◎ PETRI CAMERA CO., INC. (ペトリカメラ) C.C Auto Petri 55mm/f2 silver(petri)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、ペトリカメラ製
標準レンズ『C.C Auto Petri 55mm/f2 silver (petri)』です。


このモデルを一番最初に見た時に「美しいなぁ〜」と感じたことを覚えています。何処か昭和臭さ漂うデザインながら(笑)、ローレット (滑り止め) の光沢部分や筐体の梨地仕上げシルバー或いはフィルター枠やマウント部の黒色など、鏡胴の配色バランスに感心しました。

この当時のPetri製オールドレンズは、後の時代に再登場するM42マウントを除いて全てペトリ独自の「スピゴットマウント (ブリーチロック式)」です。従ってPetriのフィルムカメラでしか使うことができません。

しかし海外オークションebayで左写真のマウントアダプタを各種
作って売っている人が居ます。
(SONY E, EOS R, Nikon Z, FUJI GFX/FX, L39, m4/3用)

当方も1個SONY Eマウントアダプタを所有していますが、精度がシッカリ出ているものの造り自体はそれなりと言う感じです。

そこで常々、自分でも何か作れないものかと考えていたのですが、今回出品する個体をミスッて入手してしまったので、いよいよ真剣に考え始めたというのが経緯です(笑)
(出品商品として附属の自作マウントアダプタ解説は当ページの最後のほうにあります)

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「栗林写真工業」は1907年に創業の写真用品メーカー「栗林製作所」から始まり「栗林写真機械製作所→栗林写真工業」そして最後の社名であった「ペトリカメラ」と変遷しています。
(左写真は1959年当時の栗林写真工業梅島工場の様子)
1926年に自社初のフィルムカメラ「Speed Flex (木製)」を開発し1939年にメッキ工場開設、1958年にはニューヨーク事業所を開設
1962年「ペトリカメラ」に社名変更しました (1965年時点の輸出
比率は80%越え)。

1959年に栗林製作所から発売された自社初の一眼レフカメラ「Petri PENTA」はマウントに「M42マウント」を採用しましたが、発売した翌年の1960年にはマウントをスピゴット式バヨネットマウント (Petriマウント) にいきなり変更してしまいました。

今回扱うモデルは1962年頃に発売されたようですが確かなことは不明です。当時のフィルムカメラ取扱説明書をチェックしても、そもそも今回のモデルが「廉価版」の格付だったようなので、掲載しているモデルは開放f値「f1.8」或いは「f1.4」ばかりです。

先日オーバーホール/修理で扱ったモデル「Petri Automatic 55mm/f2 (petri)」も同系列なのですが、このモデルはアメリカ向けの輸出品だったので個体数自体が少なめです。今回出品する個体はおそらく国内流通品ではないかと推測していますが、絞り環の回転方向が変わった後のタイプと言えます。光学系は開放f値「f1.8」モデルの硝子レンズをそのまま転用し、絞りユニットのメクラ環 (リング/輪っか) を「f2」になるよう内径を狭めてしまった設計です (従って光学硝子レンズはf1.8の仕様でも写真上はf2以降でしか絞り値が変化しない)。

今回のオーバーホールでは、それをそのまま出品してもつまらないのでペトリマウントのままヘリコイド付でデメリットたる最短撮影距離60cmを短縮化して使えるマウントアダプタを用意しようと決意した次第です。

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
エッジ部分が滲み始めるので真円で繊細なシャボン玉ボケの表出が苦手なようです。円形ボケへと溶け込んでいく様をピックアップしてみました。

二段目
背景ボケは時に収差の影響を大きく受けて乱れた滲み方をしていきます。発色性が独特で非常に彩度の高い色付きをするので、特に原色に対する反応が誇張的でしょうか。

光学系は1959年に発売された「C.C. Petri Orikkor 50mm/f2 (M42)」が独特な4群7枚の変形ダブルガウス型構成でしたが、翌年に発売されたPetriマウントの同型品では4群6枚の典型的なダブルガウス型光学系に設計変更しています。

今回のモデルも同様4群6枚のダブルガウス型構成のままになり、以降4群7枚に戻ることはありませんでした。右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測してほぼ正確にトレースした構成図です (各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は先日の輸出用モデルとほぼ同一ですが、冒頭解説のとおり絞りユニットだけは強制的に入射光の開放f値が「f2」になるよう設計変更しています。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。鏡筒最深部に絞りユニットがセットされますが、その箇所は「少々粗めな凹凸の梨地仕上げメッキ加工」が施され、当初1959年に登場したOrikkorモデルから改善されていることが分かります (絞り羽根の油染み対策/当初は凹凸の梨地仕上げを施していなかった)。

↑もともと当初のOrikkor 50mm/f2では10枚の絞り羽根を装備していましたが、6枚に減じられています。しぼ゛りばねを組み付けて絞りユニットを完成させたところです。

先日の輸出向け個体も同じ現象だったのですが、完全開放状態から絞り羽根を少しずつ閉じていくと、各絞り羽根の突出量が均一ではなく偏りがありました。左写真は完全解放時の絞りユニットの状態を前玉側方向から撮影しています (光学系はみだ未実装です)。

ここで少しずつ絞り羽根を閉じ始めると赤色矢印のように均一に各絞り羽根が出てきません。先日の輸出個体に限って絞り羽根に打ち込まれている「キー」が一部変形していたのかと推測しましたが、これはどうもペトリカメラの設計の問題なのかも知れません (同じように均一ではない個体が2本続けて出てくるものかどうか)。今後のチェック項目になりますね。

↑鏡筒をヘリコイド (オス側) に組み込んでからひっくり返して制御系の解説をしています。

右上に「カム」が配置され、絞りユニット内部の「開閉環」を掴んでいます。このカムが左右に首振りすることで「開閉環」が移動する (回転する) ので絞り羽根が閉じたり開いたりします。

鏡筒には真鍮製の「制御環」がセットされており、そこに用意された「なだらかなカーブ」の勾配部分にカムが突き当たることで、具体的な絞り羽根の開閉角度が決まる原理です (実際にはカムは制御環の下に隠れているので突き当たるキーしか見えていない)。

先日の輸出向け個体は絞り環操作時に正転/反転時で絞り環の感触が大きく違っていましたが、今回の個体は左写真のように「制御環にバリが残っていない」ので問題ありません。

このモデルは絞り環の回転方向が逆向きなので (既に他のモデル含め回転方向の仕様が変わっている)、先日の個体とは「なだらかなカーブ」の向きが逆です (赤色矢印)。

たかが小さなメッキが施された「カム」ですが、そのメッキが剥がれてしまったことで「なだらかなカーブ」に突き当たる際にガリガリと違和感を抱くようになってしまったワケです (先日の個体の話)。

↑完成した鏡筒を真鍮製のヘリコイド (オス側) にセットしたところです。構造上、後からセットすることができません。また、鏡筒の位置調整で絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/入射光量) を微調整できていた設計が変更されてしまい、鏡筒の位置が固定になっています。

従ってこのモデルは絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/入射光量) 微調整機能が省かれており、全く変更できません。

ヘリコイド (オス側) に附随する「直進キーガイド」を直進キーが行ったり来たりスライドすることで鏡筒が繰り出されたり収納する原理ですね (赤色矢印)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑こちらは距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。均等配置で3箇所に「ベアリング用の穴」が用意されており (赤色矢印)、このベアリングを代用して絞り環を保持する設計が踏襲されています。

ところがさらに2個分の「ベアリング用の穴」が両サイドに別に備わっており (グリーンの矢印)、この2個のベアリングで自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) の切り替え操作がクリック感を伴い実現しています。

↑アルミ合金材のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらに完成しているヘリコイド (オス側/鏡筒含む) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で15箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

上の解説ではグリーンのラインでヘリコイド (オスメス) の肉厚の違いを示しています。これは全く以て栗林写真工業の設計時の配慮の無さが問題していると言わざるを得ませんが、非常に薄いアルミ材削り出しのヘリコイド (メス側) に設計した為に、経年劣化でヘリコイドグリースに粘性が帯びてくると、距離環を回した時のチカラがそのままアルミ合金材の「たわみ/しなり」に繋がり、結果的に経年使用でヘリコイド (メス側) のネジ山が削れてしまうので「トルクムラ」の原因に至ります。

実際今回の個体も調達時に「トルクが重い」印象でした。従ってPetri製オールドレンズはヘリコイドグリースを入れ替えないまま使い続けると、次第に (グリースの粘性が増して) トルクムラ要因が増大していくことになります。何故なら、距離環がネジで締め付け固定されるのがアルミ合金材のヘリコイド (メス側) だからです (距離環用のネジ穴が3箇所用意されている/赤色矢印)。

残念ながら、ここまで薄い肉厚のアルミ材削り出しヘリコイド (メス側) が経年で変形してしまった (しなり/たわみ) 場合、真円状態まで戻す手がありません。つまり栗林写真工業製オールドレンズに於ける「トルクムラ」は改善できないことの方が多いと考えるべきではないでしょうか (その為にもトルク感に違和感を覚えたら早めにメンテナンスするのが望ましい/製品寿命の延命に繋がる)。

↑ヘリコイド (オスメス) をセットしたところでひっくり返して絞り環やマウント部を組み込んでいきます。

↑距離環を先に仮止めしてしまいます。

↑ベアリング (3個) を組み込んでから絞り環をセットします。

↑さらにベアリング (2個) をセットしてからA/Mスイッチ環を組み込んで鏡筒と連係させます (絞り羽根の切り替え動作との連係)。

↑マウント部内部の写真ですが、既に構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせています。経年の揮発油成分で相当液化していました (一部は絞りユニットまで進入してしまい絞り羽根に酷い油染みが発生していた)。

↑外していた構成パーツも個別に「磨き研磨」してからセットします。たった1つでけ「捻りバネ」が附随しますが、残念ながら既にだいぶ弱っており「開閉アーム」を戻すチカラが低減しています。単純な機構部なのですが、このマウント部内部に経年の揮発油成分が侵入し酸化/腐食/錆びなどを促すと、途端に「捻りバネが弱くなる」ので要注意です。

何故なら、鏡筒の絞りユニットにスプリングが附随しており「常に絞り羽根を開こうとするとするチカラ」が及びます。一方このマウント部の「捻りバネ」で「絞り羽根を閉じようとするチカラ」が及ぶので、このスプリングと捻りバネの2つのチカラのバランスの中で絞り羽根が適切な開閉動作する原理だからです。

例えば、仮に全く同一のスプリングが両方とも使われているなら、経年劣化で弱ってしまった側のスプリングだけを調整すれば良いですが、このように種別の異なるスプリングとバネが介在した時、その「チカラの伝達経路」を勘案しながら2箇所のチカラのバランスをイジるのは相当ハードな作業です。

このような話は様々なオールドレンズにも共通する与件なので、マウント部内部の状況は意外と重要だったりします (結果的に絞り羽根開閉異常に結びつくから)。

↑完成したマウント部を組み付けて、この後は光学系前後群をセットしてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

修理広告     DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑個人的には黒色鏡胴モデルよりも、こちらの美しい梨地仕上げシルバーモデルのほうが好みです。筐体外装の構成パーツは、光沢のある焼付塗装と梨地仕上げを上手く配置しているので、レンズ銘板の光沢感も含め例え「廉価版モデル」なのだとしても当方は好きですね。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。カビもほぼ繁殖していなかったのでコーティング層の剥がれ自体が少なめです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側にも貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) が配置されていますが、もちろんバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) の進行も皆無でLED光照射でも極薄いクモリすら一切ありません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:8点、目立つ点キズ:5点
後群内:11点、目立つ点キズ:8点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じていく際は「ほぼ歪なカタチにならず」に閉じていきます。しかし、前述のようにそもそも絞り羽根の現れ方が均一ではないので改善ができません (調整箇所が設計として一切用意されていない)。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感がほとんど感じられない大変キレイな状態を維持した個体です。当方による筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。もちろん梨地仕上げのシルバーもローレット (滑り止め) のクロームメッキ部分も「光沢研磨」をしたので当時のような輝きを取り戻しています。筐体外装は「エイジング処理済」なので、すぐに酸化/腐食/錆びなどが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽め」を塗布し距離環や絞り環の操作性はとてもシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・ヘリコイド (メス側) 設計上の仕様から距離環を急いで回そうとしたり強く保持するとトルクがさらに重くなります(クレーム対象としません)。
またヘリコイドに僅かな遊びがあるよあなので距離環〜フィルター枠にかけて僅かなガタつきがあります。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) の切り替え操作も確実で軽やかであり、もちろん絞り羽根の開閉動作も小気味良く瞬時に駆動して適正です。絞り環のクリック感もシッカリした印象で確実にセットできます。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑今回の個体で唯一残念だったのが上の解説です。フィルター枠〜距離環までの部位 (グリーンの矢印) が直進方向で極僅かにガタつきます (ブルー矢印凡そ0.5mmくらい上下動する)。従ってこのオールドレンズを持つ時に何となくガチャガチャした印象を感じると思いますが、2回再びバラして各部位の動きをチェックし、いったい何処がガタついているのか調べました。

すると、基台側〜マウント部までの部位は確実にネジ止め固定されており一切ガタつきが無く、ヘリコイド (メス側) からフィルター枠までがガタついています。

フィルター枠は鏡筒にネジ込まれていますし、鏡筒はヘリコイド (オス側) の内側にセットされています。つまりヘリコイド (オスメス) の部分でガタつきが発生している為に、ヘリコイド (メス側) に距離環が固定されている関係から筐体外装で捉えると上の写真グリーンの矢印の領域でガタつきが生じているように見えます。

ヘリコイドのネジ山部分で極僅かなマチが (経年摩耗なのか?) 生じてしまったようなので改善できません。ご落札頂く方はご留意下さいませ (告知しているのでクレーム対象としません)。

取り敢えず実写確認して撮影に影響が出るかチェックしましたが、特に違和感も感じず写真も問題ありません (色ズレなどにも至っていない)。

一応、以下の実写確認時は、ワザとガタつきを意識せずに普通に撮影して「違和感」を感じるか否かチェックしました (違和感には至っていない/言われなければ分からない)。

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。そろそろ「回折現象」が手羽占めているでしょうか。

回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。

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長くなりますが、ここから附属している自作マウントアダプタについて解説していきます。

↑ペトリのフィルムカメラからスピゴットマウント部 (ブリーチロック式) を取り外して転用しています。それにフィルターを介在させてM42マウントへと変換しています。

従って、ヘリコイド付マウントアダプタは「M42 → M42ヘリコイド付マウントアダプタ」なので、例えばこのマウントアダプタ部分だけを外して、他のM42マウントのオールドレンズにお使い頂くともできるよう敢えて固定化/接着/ネジ止めしていません

ヘリコイド付マウントアダプタの最後は「M42 → SONY Eマウント変換リング」ですので他のリングに付け替えることも可能です。できるだけ、お使い頂く方の将来的な足しになるよう、すべて固定せずに組み上げました。

そうは言っても、それぞれの部位が簡単に回ってしまっては使い辛くて仕方ありません(笑) ちゃんと「硬締め」でネジ込んであるので、ペトリマウントのオールドレンズを操作していて勝手に外れていくことはありません。

なお、当方は「エポキシ系接着剤」を全く信用していないので (以前エポキシ系接着剤で接着されている改造レンズが落下してケガしたので)、今回の自作マウントアダプタには一切接着剤系の類を塗っていません。特にペトリマウント部とフィルターとの接続部分にエポキシ系接着剤を使っている場合が多いですが、エポキシ系接着剤は接着面の垂直方向には強力ですがせん断のチカラには耐えられない為に剥がれます。それを考えこの自作マウントアダプタは締め付けネジで締め付け固定させています。

使ったヘリコイド付マウントアダプタは「M42 → M42」ですが「12mm19mm」の繰り出し量を持つタイプです。上の写真は最も収納状態である「12mm」を撮影しました。ペトリマウントのオールドレンズを装着した時に、ちゃんと無限遠を合焦できるよう「ヘリコイドのローレット/滑り止め」部分の該当箇所に赤色マーキングを塗りました。

このマーキングの上下が合致した時が無限遠位置になります。上の写真ではヘリコイドが収納状態 (12mm) なのでオーバーインフ状態にあります (距離環距離指標値で2目盛ほどズレています)。

↑ヘリコイドをブルーの矢印①の方向に回すと繰り出し (グリーンの矢印②) 始めます。赤色矢印のマーキング上下が合致した位置でヘリコイドを停止すると「ちょうど無限遠位置」になります。

この時装着しているオールドレンズの距離環を無限遠位置「∞」にセットしていれば、ちゃんと無限遠合焦しているハズです。この状態のままオールドレンズを操作して距離環を回すと、例えば最短撮影距離の位置で突き当て停止した時、それはその装着しているオールドレンズの「仕様上の最短撮影距離位置」と言うことになりますね。

今回の出品個体で言えば、最短撮影距離60cmの位置と言うことになります。

↑さらにヘリコイドを回していくと (ブルーの矢印①) さらに繰り出し量が増えて最大で (ヘリコイドが停止した時点で) 表記のとおり「19mm」の繰り出し量に至ります (グリーンの矢印②)。この時、ヘリコイドの赤色マーキングはさらに先の位置まで進んでいます。

例えば、今回の出品モデルは最短撮影距離60cmですが、上の写真の状態までヘリコイドを繰り出した時、被写体とカメラ側撮像素子面との実距離は「実測値で約41cm」でしたから、凡そ20cm程の短縮化 (近接撮影) と言えます (つまり最短撮影距離40cm近くまで寄れる)。

この時、もしも無限遠位置に戻すなら・・、

(1) 先にマウントアダプタのヘリコイドの赤色マーキング上下を合致させる。
(2) オールドレンズ側距離環の距離指標値を無限遠位置「」に合わせる。

(1)(2)どちらを先にやって頂いても別に構いません(笑) 互いの操作時に不用意に動かないようヘリコイド付マウントアダプタも選択したので、操作性としては少々重めのトルク感のヘリコイド付マウントアダプタです。

また今回出品のモデルはピント合わせ時にピントの山が掴みにくいタイプなので、距離環を回すトルクは敢えて「軽め」に調整していますから、結果互いに操作時不用意に動かないと言うことになります。

↑ペトリマウントのスピゴット部分には赤色矢印の「リリース穴」が備わっています。またブリーチロック環 (ギザギザのローレット/滑り止めの環) にも赤色マーキングが印刷されているので、上の写真の状態 (位置を合わせた状態) にしてペトリマウントのオールドレンズを装着します。

今回の出品モデルで言えば、マウント部にある1本飛び出ている「リリースキー (赤色矢印)」をペトリマウントの「リリース穴」に刺すことになりますね。

実際は、単にオールドレンズを置けばそのままリリースキーが入るように調整してあるので特に面倒なことはありません。

なお、グリーンの矢印の位置からさらに左側方向には回らないよう (つまりペトリ製フィルムカメラと同じように) 駆動域を制限させているので不用意にブリーチロック環自体が外れることもありません。

↑同様、ペトリ製フィルムカメラと同じように上の写真グリーンの矢印②の位置に「ブリーチロック環を回しても (ブルーの矢印①)」そこでカツンと突き当たって停止します (つまりブリーチロック環は90度の範囲内しか回りません)。それがオリジナル (純正) 状態です。

↑オールドレンズを装着する時は、上の写真のようにただ置くだけで勝手に「リリースキー」が穴に入るので、そのままブリーチロック環を締めれば良いだけです。

↑オールドレンズを置いた後にブリーチロック環を回すと (ブルーの矢印①) オールドレンズのマウントの爪が締め付け固定されてグリーンの矢印②の位置で停止します。オールドレンズを外す際は逆の操作をすれば良いだけです。もちろん、カメラボディ側に装着した時、オールドレンズの基準「」マーカーもピタリと真上に来ます (SONY E マウントカメラの場合)。

↑もちろんペトリ製オールドレンズのマウント面から飛び出ている「絞り連動レバー」も内部でちゃんと突き当たらないようスペース確保していますから壊れる心配もありません。従って、オールドレンズをこのマウントアダプタ装着時にA/M切り替えスイッチの状態を気にする必要がありません (マウント面の絞り連動レバーが当たらないので)。装着してから「手動 (M)」にスイッチを切り替えて絞り環操作すればOKです。

↑こんな感じで各部位 (グリーンのライン) でネジ込んでいるだけなので (少々キツく硬締めしている) 外すことが可能です。

 petri → M42なのでペトリマウントをM42マウントに変換している
M42 → M42ヘリコイド付マウントアダプタ
M42 → SONY E変換リング

なお、ペトリマウント部はフィルター枠を代用していますが、エポキシ系接着剤などで接着したのではなく内部でちゃんと「ネジ止め」していますから剥がれる心配はありません。今回のヤフオク! 出品では社外品前キャップとSONY E マウント用の樹脂製後キャップを附属させています。この自作マウントアダプタ部分だけでパーツ代5,000円ほどかかっています。

今回出品後に自作マウントアダプタだけの販売についてお問い合わせを4件
頂きましたが、マウントアダプタ単品での提供は今のところ考えていません。申し訳御座いません。
また、この附属したヘリコイド付マウントアダプタは様々なPetri製オールドレンズを装着して無限遠合焦させることが可能です (つまりPetriマウント用として汎用的に使える)。

↑こちらの写真は実際にヘリコイド付マウントアダプタを最大値「19mm」まで繰り出して、最短撮影距離40cm付近で撮影した開放実写です (拡大撮影ではなく近寄ったので大きく写っている)。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

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現在ヤフオク! 出品中ですが、ご質問頂きましたのでこのページで解説させて頂きます。
(本当に長くて申し訳御座いません)

お問い合わせは、現在の出品「SONY Eマウント用」をキヤノンのEOS R、或いはEOS M用として使う方法があるのかどうかと言う内容です。

いろいろ調べたところ以下が考えられます。

↑上の写真は、現在出品中の「SONY Eマウント用」として自作した「petri → SONY Eヘリコイド付マウントアダプタ」をバラして撮影しました。全部で3つの部位に分かれます。

petri → M42 変換マウントアダプタ=フランジ長:約10.1mm
M42 → M42 ヘリコイド付マウントアダプタ=フランジ長:12mm〜19mm
M42 → SONY E 変換リング=フランジ長:1mm
(後キャップが装着されている写真です)
合計=フランジ長:23.1mm〜30.1mm

すると、Petriマウントの仕様上のフランジバックは「43.5mm」なので、例えばPetriマウントをM42に変換しても、そのままではM42マウントのフランジバック「45.46mm (新)」の為、Petriマウントのほうが短い (▲1.96mm) ことからアンダーインフになってしまい無限遠合焦しません。従って、超過してしまったフランジバック分 (1.96mm分) をPetri製オールドレンズ側のヘリコイド (ネジ込み位置) で調整するしか手がありません。それではオールラウンドでPetri製オールドレンズを使えません。

つまりPetriマウントの仕様上のフランジバック「43.5mm」に収まるように考えなければイケマセン。

今回のヤフオク! 出品用はカメラボディ側がSONY Eマウントなので、フランジバックは18mmです。するとキヤノンのEOS Mも同じフランジバック18mmなので、簡単に考えれば上の写真「 M42 → SONY E 変換リング」だけを「M42 → EOS M 変換リング (厚さ1mm)」に替えてしまえば、そのまま使うことができます。

しかし残念ながら市販品が1個しかありません (左写真をクリックすると海外オークションebayの出品者ページに別ページで飛びます)。

そこで現実性が低いので、キヤノンのボデイEOS Rへの装着例として再考してみました。

左写真は、日本国内で入手可能な代替パーツとしていろいろ探してみました。

M42 → M42 ヘリコイド付マウントアダプタ
フランジ長:10mm〜13.5mm
M42 → EOS R 変換リング
フランジ長:1mm (?)

それぞれリンクを張ったので、クリックするとアマゾンのページを別ページで表示します。

つまり今回ヤフオク! 出品のヘリコイド付マウントアダプタのうち「 petri → M42 変換マウントアダプタ」だけを使ってを入れ替えてしまうワケです。

するとキヤノンのカメラボディEOS Rはフランジバック20mmなので、以下計算になります。

Petri フランジバック:43.5mm マイナス EOS R フランジバック:20mm
=マウントアダプタのフランジ長:23.5mm

・・ですね。ここまでの解説でヘリコイド付マウントアダプタなどを入れ替えた時、フランジ長の合計は「21.1mm」なので、無限遠合焦するということになります。

実際は、入れ替えて装着した時フランジ長「+2.4mm」分がオーバーインフ状態なので、今回のヤフオク! 出品のヘリコイド付マウントアダプタ同様、マウントアダプタのヘリコイド部を収納状態にした時 (つまり10mm) がオーバーインフで、Petri製オールドレンズの距離環距離指標値3〜4目盛分手前で無限遠合焦すると推測できます。

同じように入れ替えたヘリコイド付マウントアダプタ () の無限遠合焦位置にマーキングを塗れば、使い易いのではないでしょうか。

なお、上の写真「 petri → M42 変換マウントアダプタ」のブルーの矢印は、この部分だけが「締め付けネジで締め付け固定させている」のを現し、解体できないようにしてある (エポキシ系接着剤での接着ではない) ことを説明しています。この部位を解体すると組み直してもフランジ長がビミョ〜に狂いますし、下手すれば光軸ズレに至りますからバラさないほうが無難です (簡易検査具で検査/調整済)。

このように長くなってしまい、本当に申し訳御座いません。