◎ RENOIT (ルノワ) P.C RENOIT ETOILE 35mm/f2.5 zebra《藤田光学工業製》(exakta)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、フランスの
ルノワ製広角レンズ『P.C RENOIT ETOILE 35mm/f2.5 zebra《藤田光学工業製》(exakta)』です。


今回オーバーホール済でヤフオク! 出品するモデルは、ハッキリ言って『珍品』です。
まず、レンズ銘板のブランド銘/モデル銘がそもそも読めませんね(笑)

調べるとフランス語であることが分かります。パッと見で「ルノワール・エトワール」かと思い込んでしまうのですが(笑)、ちょっとスペルが違います。

Ronoir Etoile:ルノワール・エトワール
Renaud:ルノー
Renault:ルノー
Dartois:ダルトワ
Giroux:ジルー
Ramoin:ラモワン
Dutoit:デュトワ

フランス人の姓に使われている中から、今回のレンズ銘板に使われているスペルを調べる為にピックアップしました。すると末尾の「t」や「d/s/x」などを発音しないようです。ルノーという名前などはスペルが違っていても発音は同じようですね(笑)

そこで最後の「Dutoit」がヒントになり「**oit」部分が「ォワ」と言う発音になることを
知りました。
従ってまず発売元のメーカー名は「RENOIT (ルノワ)」になり「ETOILE (エトワール)」はフランス語で「星」を意味しますから、ルノワの星シリーズみたいな感じでしょうか(笑)

ルノワなんて言う光学メーカーもブランド銘も知りませんし、もちろんネット検索しても一切引っ掛かりません。おそらく写真機材を扱う専門商社などのPB (プライベートブランド) として藤田光学工業からOEM輸出されたフランス向け製品ではないかと推測しています。

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冒頭で『珍品』と言ったのは、当方がオーバーホールを始めてからの8年間で初めて目にしたモデルだったからですが、そもそもフランス向けに輸出していたことを知りませんでした。
何しろレトロフォーカス型光学系を開発した本家フランスに、その光学系を模倣したモデルを輸出してしまったというのだから少々驚いたワケです(笑) アメリカや旧西ドイツに輸出されていたことは掴んでいましたが、まさかフランスにも流れていたとは・・。

このモデルの原型は藤田光学工業が1957年に発売した広角レンズ「H.C FUJITA 35mm/f2.5 (exakta/M42/M37/C)」なのですが、
その実装してきた光学系はレトロフォーカス型です。

このレトロフォーカス型光学系を世界で一番最初に開発したのがフランスの老舗光学メーカーP. ANGÈNIEUX PARIS社で、1950年に世界初の広角レンズ「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」を発売しています。もちろん当初より「RETROFOCUS (レトロフォーカス)」は商標権登録されていますが、広角レンズ光学系の代名詞の如く使われ始めた為にAngenieux社が融通を効かせたという逸話があります。

1950年代初頭まで一眼レフ (フィルム) カメラと言えばレンジファインダーカメラが主流でした。また当時は人の目で見た自然な画角として焦点距離40mm〜45mm辺りを標準レンズ域と捉えていた為に、広角レンズ域はそのまま標準レンズの光学系を延伸させた設計で対応できていたようです。

つまり「広角レンズ専用光学系の必要性が無かった」背景があります。それがフォーカルプレーンシャッター式の一眼レフ (フィルム) カメラ登場により、ついに広角レンズ域専用の光学系開発が急務となり (それまで広角レンズが存在しなかったから) 前述のAngenieux社からのレトロフォーカス型光学系登場に至ります (右図はRETROFOCUS TYPE R1の構成図)。

光学系構成の成分で 部分の3群4枚テッサー型を基本として、バックフォーカスを稼ぐ目的で前側に2枚追加しているので ( 部分)、テッサー型となれば相応にピント面の鋭さも期待できるハズです。

よくネット上の案内や評価として、この当時のレトロフォーカス型光学系を採用したオールドレンズを指し「オールドレンズらしい甘い描写」と評価されることが多いですが、レトロフォーカスの名称から来る連想から「レトロ (古めかしい)」的な感覚で受け取ってしまうことがあります。しかし正しくは「RETRO (後退させる) FOCUS (焦点)」なので古めかしい印象を抱く「レトロ調」とは異なりますね(笑)

バックフォーカスを稼ぐ目的で前群内に追加した為に、却って残存収差の影響を大きくする問題が生じます。レトロフォーカス型光学系の欠点は、特に開放時の扱いにくさとも言えるでしょうか (ハレの影響/ピント面の掴みにくさ/コントラスト低下など)。

Angenieux社の広角レンズ35mmは最短撮影距離90cmでしたが、藤田光学工業が発売した原型モデルは最短撮影距離を50cmまで短縮化してきました。長らく5群6枚構成だとばかり思っていましたが、当時の広告を見つけて5群7枚であることを知りました。

そこで今回バラした際にチェックすると第4群の両凹レンズが2枚の平凹レンズ貼り合わせ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) であることが分かりました。すると3群4枚のテッサー型を基本としつつも最短撮影距離を短縮化する設計を採ったのでしょうか (当方は光学知識が皆無なのでよく分かりません)。

右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
収差の影響が大きいので真円のキレイなシャボン玉ボケ〜円形ボケ表出がそもそも苦手です。しかもピント面から外れるに従いそれら収差の影響度合いも大きくなるので開放では非常に分かりにくいピント面です。しかしピント面だけは非常に鋭く出てくるのでレトロフォーカス型光学系が甘い描写だという評価は当てはまらないように考えます (但し画全体の印象としてはマイルド感タップリ)。

二段目
開放では左側2枚の写真のとおり、ピント面から外れた途端に相当な収差の影響を受けて汚くボケていきますから、背景ばかりかそもそもピント面の被写体の選択自体をミスると見るだけでも辛い写真に堕ちたりします(笑) ところが絞ればディストーションも少なく多少黒潰れし易いものの相応なダイナミックレンジを持っていて「空間表現」もとてもリアルです。

その意味でネット上で「クセ玉」と揶揄されていますが、それはフィルムカメラ全盛時代の話で、むしろ今ドキの (フルサイズ) ミラーレス一眼で使った時、この極端な収差の影響は逆に「何が出てくるか分からない愉しさ」に繋がりオモシロイのではないかと印象を改めました

また今回オーバーホールした後の実写 (このページ最後のほう) で、絞り値を絞っていった時に「f4」で急にピシッとピントが決まってきたのに改めてオドロキました。絞り値は開放f2.5の次がf2.8なので、f4以降との描写性の違いにも意外性が強くなり期待感が増します。

つまり今回のオーバーホールで改めて藤田光学工業の意地を垣間見たような気がして、なかなかこのモデルは面白い使い方ができるのではないかと非常に新鮮な気持ちになった次第です (筐体サイズ僅か50mm程度なので意外とコンパクト)。

【OEMモデルのバリエーション】

原型モデル:藤田光学工業製 (1957年発売)
H.C FUJITA 35mm/f2.5 (zebra)

あくまでも、このモデルが原型であり、それ以外のブランドモデルはすべてOEMモデルになります。
出現頻度は海外オークションでも1年に2〜3本レベルですから希少品の一つです。

OEMモデル:アメリカ向け輸出仕様
H.C JUPLEN 35mm/f2.5 (zebra)

海外オークションでも1年に5〜6本レベルで流通しているので、このモデルの中では最も出現数が多いタイプでしょうか。近年はヤフオク! でも出回っています (feet表記のみ)。

OEMモデル:アメリカ向け輸出仕様
P.C UNEEDA 35mm/f2.5 (zebra)

8年間で1本しか出回っていない珍品です。当方が前回入手したのはアメリカ向けの輸出仕様品でした。レンズ銘板を見るとモノコーティングの名称刻印が「P.C」になっており少々異なります (feet表記のみ)。

OEMモデル:欧米向け輸出仕様
P.C ACCURAR 35mm/f2.5 (zebra)

こちらも8年間で1本しか見つけていない超稀少品 (珍品) になります。やはりレンズ銘板のモノコーティング刻印が「P.C」になっています (feet/meter併記)。

今回の扱いが累計10本目に当たりますが、ネット上などでOEMの別なくサンプルを10本見つけて合計20本で製造番号をもとに仕様を考察しました。藤田光学工業製モデルなので、製造番号先頭に必ず「FT」が附随し「No.FTxxxxx」になります。当初シリアル値の先頭2桁が暗号だと考えていましたが、今回20本で調べたところ暗号ではなく本当に生産数が少なかったことが見えてきました。

製造番号は「FT25xxx〜F27xxx」まで続きます。ところが「FT28xxx〜FT34xxx」まで欠番で一気に「FT35xxx」に飛んでそのまま消えています (FT36以降無し)。また同一焦点距離で開放f値「f3.5」モデルに「FT34xxx」が使われていることも確認しています。OEM指向国はアメリカが一番多く、他にPEEROTARやTOWER/ROTAR/TAYLOR/VOTARなどのブランド銘が存在します。

また同一焦点距離の開放f値「f3.5」にはGAMMA TERRAGONのブランド銘/モデル銘が存在しますがf2.5は存在しません。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。全てのOEMモデルで藤田光学工業製原型モデルと全く同じ内部構造設計ですが、不思議なことに製造番号シリアル値を時系列で並べると「絞り羽根の設計相違が混在している」事実を突きとめました。

左写真は過去にオーバーホールした個体からの転載ですが、ご覧のとおり絞り羽根をプレッシングする際「十字の切り込み」を入れて折り曲げることで「キーの代用とした羽根を用意する」方式を採っています。この折り曲げた羽根部分が用意されている穴に刺さることでキー (金属棒) の代用になります。

一方左写真は今回の個体で、羽根ではなく一般的なオールドレンズと同様金属製の突起棒を打ち込む方式を採っています。

このキーが最も耐用年数が有利になり、羽根の場合よりも油染みにも耐性が向上します。

前述のとおり、今回サンプル20本をチェックしたところ製造番号のシリアル値の中でこの絞り羽根の設計が羽根/キー共にグチャグチャに混在していました。それ以外に内部構造が変わる要素が存在しない為、どうして絞り羽根の設計 (製産) が混在しているのか見当がつきません。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

↑12枚の「カーボン仕上げ」の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが、ご覧のとおりレトロフォーカス型光学系なので奥行きのある深い鏡筒です。

↑まずは「絞り環」をセットします。

↑次にその下に「プリセット絞り環」を組み込んでプリセット絞り機構を完成させます。「絞り環/プリセット絞り環」の区別を逆に案内しているサイトがありますが、後ほどオーバーホールが終わった状態でプリセット絞り機構部の使い方を解説します。

↑この状態でひっくり返してヘリコイド (オス側) をセットします。このモデルは基本的に鏡胴は「前部/後部」の二分割式ですが、ヘリコイド (オスメス) 駆動方式の問題から積み上げ式で組み立てていくしか工程手順がありません。

↑真鍮製の「直進キー環」がヘリコイド (オス側) のネジ山に入ります。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑この状態で、やはり真鍮製の「ヘリコイド (メス側)」が入ります。

↑ヘリコイド (メス側) が無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込まれて。距離環を固定します。このモデルには「無限遠位置調整機能」が装備されていないので、距離環は仮止めではなく本締め固定です。

上の解説で「空転ヘリコイド」と案内していますが、実はこのモデルのヘリコイドは距離環側が空転ヘリコイドになっています (上の真鍮材の部分)。「空転ヘリコイド」はその名のとおりクルクルといつまでも回せるヘリコイドですね。

↑こんな感じで「基台」が空転ヘリコイドにセットされます。従って距離環側が「空転ヘリコイド」なので、且つ「無限遠位置調整機能も未装備」となれば、自ずとヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置だけで無限遠位置調整するしか手がないことになります。ところが「空転ヘリコイド」を採用していながら、実は距離環の裏側に「制限壁」を備えているので距離環の駆動域が決まってしまい空転ヘリコイドの意味を成していません。つまりせっかく「空転ヘリコイド」を装備したのに肝心な回転域が制限されてしまうので、空転する意味を成していないことになります。

従ってここで気がつかなければイケナイのですが「空転ヘリコイド」を装備した本当の理由が別にあることになります。それに気がつくか否かがこのモデルのメンテナンスを左右する問題になります。

この後はマウント部を組み付けて光学系前後群をセットし、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告     DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回の個体は絞り羽根に「金属製のキー」が採用されているにも拘わらず、製造番号は初期値の「FT25xxx」ですからよく分かりません。と言うのも、サンプル20本で見てもブランド銘が製造番号の前後で混在しているので (絞り羽根の設計もグチャグチャ)、法則性が全く見出せません。つまり製造番号を単なるシリアル値としてみてしまうと、構造とブランド銘の変遷が全く一致しないと言う不思議な関係です。一例として原型モデル藤田光学工業製「FUJITA銘」の個体はFT25/FT26/FT27/FT35xxx全てに顕在していました (然し絞り羽根は全て羽根タイプしか無い)。

↑光学系内の透明度が驚異的な個体です。残念ながら後玉中心に「擦りキズ」があるのですがそれさえ無ければ「まさしく新品同様品」と言って良いくらいのレベルです。もちろんLED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側も貼り合わせレンズが2群もあるのにLED光照射でも光学硝子レンズが無いのかと勘違いするほどクリアです(笑) 後玉中央に「微細な擦りキズ」があります (写真に影響しないレベル)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。ご覧のとおり後玉中心に「擦りキズ」があります (写真には影響しないレベル)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:6点
後群内:14点、目立つ点キズ:10点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(後玉中心付近に微細な擦りキズ)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・後玉中心に微細な擦りキズありますが写真に影響しないレベルです。
・光学系内には「極微細な気泡」が複数ありますがこの当時は正常品として出荷されていましたので写真にも影響ありません(一部塵/埃に見えます)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚のカーボン仕上げの絞り羽根が閉じる際は「ほぼ真円に円形絞りを維持」しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。ゼブラ柄部分も当方による「光沢研磨」を施したので当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。もちろん「シルバーの梨地仕上げ」もキレイに磨いてあります。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じることもありません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑マウント部や距離環など (の外径サイズ) に比して頭デッカチな少々変わった意匠です。また当時の国産モデルの中にあって「ゼブラ柄」は非常に少ないのでその意味でも目を惹きます。さすがに日本製だけあって「シルバーな梨地仕上げ」のメッキレベルが高く高品質感に貢献していますね。

実は当方がオールドレンズに興味を抱いたきっかけがこのモデルの入手だったので(笑)、このサイトの案内ページにも載っています。

↑自分で整備してロシアンレンズや旧東ドイツ製オールドレンズをヤフオク! 出品している出品者が「プリセット絞り機構部」の誤った解説をしているので、ここで正しくご案内したいと思います。

その出品者の案内を読むと「この時代のオールドレンズは最小絞り値が開放の位置で今の考えの逆になっています」とのことで、いったい何を言っているのか全く分からない話になっています(笑)

自ら解体して整備しているにも拘わらず、そもそも「プリセット絞り機構」の仕組みと原理を理解していないので「プリセット絞り環/絞り環」の区別も曖昧です (これでプロの写真家と自ら謳っているので恐れ入る)。

上の写真で一般的なオールドレンズの「プリセット絞り機構部」の概念を解説していきます。どのオールドレンズにも共通してあてはまる概念なので参考にして下さい (一部モデルは特殊な場合があります)。

まず「プリセット絞り環/絞り環」の区別を逆に把握している人が居るので注意が必要です。
プリセット絞り機構」の構造と設計思想を理解していないばかりか、そもそも「撮影時の動き/手順」が頭の中で整理できていないことが考えられます。

【撮影時のプリセット絞りの手順】
ピント合わせの際に分かりにくいので開放位置にセットする。
希望する絞り値を先に決める。
設定絞り値 (希望絞り値) までプリセット絞り環を回す。
ピント合わせを開放状態のまま行う。
シャッターボタン押し下げ前に設定絞り値まで絞り羽根を閉じる。
シャッターボタンを押し込んで撮影する。

このような動作になるのだと考えますが、間違っているでしょうか?
(あくまでもフィルムカメラ全盛時代の話/今は拡大撮影ができるから環境が違う)

すると上の解説では (このモデルでは) 上部の絞り値が刻印されている環 (リング/輪っか) が「絞り環」になります。またその直下に附随する細い (薄い) 環 (リング/輪っか) のほうが「プリセット絞り環」になります。

鏡胴には基準「」マーカーが刻印されているので (グリーンの矢印)、その位置に「絞り環」の開放f値「f2.5」が合致しているのが前述手順のです。この時、直下の「プリセット絞り環」の基準「|」マーカーも同じ開放位置で合致しています (ブルーの矢印)。

↑まずプリセット絞り用のツマミを押し込んでロック解除します (赤色矢印①)。この「ツマミを押し込んでいる時だけプリセット絞り環操作できる (プリセット絞り環の絞り値を変更できる/動く)」ことを覚えておいてください。

今回は例として設定絞り値を「f5.6」としたので「プリセット絞り環」側をツマミを押し込んだまま回してセットします (ブルーの矢印②)。すると設定絞り値「f5.6」の箇所でカチッと音がして填ります (指を離す)。プリセット絞り値がセットされたので (撮影時に希望する絞り羽根の閉じ具合がセットされたので) ロック解除ツマミの押し込みもやめます (指を離す)。

↑前述で「f5.6」にプリセット絞り値を設定した時「絞り環」側は一切操作していないので (回していないので) 基準「」マーカーに合致しているのは「f2.5」のままです。つまり絞り羽根は設定絞り値まで閉じておらず「開放状態を維持」し続けています。

従ってここで「距離環を回して開放状態のままピント合わせ」します。ピント位置が決まったら撮影に入るので (シャッターボタンを押し込むので)、その前に設定絞り値まで絞り羽根を閉じる必要があります。「絞り環」を回して設定絞り値「f5.6」を基準「」マーカーに合わせると (グリーンの矢印) 絞り羽根は閉じていって「f5.6」にセットされますね (ブルーの矢印③)。

その状態でシャッターボタンを押し込んで撮影すれば設定絞り値「f5.6」の絞り羽根閉じ具合 (つまりボケ具合) で写真が撮れます。

↑プリセット絞り値を元の状態に戻すには、絞り環を回して (ブルーの矢印④) 基準「」マーカーに開放f値「f2.5」を合わせます (グリーンの矢印)。この時絞り環を回したので絞り羽根は開放状態まで完全開放しています。

↑設定絞り値を戻す為に「プリセット絞り環」側を回すので、先にロック解除用ツマミを押し込んで (赤色矢印⑤)、そのまま「プリセット絞り環」を回して基準「|」マーカーを開放f値「f2.5」に合致させます (ブルー矢印⑥)。上の「絞り環」側を回していないので絞り羽根は開放状態を維持したままですね(笑)

つまり「プリセット絞り機構」を装備しているオールドレンズ側の「絞り環/プリセット絞り環」の区別を違えてしまうと意味が分からなくなります (説明できなくなる)。何ら撮影時の動きから逸脱した操作をしておらず、至って自然な動きそのモノですね(笑)

オールドレンズのモデルによっては「プリセット絞り環側をマウント部に引き戻す」タイプの設計もあります (つまりクッション性がある)。今回のモデルのようにツマミを装備していて、そのツマミ操作でプリセット絞り環側のロック解除をさせている場合もあります。必ずプリセット絞り機構を装備していたらマウント側に引き戻すと思い込んでムリにチカラを掛けると壊しかねませんからご注意下さいませ

以上「プリセット絞り機構の操作手順」をご案内しましたが、何も逆の考え方になっておらず自然な動きのまま操作すれば良いだけですからご留意下さいませ。

↑このモデルのマウント面を真横から撮影しましたが、ご覧のとおり後玉がギリギリ位置まで突出しています (実際にマウントの爪部分より出っ張っているワケではない)。距離環が無限遠位置の時 (赤色矢印)、最も後玉が収納している状態 (グリーンの矢印) なので要注意です。

また、今回はマウント部の問題からワザと「exaktaマウント」を選択しました。左写真は以前オーバーホールした「M42マウント」の個体写真から転載していますが、ご覧のとおり「8.3mm」もの厚みがある為に一般的なマウントアダプタ (ピン押しタイプ) に装着すると、最後までネジ込めずに使えません。

その場合に「非ピン押しタイプのマウントアダプタ」を使えば良いのですが、対応するカメラボディ側マウント種別が現状「SONY Eマウント」しか手に入らないので、今回は敢えて問題が起きない「exaktaマウント」を選択しました (装着時に指標値が真上からズレることもありません)。

↑附属の「exakta専用後キャップ」です (金属製)。

↑ちゃんと作られている後キャップなので、ご覧のとおりリリースマーキング「 (赤色矢印)」でハメ込み位置を合わせてキャップを装着できます (グリーンの矢印①)。ハメ込んだらそのままブルーの矢印②の方向に (時計の反対方向に) 回して締め付ければキャップを固定できます。この時、後玉が突き当たって (キャップ内部で) 傷つけてしまう心配も一切無いモノを附属させたのでとても安心です (今回の出品にあわせて探して附属させた後キャップです)。

ネット上では「クセ玉」と揶揄されていますが(笑)、そのまま片付けてしまうか、或いはボケ具合の変化がオモシロイと捉えて愉しむ方向に敢えて使うのか、そこがこのモデルを活かすか否かを決める分かれ目ではないでしょうか。何しろ8年間で初めて目にした (手に入れた)『珍品』です。本家藤田光学工業製「FUJITA」銘を手に入れるのか、いや逆に次はいつ手に入るか分からない本当の意味での「一期一会」的なニュアンスで今回の個体を手に入れるのか・・なかなか悩ましい限りです(笑)

今回の個体は驚異的な透明度を誇る光学系を維持している (後玉中央の擦りキズだけが惜しい) だけに、キッチリと光路長も確保したので以下オーバーホール後の実写のとおり「f4」以降は鋭いピント面であり、ご存分にご活用頂ければと (そのような方の手に渡ることを) 願いつつ、ヤフオク! 出品致します。

光学系のコーティング層が基本的に「プリシアンブル〜」なので、撮られる写真は「暖色系」に収まりますね(笑)

このモデルはピントの山が非常に掴み辛いので、距離環を回すトルク感を敢えて (故意に)「軽め」に仕上げていますが、そもそも内部に塗布したヘリコイドグリースは「粘性重め」を使っているので、これ以上重くもできません。逆に言えば、ちょっと内部構成パーツの経年劣化要素たる「酸化/腐食/錆び」を取り除きすぎたかなと言うくらいの仕上がりです(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑当レンズの最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になっています。そろそろ「回折現象」の影響が出始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。