◎ 解説:バルサム切れの見分け方 (一つの手法)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

  ●               

今回「バルサム切れはどうやって見分ければ良いのか?」とのお問い合わせメールが着信したのでここで解説したいと思います。

なお、このようなお問い合わせの類は一般の方々からメール着信してもご辞退しております。今までにヤフオク! でのお取り引きが過去にあった方々、或いはオーバーホール/修理ご依頼を過去に賜りお付き合いが既にある方からのお問い合わせに限定してご案内しています。

その意味ではいわゆる「駆け込み寺」の如く、何でも問い合わせれば親切に教えてくれるとの安直な考えでメール送信してくるのはお控え下さいませ (そこまで無償でご案内するほどお人好しではありません)。

当方宛メールでお問い合わせ頂く大前提は「今まで既にお付き合いがある方に限定される事」をご認識頂きますよう切にお願い申し上げます。

逆に言うなら、そのように今までにお付き合いがある方々には丁寧にご案内するのが務めとの認識なので、当方に対する批判や誹謗中傷、或いは嫌がらせではない限り後日ちゃんとメールにてご返事しているつもりです (但し一部の方はメール送信エラーになり音信不通になることがある/メール受信設定で迷惑メールとして省かれてしまう懸念もある)。

一言に「バルサム切れ」と言ってもどのようにこのコトバを捉えれば良いのかがまず最初のハードルになります。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

オールドレンズの場合、このような感じで光学系の設計や経年に於ける状態に拠り様々な与件が実装している光学硝子レンズに生じる懸念がある点について、その際よく使われるコトバに関し当方の捉え方を示しました。

  ●               

それではここから例として2つのオールドレンズをピックアップして、その現物写真を基に具体的な「バルサム切れ」の捉え方/判定方法の一部をご紹介していきます。

特に今現在も相変わらずですが、当方とご同業者たる『転売屋/転売ヤー』の類はヤフオク! の出品ページをチェックすると「いくらでもごまかして出品し続けている」状況なので(笑)、その意味で少しでも参考になればとの思いもあったりします (少なくとも当方自身は同じ穴の狢としても多少は正直にヤフオク! 出品しているほうではないかとの自惚れがある)(笑)

↑旧西ドイツは「Oberkochen (オーバーコッヘン)」に本拠地を構えた、CARL ZEISS製のCONTAREX版標準レンズ「Planar 50mm/f2 (CRX)」を解説の例として1本目にピックアップしました。上の写真は当方が過去にオーバーホール済でヤフオク! 出品した際の掲載写真からの転載です。

基本的にオールドレンズの光学系で特に「バルサム切れ」について考察する時、その判定には「必ず光学系の構成を知るのが大前提」なのが最大のポイントになりますから、ただ単に光学系の掲載写真を見ただけで判定できる方法を教えろと言われても、残念ながらそんな手法はありません(笑) そもそも「バルサム切れ」と言うコトバの定義について前述しているのでその対象は「当然ながら貼り合わせレンズ」にあたり、その配置を知る事がまずは基本的な心構えと言う話に至ります。

・・この点についてはどうか真摯にお受け取り下さいませ。

従って当方のこのブログに掲載している数多くのオールドレンズ達のご案内ページに「可能な限り光学系構成図の掲載に努めている」のがその理由であり、基本的に当方の光学知識は非常に疎いのでそれら光学系構成図を敢えて掲載している理由の多くを占めているのは「そんなたわいもない理由から」であり、合わせてネット上で確認できる多くの「該当モデルの構成図」に対して、実際にリアルに完全解体して引っ張り出した光学硝子レンズが「それらネット上掲載の構成図に合致していたのか否か」のほうがむしろ重きがあったりします(笑)

もっと言うなら数多くの参考文献からの引用としてそれら掲載指されている構成図が氾濫していますが、はたしてそれら参考文献で掲示されている構成図自体がそもそもちゃんとバラした上で確認していた構成図なのかどうか、この点について「引用している掲載者自身がちゃんと確認して明示せずに引用し続けている姿勢」に当方は甚だ疑問を抱いているからです。

詰まるところ光学知識が疎いのに敢えてデジタルノギスを使って逐一各群を計測して光学系構成図をトレース図として掲載している理由は・・そんなふしだらな話だったりします (スミマセン)。

するとピックアップしたこのモデルの光学系構成図は上図になり、以前オーバーホールの際に完全解体した時に取り出した光学硝子レンズを当方の手により逐一デジタルノギスで計測してトレースした図になります。

前述のとおりネット上に数多く掲載されている構成図とはビミョ〜に各群の曲率や厚み/群の間の距離/カタチなどに相違があるので、その信憑性については信用/信頼が皆無な当方の計測に拠る処からしても参考にもなりませんね (従って批判などはご勘弁下さいませ)(笑)

そこで今回の命題「バルサム切れ」に着目すると上の構成図で に色付けした箇所が「貼り合わせレンズ」と言う話です。縦線の左側が「光学系前群」にあたり一番左端が「前玉」になります。一方縦線の右側が「光学系後群」にあたり一番右端が「後玉」ですね。

ちなみに上の構成図に於いて「縦線=絞りユニット内の絞り羽根」との捉え方になりますから、まさに対象となるオールドレンズの光学系を真横から捉えた図と言う話なのが「光学系構成図」の認識であり、それは同時に「各光学硝子レンズの直径位置でスパッと縦方向に切断したようなイメージ (断面図)」との捉え方にも一致します。

このピックアップしたモデル「CONTAREX版Planar 50mm/f2 (CRX)」の光学系は5群6枚の拡張ダブルガウス型構成と捉えていますが「貼り合わせレンズは前群の2つ目の群だけ」なのが分かります。

その結果、ようやくここで始めて「バルサム切れなのか否かの判定箇所が決まる」話なのであり、オークションなどで掲載されている掲載写真をチェックする時に「この2群目の光学硝子レンズに生じている瑕疵 (薄いクモリや反射など) なのか否か」が問題になるワケです。

逆に指摘するなら光学系後群側の掲載写真を見て「バルサム切れだと大騒ぎする」のはお門違いなのが歴然ですョね?(笑) パッと見でまるで後群側にも貼り合わせレンズがあるように見えますが、実はちゃんと分離していて接着されていないのが明白です (だから 色に着色していない)。詰まるところ光学系の構成を知らなければ「判定以前のお話」だと言うのをご理解頂けると思います。

・・だから光学系構成図の掲載は必須と捉えています。

それではここから具体的に海外オークションebayで掲載されている出品写真を使ってご案内していきます。パッと見でどれだけの人達が「これはバルサム切れだ!」と明確に判定できるでしょうか。

↑先ずは1本目です。「CONTAREX版Planar 50mm/f2 (CRX)」の前玉側方向から撮影した出品写真ですね。

如何ですか? この掲載写真を見ただけで「あッ! バルサム切れだ!」と判定した方は相当な眼力の持ち主です。

↑同じ個体の掲載写真ですが複数枚掲載してある中から別の写真をご案内しました。

一つ前の写真を今一度チェックした時に先ずは位置関係の整合性を合わせる意味から「レンズ銘板の刻印文字に対する光学硝子レンズに於ける瑕疵の場所を特定する」手法が最も簡単な調べ方になります。

するとレンズ銘板の刻印文字は「CARL ZEISS Nr3180415 Planar 1:2 f=50mm」と在る中で「Zeiss Nr 3180415」の赤字の辺りから「パープルアンバー色に弧を描いて反射して光っている箇所」がバルサム切れで「既に剥離している箇所」と指摘できます。

逆に言うなら「この弧を描いて反射している箇所の反対側/多くの領域はまだ剥離が進んでいない箇所」との判定にも及び、ちゃんとまだ接着状態にあると指摘できます。

この「Zeiss Nr 3180415」の赤字の辺りについて「撮影時の反射が写り込んでいるにもかかわらずその反射がいきなり途中で途切れている違和感」を以て「バルサム切れの懸念と眉をひそめる」のが眼力が在る人のチェックの仕方です(笑)

・・写真を見てウ〜ンと唸っている感じですね(笑)

このように光学硝子レンズに反射している、例えばミニスタジオの内部や撮影者の影、或いは手前にある置物などの写り込み・・そのような要素を注意深くチェックして、それらの写り込みなのかどうかを考察するのが「バルサム切れ判定の一つの手法」です。

だとすれば、一つ前の写真で「Zeiss Nr 3180415」の赤字の辺りについて「撮影時の反射が写り込んでいるにもかかわらずその反射がいきなり途切れている」のがまさに違和感として感じられる話に繋がるのです。何故なら、そのように突然頭が切れているような置物など他の写真をチェックしても写っておらず「いきなり途切れている反射」に納得できないワケです (だからバルサム切れの懸念に繋がる)。

もっと言うなら・・単に掲載写真を見ただけではこれらの要素が掴めない場合も多いです。従って当方は必ず掲載写真の「???」と眉をひそめた箇所の写真を「画像加工アプリ」で表示させて「コントラストや明るさなどをイジッて明るく処理すると意外とバレバレになったりする」ワケで(笑)、そのような作業も必要かも知れません (当方は必ず調達時に対象出品個体をそうやってチェックしています)。

↑今度は同じ個体の「後玉側方向からの写真」です。パッと見ると例えば後玉の上側には黒い影が写っています。一方その真下たる手前側にも何かしらの影が写り込んでいるように見えます。

実際に画像加工アプリで処理するともっと明確に見えてきて「上の影は撮影者の頭/髪の毛」であり、一方下の影らしき部分も撮影者がカメラを構えている写り込みなのが判明します。

ではどうしてそのように捉えられるのかと言えば「前述のとおり光学系構成図からして後群側に貼り合わせレンズが存在しないから」と指摘でき、要はバルサム切れと間違った判定を下しかねないその防御策が「光学系の構成を知ることの意義」とご案内できます。

↑同じ個体の別の掲載写真をピックアップしましたが、実は上の写真のリリースマーカー「」の位置から「一つ前の後玉の写真とは向きが90度ズレて撮影されている写真」なのが判明します。

すると「影が写り込んでいる箇所が違う」事からも「バルサム切れではない」事の補強にも至りますね(笑) まぁ〜構成図を知っていればそんな判定の補強も必要ありませんが(笑)

↑さて、今度はまた別の個体の出品写真からピックアップしました。前述の個体とは別の写真です。

・・さぁ〜この個体のバルサム切れは如何でしょうか?(笑)

↑同じ個体写真ですが別に掲載されている写真から引っぱってきました。如何にもバルサム切れの如く手前側に黒い領域があります。

・・この領域はバルサム切れですか?

↑同様別の掲載写真からまた転用してきました。今度は明確に同じ黒い影の領域が確認できます。間違いなく「バルサム切れ」ですね(笑)

また前玉の上側外周附近に「光って反射している線状痕が視認」できますが、この光っている箇所は「現場の窓の写り込み」なのがよ〜く見れば分かりますね(笑)

↑さらに3つ目の個体写真 (海外オークションebayの出品掲載写真) から転載しました。

・・バルサム切れ・・ありますか?(笑)

↑同じ個体の掲載写真ですが、別の写真から引っぱってきました。ご覧のとおり「モロに虹色に反射している」状況なので完璧にバルサム切れです。

しかし一つ前の写真では前玉側方向から撮っていながらこれら領域の影が全く視認できませんでした。しかし前述したように画像加工アプリでコントラストをイジると「だんだん黒っぽい影部分が明確になってくる」のでバルサム切れの懸念が高くなります。

こんな感じで「光学系の構成を知ること」と合わせて掲載写真の画像加工アプリによる処置でさらに詳しく把握に努める努力が必要なのがご理解頂いたでしょうか。

↑今度は同じ旧西ドイツはOberkochenのCARL ZEISS製標準レンズで「凹Ultron 50mm/f1.8 (M42)」の当方が過去にオーバーホール済でヤフオク! 出品した際の写真から転載しました。

↑まさに今も銘玉として扱われ続けている素晴らしいオールドレンズですが、その光学系構成図は上図になります。6群7枚のウルトロン型構成と当方では呼称していますが「貼り合わせレンズは後群側に一つだけ」なのを、同じように 色付けして明示しています。

↑それではさっそく見ていきましょう。実は上の写真はヤフオク! から引っぱってきているのですが、その出品掲載文を読むとバルサム切れの記載がなく「コーティングの劣化」のように記しています。

・・さて何処にバルサム切れが潜んでいますか?(笑)

↑今度は後玉側方向から撮影した掲載写真です。すると今回のこのモデルは「後群側に貼り合わせレンズが一つだけ在る」ので、その貼り合わせレンズの接着面に「黒っぽい影がある」のがより明確に視認できます。

もっと言うならこれら掲載写真の撮影時の角度の変化も影響しますが「それよりも構成図から捉えて後群側の貼り合わせレンズの曲率が表裏の両方で高いのが歴然」なので、前玉側方向から覗いてチェックした時のカタチと、後玉側方向からチェックした時のカタチが何となく違うように見えるのが・・逆に納得できてしまう話なのです。

従って「バルサム切れの判定」にはどうしても光学系構成図の確認が必須前提になるのがご理解頂けると思います。

↑また別の個体写真ですが、今度は海外オークションebayから転載してきました。如何ですか? バルサム切れが視認できていますか?

実は光学系の構成図からしても「前玉から始まって4枚分は単独の光学硝子レンズ」なので、上の写真を画像加工アプリで明るくしてチェックすると「後群側ではなく前群内の経年のクモリ」との判定に落ち着きます (つまりバルサム切れで曇っているのではないと断言できる)。

↑さらに別の個体写真です。バルサム切れが既に写っています・・何処でしょうか?

↑同じ個体写真の掲載写真から後玉側方向の写真をピックアップしてきました。もぅ分かりますョね?(笑) 後玉の下部左側に「弧を描いた反射」がバルサム切れの領域です。

しかし実は2箇所バルサム切れしていて絞り連動ピン側の位置にも薄いバルサム切れが存在するのが一つ前の写真の「僅かに黒っぽい影」で判明します。

その位置関係を把握するには少々高いレベルの確認方法になりますが、「マウント面の絞り連動ピンの位置を割り出す」ことで2つのバルサム切れ領域の存在が確かになります。

それは「プレビューレバーの位置に対する絞り連動ピンの位置」から捉えようと努力すれば、一つ前の前玉側方向から写した写真にもバルサム切れ領域が「ちゃんと2箇所写っていた」事が掴めます。

  ●               

以上、長々と解説しまくりで大変申し訳御座いません。しかしバルサム切れの判定方法の一つが何となく伝わったでしょうか?

特にヤフオク! などの出品ページ記載をチェックしていると、ここまでご案内してきたような「黒っぽい影」或いは「反射」が視認できるのに一切謳っていない当方と同業者たる『転売屋/転売ヤー』が多いですし、その全く反対に「何でもかんでも出品ページにバルサム切れと明記している出品者」が居るのも事実ですから、そのような場合はクレームを回避する目的でバルサム切れと出品者自身がチェックして判定していないにもかかわらず「出品ページ掲載文の転用を続けている出品者」であり、バルサム切れのコトバが含まれていたりします。

従って落札者サイドもある程度のバルサム切れの見分け方を知る努力が必要ではないか・・との考察から、当方は敢えて「光学系内をLED光照射して撮影した写真を掲載しない主義」なのです。ある意味それで下手にオールドレンズの個体を貶める話に繋がっているとも受け取られかねないので、せっかく誠心誠意想いを込めてオーバーホールしたのにそのような結末はあまりにも寂しすぎるとの意です。

当方が見れば光学系の何処の群のどの光学硝子レンズに何が起きているのかはそれらLED光照射の掲載写真で相応に掴めますが、非常に多くの方々が「単に汚れがある/埃が多い/薄く曇っている」と捉えられてしまい、それら瑕疵部分がいったいどのように撮影写真に影響を来すのかの「考察に及んでいない」のが当方には却って問題だと受け取っています (そのオールドレンズ個体が適切に判断されていないから)。

だからこそ当方はLED光照射で徹底的にチェックして「薄いクモリが在るのか無いのか」或いは拭きキズや点キズ/ヘアラインキズなどなど何かしらの瑕疵について逐一チェックして出品ページに明記しているのです (LED光照射写真で安直に明示しない主義なのです)。

残るは当方に対する信用/信頼の問題だけなので、それは残念ながら皆無であり、合わせて当方のオーバーホールに対する技術スキルも低いままだとのご指摘/批判がSNSでも罷り通っているのが現実のリアルだったりしますから、そのように真摯に受け取っています(笑)

超長文につき読破するにもご心痛を伴ったかと大変恐縮ですが、お読み頂きありがとう御座いました。