SCHNEIDER – KREUZNACH C – CURTAGON 35mm/f2.8(M42)写真

オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

CCT3528(0318)11ここからは解体したパーツを使い、実際に組み立てていく工程を掲載しています。

まずは絞りユニットや光学系 (前群後群すべて) を収納する鏡筒(ヘリコイド:オス側)です。

このモデルの場合、とてもコンパクトな筐体なので、この鏡筒自体がすべてのパーツの基台を担っています。

CCT3528(0318)12実際に絞り羽根を組み付けますが、上の写真のように絞り羽根を組み付けるための穴 (絞り羽根に用意されている金属製の突起:キー) を差し込む位置決め穴が存在しません (用意されている穴は銅板を固定するための穴で絞り羽根用ではありません)。このモデルでは何と「銅板」を使ったベースと固定環を使って絞り羽根を組み付ける仕組みを採っています。なかなか珍しい方式です。

さらに意外な工夫が成されていました。絞り羽根は全部で「10枚」装備していますが、絞り羽根の位置決めベース環にはキー用の穴は半分の「5個」しか用意されていないのです。逆にベース環に組み付けた絞り羽根に被せる「絞り羽根固定環」には「10個」のキー用の「穴」が用意されています。下の写真はその「工夫」を解説するために絞り羽根を写しました。

CCT3528(0318)13絞り羽根には「2種類」の形状が用意されており「キー」の形状や仕様もすべて異なっています。上の写真のように1枚の絞り羽根には「キー」が「1本」しか用意されておらず、片側は「穴」のみです。もう一方には「2種類」の「キー」がありますが「長さ」が異なります。

実際には「短いほうのキーキー」がもう1枚の絞り羽根の「穴」に入り「2枚の絞り羽根を連結させる」考え方を採っています。このような仕組みの絞り羽根制御方法は初めてです。結果として絞り羽根を装着した「ベース環」が絞り環の操作で丸ごと「回る」と同時に、各絞り羽根のセットは「1本のキー」を起点にして2枚セットの絞り羽根のそれぞれが別の動き方をします。従って当然ながら10枚の絞り羽根を使って「円形状」に開口部を作るとなれば、この2枚の絞り羽根形状は自ずと同一にはなりません。上の写真のように別々の形状をしています。

この2枚セットの絞り羽根が実際にどのように組みつけられるのか「セット状態」にして写しました。

CCT3528(0318)14一見すると「長いほうのキー」がもう一枚の絞り羽根の「穴」に入るべきと勘違いしてしまいますが、実際には絞り羽根が組みつけられる銅板のベース環に「高低差」が極僅かにあるため、キーの長さも異なっている・・このような「原理」に気がつかなければ正しい組み上げができないワケで、ちょっとした「トラップ」のようなものですね(笑) 解体する際に注意深く観察しながら、同時に「原理」を「納得」しながら作業しないとダメです。一番怖いのは「自分の思い込み」によって、後々に正しく組み上げられずにムダな時間を浪費していくことです。オールドレンズのオーバーホール・・なかなか奧が深いですねぇ。製造メーカーが「サービス仕様書」を見て確認しながらメンテナンスしていくのとはワケが違います(笑)

実際に10枚の絞り羽根を組み付けて銅板パーツで固定して絞りユニットを完成させます。

CCT3528(0318)15最初解体した時は、この銅板パーツ (固定環) の固定用穴が「5個」あるので一瞬勘違いしましたが、よくよく観察すると穴の位置が偏っており「原理」に気がつきました(笑) 上の写真で丁度「9時」の方向に移っている「出っ張り」には「円状の突起」が用意されており、この銅板パーツ (固定環) 自体は絞り羽根の固定と同時に「絞り環」操作時の「クリック」動作も兼ねています。相当に考え尽くされた構造をしています。

次の写真は、鏡筒に絞り環をセットした状態です。絞り環のセット位置はもちろんのこと、絞り羽根の開閉幅調整機能すら用意されていません。

CCT3528(0318)16距離環(ヘリコイド:メス側)を無限遠域のアタリを付けた正しいポジションにてネジ込みます。これに光学系を組み付けたら完成間近です。意外とあっけない作業です。最後に無限遠の確認と光軸確認を行います。

CCT3528(0318)17光学系前群を組み上げてセットします。光学系内もとても良い状態を維持していますが、この個体は既に一度メンテナンスされた痕跡があり、その際に中玉を外せずに苦心した跡が残っています。残念ながら中玉にその際の「キズ」が「大きいキズ3点」に「小さいキズ3点」の合計6点あります。「小さいキズ」は極微細なので視認しにくいと思いますが「大きいキズ」はLED光照射すれば確認できるでしょうか。下の写真では写せませんでした。

CCT3528(0318)18次の写真は光学系後群です。後群は状態が良いですね。中玉の「大きいキズ」の一つが写っています。このキズが全部で3点中玉にあります。中玉を締め付けている「固定環」の「カニ目穴」がとても小さい穴なので、恐らく「カニ目レンチ」を所有していないユーザーの手によって、ピンセットか何かでムリに回そうとして工具が外れてしまい、レンズに当たったキズだと思われます。その意味では「一般ユーザー」が解体した可能性がありますね。3点ありますから「3回挑戦」して諦めたのでしょう。この個体のそんな「背景」もオーバーホールでは「バレ」ますねぇ(笑)

このようにオールドレンズには、過去に誰かが既にメンテナンスしている可能性があります。プロの方によってキッチリとメンテナンスされていれば良いのですが、案外今回のように一般ユーザーの手による場合が多いです。或いはカメラ関係の販売に携わるオーナーだとしても、はたしてどの程度キッチリ整備して頂けるのか、なかなか疑問です。

・・にも拘わらずオークションなどではノークレーム・ノーリターンにて高額で落札されて行きます。その辺の「価値観」がいまだに当方にはまだ理解できておりませんねぇ(笑) 修行不足です・・反省あるのみ。

CCT3528(0318)19ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。大変コンパクトな筐体で重量僅か「97グラム」です。最低限の機能しか装備されておらず監視カメラ用レンズであるコトが分かります。しかし監視カメラのレンズですから、逆に「収差」の補正に関してはキッチリ成されており、とても端正な描写をします。それ故マニアの間では今でも人気が衰えないのでしょう。特に「パンケーキレンズ」などが好きな方には定番の広角レンズかも知れません。

CCT3528(0318)1中玉のキズも前玉側からだと見えないほどに極微細です。凡そ光学系内の状態はよい状態を維持しています。

CCT3528(0318)2独特な工夫を施した絞り羽根も、とてもキレイになり確実に駆動しています。

CCT3528(0318)3ここからは鏡胴の写真です。前玉側絞り環の縁やマウント部の縁に極微細な当てキズが複数ありますが、概ねキレイな状態を維持しているので、当方の状態表示では「超美品」として扱っています。

CCT3528(0318)4 CCT3528(0318)5 CCT3528(0318)6 CCT3528(0318)7距離環や絞り環の動きは大変滑らかになりました。ピント確認も楽に操作できます。距離環を回した際は1箇所ヘリコイドの「ゴリッ」と感触を手に感じる箇所がありますが、支障はありません。

CCT3528(0318)8光学系後群はとてもキレイな状態です。

CCT3528(0318)9当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。歪曲がとても少ないですね。エッジも細いのでピント性能も優秀です。デジカメ一眼でマウントアダプタ経由装着されるなら、是非とも「ヘリコイド機能付」のマウントアダプタをご使用下さいませ。そうすれば最短撮影距離もさらに短縮化され近接撮影も可能になります (もちろん無限遠も合焦します)。

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