まるで日付変更線を通過した瞬間のようにお得感いっぱい!」と言う想いです(笑)

仮組みだとしてもちゃんと「原理原則」に則り、例えばヘリコイド (オスメス) ネジ込みの際も「焦点距離200mmだからこの辺でネジ込むハズ」とアタリ付けをしながら工程を進めたので、それが功を奏した感じです。特にこれら「QBMマウント」のオールドレンズは、最後のマウント部のセットが最も大変な作業ですから (都合8つある微調整が全てクリアしていないと正しく固定できない)、それをもクリアしての話なので「一日分の作業が浮いた」ワケです(笑)

↑当初発生していた後群側の「カビ」はすべて除去し終わり、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無のスカッとクリアな状態を維持した個体です。

↑光学系後群側も薄いクモリが皆無です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり (当初は油染みが発生していた) 絞り環共々確実に駆動しますが、残念ながらこの個体では「最小絞り値:f32まで閉じない」のでご留意下さいませ。

大変申し訳御座いませんが、前述の「位置決め環の変形」と「絞り環絞り値キーの変形」の2つの因果関係から最小絞り値「f32」まで閉じるようにすると「完全開放しなくなる」状況に陥り、且つ時々絞り羽根が引っ掛かって停止する現象が起きてしまいます。

従って「最小絞り値:f32を犠牲にしてf22止まり」として、あくまでも開放〜f22まで正常に絞り羽根が開閉することを最優先しました (f32にセットできますが絞り羽根はf22のまま微動しません)。

申し訳御座いません・・。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性軽め」を使いましたが、トルクムラが残っており「繰り出し時と収納時で重さが違う」トルク感です。また全域で均質なトルク感にも仕上がっていません。

原因は「直進キー」の摩耗と特に「光学系前群の固定位置の問題」からトルクを微調整すると重くなってしまうのが分かり、諦めました。

↑一応完璧にオーバーホールが完了して仕上がっていますが、トルクムラの問題と最小絞り値「f32」まで閉じない、この2点のみ申し訳御座いません。

↑このモデルはフードを内蔵しているので上の写真はフードを引き出したところを撮っていますが、グリーンの矢印の位置に1本だけ「光学系前群固定用イモネジ」が締め付けされます。

当初の組み立てで、この「光学系前群の格納筒 (フード含む)」が最後までネジ込まれる箇所までネジ込んで実写したところピンポケしてしまいました。その最後までネジ込む箇所から1/4周分戻した位置にグリーンの矢印のイモネジが刺さる下穴が内部のヘリコイドに用意されています。

従ってその位置まで戻してイモネジを締め付けて組み上げ、最後実写チェックしたところバッチリ無限遠合焦しました。従ってこの分だけ光学系前群の固定位置がズレているので、その影響がトルク感として現れてしまったというのが実情です。

申し訳御座いません・・。おそらく環 (リング/輪っか) が1本欠品しているのではないかと思います。光学系前群とヘリコイドの間に挟まる環 (リング/輪っか) があるのではないかと考えますが定かではありません (シム環という薄い輪っかの事です)。

なお、いつもならこのレンズでのミニスタジオ撮影を実写して掲載するのですが、すみません最短撮影距離が長すぎてスペース確保できないので省きます(笑)

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。