◎ Schneider – Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) Xenon 50mm/f2 ▽ silver《後期型》(exakta)

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Xenon銘を冠した標準レンズはたくさんありますが今回オーバーホール済で出品するのは、その描写性が好きでず〜ッと探していた開放F値「f2.0」の戦後すぐに登場したモデルです。Retinaマウントの個体ならばよく見かけるのですが数ヶ月に一度くらいでやっと発見する個体はマウントが得体の知れないモノばかり・・今回2年掛かりでようやく「exakta」マウントの個体を調達できました。

今回の個体は製造番号から1949年の春頃に生産された個体だと推測しますが距離環指標値が「フィート」刻印なので欧米諸国向け輸出仕様の個体です (東欧向けはメートル表記)。

前期型:

生産時期:1947年〜1948年
フィルター枠:絞り環から突出
モノコーティング:白色

後期型:

生産時期:1948年〜1949年
フィルター枠:絞り環と同一面
モノコーティング:赤色

光学系は5群6枚の変形ダブルガウス型で1934年にトロニエ博士による再設計が行われた構成を踏襲しており非常に繊細で線の細いエッジを伴うピント面を構成し画全体的に違和感を感じない人間の目で見たままの自然な発色性とコントラストで表現します。それでいて決して誇張感には至らないながらも鋭いピントを印象づける画造りなのが大変魅力ですが、エッジが繊細なのはアウトフォーカス部が急に滲み始める (少々雑な粗い滲み方) のが影響しているのかも知れません。被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力にとても優れておりハッとすることがあります・・最近こういう画に惹かれます。

今回オーバーホールした個体は光学系、特に前後玉の経年に拠る擦りキズが酷いのでコントラストの低下を招いていますが画像編集ソフトで修正できる範疇なのがせめてもの救いです・・exaktaマウントの個体はなかなか手に入らないのでお探しの方は是非ご検討下さいませ。

当初バラす前の状態では絞り羽根に致命的な粘着性の強い油染みが進行しており、また内部に塗られていた「黄褐色系グリース」も既に粘り気が強い状態まで劣化が進んでおり絞り環や距離環が非常に重く硬いトルクに陥っていました・・オーバーホールによりとても滑らかに操作できるようになりました。生産されてから実に67年ぶりに再び使える状態まで復活を遂げた『Xenon 50mm/f2 silver《後期型》・・如何でしょうか?

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。この当時の他社光学メーカーのオールドレンズと同様に今回のモデルも総真鍮製 (真鍮 (黄鋼) 製/ガンメタル) のズシリと重みを感じるモデルですが筐体サイズは意外とコンパクトです。光学系は全ての群が真鍮環に固定されているこの当時のオールドレンズによく見かけるパターンです・・残念ながら光学系後群のみ固定環の固着が酷く外すことができなかったので、そのまま清掃しています。

絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) ですが、もちろん真鍮製 (真鍮 (黄鋼) 製/ガンメタル) です。光学系後群が外せなかったので後群が付いたままの写真です。

15枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます・・枚数が多いのもありますがとてもキレイな真円の「円形絞り」ですね。当初バラす前の状態では粘着性の大変強い油染みが生じており絞り羽根が一部浮き始めていたのでキーが脱落する危険な状態に陥っていました。

絞り環用のベース環をネジ込んで絞り羽根の制御機能をセットします・・ネジ込みが浅いと光学系の諸元値を発揮できなくなりますし逆にネジ込みすぎても絞り羽根の制御が正しく行われなくなります。上の写真では光学系後群が付いたままですのでひっくり返して撮っています・・そうしないと後玉の突出量があるので当てキズが付いてしまうからです (上の写真では底面が前玉側になります)。これで鏡胴「前部」は完成したことになります。

このモデルは鏡胴が「前部」と「後部」の二分割なのですが写真のとおり鏡筒の外側がそのままヘリコイド (オス側) になっています。このまま鏡胴「後部 (距離環やマウント部など)」のネジ山にネジ込んでいけば組み上がるのですが、このモデルの場合はこの鏡筒=鏡胴「前部」を固定するための「固定環」が存在しません。鏡胴の「後部」にこの「前部」を固定しなければ使っているうちにズレてしまい (回ってしまい) 光学系の諸元値を発揮できなくなります。上の写真の解説のとおりヘリコイドのネジ山の途中に「隙間」が用意されており、ちょうどその位置でイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) で締め付けるようになっているのです・・イモネジをネジ込むと隙間部分が広がってめくれ上がってきます。するとネジ山がネジ山ではなくなるので「回らなくなる=固定される」と言う仕組みです。

こちらはマウント部 (exaktaマウント) ですが指標値が刻印されています。

距離環を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。このモデルではヘリコイドのネジ山が逆方向に切られているのでこの部分のネジ山がネジ込まれると鏡筒は逆に繰り出されることになります・・つまりヘリコイドのネジ山がネジ込まれて収納すると鏡胴は繰り出され最短撮影距離の位置になり、逆にヘリコイドのネジ山が伸張すると鏡胴は格納されます (無限遠位置になる)・・逆方向です。オールドレンズとして組み上がってしまえば距離環の指標値とおりに回せばよいワケですが組み上げの際はネジ込みが逆であることを理解していないと正しく組み上がりません。

この後は光学系前群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

戦前 のノンコーティングではなくブルーの光彩を放つモノコーティングの「後期型」です。

嬉しいことに光学系内の透明度は大変高い状態をキープしています。前後玉の経年の拭きキズは、さすがに仕方ないですね・・。

上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。3枚全て「前玉」の拭きキズの状態を拡大撮影しています。逆に言うと前後玉以外には経年の拭きキズと言えるようなキズがほとんど見当たりません。上の写真は特にワザと前玉の表面を光に反射させてキズが分かり易い状態に写るようにしています・・薄く曇っているように写っているのは、そのような理由ですから実際は透明です (光学系内は全面に渡るようなクモリは皆無です/透明度が高い個体です)。

光学系後群も透明度が高いのですが同様に後玉には約1/3の領域に経年の拭きキズが相当量付いています。

上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目は外周附近のカビ除去痕 (コーティングハガレ) と目立つヘアラインキズを撮っており、2枚目〜3枚目は1/3の領域に付いている経年の拭きキズを目立つように撮っています。数点ですが「気泡」も含まれています。後群内にはLED光照射でようやく視認可能な「汚れ状」に見える非常に薄いクモリが1箇所あります (数ミリ大)。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
コーティング層の経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
LED光照射時の汚れ/クモリ:あり
LED光照射時の極微細なキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。光学系内には極微細な「気泡」が数点含まれています。前後玉に経年の拭きキズが無数にあり画のコントラスト低下を招いています。
光学系内の透明度は非常に高い個体です
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細なキズや汚れ、クモリなどもあります。
・経年の拭きキズが前後玉にあるのでコントラスト低下を招いています。また元々逆光耐性がそれ程良くないモデルですがフード装着をお勧めします。

当初油染みが粘っていた15枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が感じられる摩耗などが筐体には見られますが (特にローレットのジャギー部分や指標値刻印部分など) 当方による「磨き」をいれたので当時の状態に近い大変艶めかしい輝きを放っています。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重め」を塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

このモデルは距離環を回して無限遠位置の状態・・つまり「∞」の停止位置・・にしたまま置いたりすると後玉の突出量があるので後玉に当てキズを付けかねません。ご注意下さいませ! なお前玉側は突出がありませんので前玉を底面にして置いたとしても問題ありません (あくまでも平坦な場所であればのお話です)。

距離環のトルクはとても滑らかになりました・・当方の認識では「完璧に均一なトルク感」なのですがたま〜にグリース溜まりが起きるので (ネジ山が真鍮製だから) その際に一瞬「クッ」ととても軽い抵抗を感じることがあります。神経質な方だとそれだけで「トルクムラがあるじゃないか!」とクレームしてこられるので一応出品ページでは「ほぼ均一」と掲載しました。コトバの揚げ足を取る方がいらっしゃるのは悲しいコトです。

絞り環の操作性もちゃんと考慮して整備しました。当初は絞り環指標値の「2」からさらに前まで回っていたのですが、基準を正しく「2」の位置に持ってきています・・従って逆に最小絞り値は「16」よりもだいぶ先まで回って閉じます (おそらく32くらいまで)。これはストッパーが設計されていないのでこのようなことになりますからクレーム対象としません。「2」より先まで回ってしまうと「f2.8」の時に正しい絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) になっていないので、そのような処置を施しています。一応当方としては完璧なレベルでのオーバーホールが完了していますのでお探しの方は是非ご検討下さいませ。なかなか手に入らないモデルです。

ちなみにオシャレ〜なことに距離環の縁には「2/50」の刻印がちゃんとされているんですね・・これだけでも感激でした(笑) 鏡胴の指標値刻印は視認性をアップさせるために着色していますからキレイに見えています・・光りモノに弱いので。

当レンズによる最短撮影距離75cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでベッドライトが点灯します)。ご覧のようにコントラストの低下を招いています。

絞り環を回してF値「f2.8」で撮影しています。

さらに絞り環を回してF値「f4」で撮りました。

F値「f5.6」になっています。

F値「f8」になりました。

「f11」です。

最小絞り値「f16」になります。既に回折現象が出てだいぶ画が劣化しています。

上の写真 (2枚) は、開放実写の状態で撮ったオリジナル (1枚目) と画像編集ソフトでコントラストを10%だけアップさせた写真 (2枚目) を載せました。20%アップさせるとほとんどコントラストの低下は分からなくなります。