〓 Carl Zeiss (カールツァイス) Tessar 50mm/f2.8 Oberkochen(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツの
Carl Zeiss製標準レンズ・・・・、
 『Tessar 50mm/f2.8 Oberkochen (M42)』です。


戦前ドイツの1939年時点ではOberkochen (オーバーコッヘン) は単なる片田舎の郡であり、市にさえ昇格していなかった僅か2,000人足らずののどかな町でした。ところが敗戦後アメリカ軍の占領統括地域に編入されたことによりその後の運命が激変します (つまり旧西ドイツに入る)。

ドイツ敗戦時にその直前からかねてから隠匿で (トップシークレットで) 進められていた戦前 ドイツに於ける最高水準を誇っていた光学メーカーCarl Zeiss Jenaの主要人材と設計図面や 機材などの移管が、ベルリン陥落後僅か1カ月余りでこの片田舎のOberkochenに移転してきました。

これはまさに旧ソ連軍がCarl Zeiss Jenaを接収する僅か数日前と言うタイミングなので、ソ連軍によるベルリン陥落とアメリカ軍の侵攻とのタイミングに何かしら背景が存在した事が窺えます。

何故ならソ連軍とアメリカ軍は首都ベルリン市に突入する僅か1週間前の1945年4月25日にDresden (ドレスデン) 北西のトルガウ (エルベ川左岸) で互いにかち合い、双方の部隊が恒久平和を誓ったという「エルベの誓い」と言う事件がありました (右写真はwikiより/互いに肩を組み歩くソ連軍兵士とアメリカ軍兵士)。

確かにアメリカ軍はユダヤ人強制収容所の開放など行いながら進軍していたので、侵攻一辺倒だったソ連軍とはその進度が違いますが、少なくともベルリン侵攻の1週間前にはすぐ付近までアメリカ軍が既に到達していた事の証でもあります。

さらにソ連軍がCarl Zeiss Jenaの残っている人材や産業機械、果ては資材までありとあらゆるモノを接収していったのに対し (残っていたのは工場の建物だけ)、一方のアメリカ軍は極限られた人材と重要なモノだけを密かにOberkochenに移転させています (後の商標権裁判でそれが商標権所在地の大きな根拠となってしまった)。つまりここにアメリカ軍がソ連軍にはCarl Zeiss Jenaの工業技術の核心部分を渡したくない明確な意思があり、事前に工作していたと 推測できる要素があります。

戦後、Oberkochenの人口は8,000人規模まで膨れあがり今現在もCarl Zeissの聖地として崇められ続けています。もちろん今回オーバーホール済で出品する標準レンズTessar 50mm/
f2.8 Oberkochen
(M42)』も、敗戦時の混乱の中を生き延びた
設計図面から紐解いて発展していった正真正銘の本流たるTessarの末裔です (戦前Carl Zeiss Jenaが東西ドイツに分断されたので何を以て本流源流と見なすのかが難しい/従ってロシアンレンズは亜種になる)。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程の解説などはTessar 50mm/f2.8 Oberkochen (M42)のページをご参照下さいませ。

 

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

 

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。ハッキリ言って凹 Ultron 50mm/f1.8 Oberkochen (M42)と全く同じ微調整を各部位で施す必要があり、この安価なTessarでは はたして作業対価分の回収が難しいと言う問題が当方には憑き纏います(笑)

しかし、どうしてもこのモデルを扱いたくなってしまう理由があります。それは例えばこの 当時同一時期の旧東ドイツCarl Zeiss Jena製Tessarと比較した時、それは当然ながら最終型 たる黒色鏡胴モデルが当てはまりますが「ギラギラした少々誇張気味の描写性」に対し、こちら旧西ドイツのOberkochenモデルは「画全体に漂う繊細感を残しつつも鋭いピント面を誇張感無く自然表現させている」部分に、当方は大きな魅力を感じています。

ギラギラでカリカリに鋭くコッテリ系も良いのですが、繊細で自然ででも鋭い写り方に歳を 取ると安心感を覚えるようになります(笑)

↑光学系内の透明度が飛んでもなく高い状態を維持した個体です。もちろんLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑3群4枚のテッサー型構成ですから、光学系後群と言えば貼り合わせレンズです。もちろんLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:15点、目立つ点キズ:10点
後群内:17点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。絞り環操作は無段階式(実絞り)なのでスカスカです(設計上の仕様なのでトルクを与えられません)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑手に入れたいと思って探しても必ずしも市場に流れているワケではない「Oberkochenモデル」です。無段階式 (実絞り) の絞り環操作が好き嫌い別れるところですが、それを差し置いてもその描写性に「確かに別の方向から攻めているテッサー」を感じずには居れません(笑)

そんな事を感じつつもせっかくなので敗戦時のOberkochenに纏わる状況なども調べてロマンに浸ってみました(笑)

↑本来は専用の純正樹脂製バヨネット式前キャップがちゃんと存在するのですが、なかなか出回らず、且つ高価なので「代用樹脂製被せ式前キャップ」を作ってみました (単に差し込むだけです/少々シッカリしたハマり具合)(笑)

↑本来は前キャップに限らずフィルターもフードも何もかもバヨネット式が必要なのですが、それらを一式揃えようとするといつになるか分かりません(笑) そこでちょっと細工してガシッとハメ込むことができるステップアップリングを別に用意しました。一度ハメ込むとそう 簡単には外れません (どうしても外す場合はマイナスドライバーなどを隙間に挟み込まないと外せないくらい本格的にハマります)。

内径⌀52mmのフィルター枠ですから、一般的に市場流通している様々なフィルターにフード或いは前キャップなどが全て使えます。

【このステップアップリングは別途有償】
大変申し訳御座いませんが、ヤフオク! 出品ページには記載できないのでこのブログだけでのご落札者様1名様のみの限定特典になります。
一般的な「50→52mmステップアップリング」そのままでは使いモノにならないので当方にて細工しています。その作業料分として『1,500円』有償頒布とします (ご落札者様のみの特典/一般の方に販売しません)。

もしもご入り用の方はご落札後の一番最初の取引メッセージにてその旨お申し付け下さい ませ。ヤフオク! のご決済時に送料欄に加算してお支払い頂きます。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少ハレーション気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響をさして感じないので相当な光学系のポテンシャルではないでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。