◎ CHIYODA KOGAKU (千代田光学精工) SUPER ROKKOR 5cm/f1.8(L39)

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SR5018(0618)レンズ銘板

千代田光学精工logo今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像加工ソフトで編集し消しています。

千代田光学精工のフィルムカメラ「Minolta-35 IIB」用セットレンズとして用意された標準レンズ・・写りが良いと評判でいまだに人気が高い銘玉です。

SR5018(0618)構成光学系は5群6枚の拡張ダブルガウス型で第2群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) を分割させたUltron型に分類されると思います。開放から非常に鋭いピント面を構成し骨太なエッジと共にコントラストの高いシッカリした色乗りの発色性です。

千代田光学精工はこの後に社名を「MINOLTA」に変更しますがこの当時のオールドレンズにはまだ複層コーティングの「アクロマチックコーティング (AC)」は蒸着されておらずモノコーティングになります。従ってほんのりと優しさ漂うアクロマチックコーティングの描写性に対してこのモデルはキッチリカッチリ写る画造りであり対称的なモデルでしょうか。

今回のオーバーホール/修理では以下の内容について改善処置を施しつつ工程を進めています。

  1. 鏡胴・絞り環・距離環のガタつき解消。
  2. 絞り環・距離環のトルク改善。
  3. 鏡筒カバー (フィルター枠) の光沢研磨。
  4. 光学系内の清掃。

SR5018(0618)仕様

SR5018(0618)レンズ銘板

SR5018(0618)11

SR5018(0618)12このモデルは鏡胴が「前部」と「後部」に二分割するオールドレンズです。上の写真 (2枚) は、鏡胴「後部」の構成パーツの中から真鍮製パーツのみ並べて撮影しています。

1枚目がバラした直後に清掃を施しグリースや油分、或いは塵などを落とした後撮影しています。2枚目はさらに当方による「磨き研磨」を施し再度清掃 (2回目) を行った後で撮影しました。

今回の改善項目の中に「鏡胴のガタつき」と言うのがあるのですが、実はそのガタつきの原因の一つにはこれらパーツの状態が影響していました。詳細は後ほどご案内しますが、当初バラした後の状態では (1枚目の写真のように) 真鍮製パーツの表層面は経年劣化に拠り「腐食」してしまった状態で焦茶色になっており、一部には「錆 (緑青)」も出ていました。1枚目の写真で焦茶色ではなく黄金色になっている部分は真鍮製パーツが互いに接触し合っていたために経年の腐食を免れていた部分を表しています。

本来このオールドレンズが生産された時点では2枚目の写真のような状態だったハズです・・。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

すべて解体したパーツの全景写真です。

SR5018(0618)13ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

SR5018(0618)14絞りユニットや光学系前後群を格納するための鏡筒で鏡胴「前部」の構成パーツの一つになります。このモデルではヘリコイド (オス側) は鏡胴「後部」に含まれており独立しています。

SR5018(0618)1510枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。当初バラした直後の絞り羽根には「赤サビ」が僅かに生じており油染みもありました。

SR5018(0618)16この状態で鏡筒を立てて撮影しています。既に絞り環用のクリック感を伴う機構部を組み付けてあります。当初バラす前の段階では絞り環操作にはトルクに重さが生じておりクリック感もぎこちない印象で違和感がありました (改善項目の2)。絞り環用のベース環を「磨き研磨」したことにより大変滑らかで軽いチカラで操作できる状態に改善できています。この当時の方式ではベアリングを上の写真のような「鋼 (はがね)」の板で押さえつける方式を採っておりクリック感の強さ調節はほとんどできません・・現状一番強い状態に調節してあります。

SR5018(0618)17先に鏡筒カバー (フィルター枠) を組み付けてしまいます。この鏡筒カバーの組み付け位置はイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) の位置が決まっているので調節ができません・・従って「●」マーカーの位置も調節ができないので当初の位置のまま組み付けています。

SR5018(0618)18ベース環に絞り環をセットします。

SR5018(0618)19ここで光学系前後群を組み付けてしまいます。これで鏡胴「前部」が完成したことになり、この後は鏡胴「後部」の組み立てに入ります。

SR5018(0618)20こちらはヘリコイド (オス側) ですが距離環やマウント部を組み付けるための基台を兼ねています。

SR5018(0618)21改善項目の (1) ガタつきに関しての原因がこの部位です。このモデルには「空転ヘリコイド」と言って距離環をどんなに回してもスルスルと回るだけのヘリコイドがヘリコイド (オス側) の内側に組み込まれています・・つまり内ヘリコイドが「空転ヘリコイド」と言うことになります。

ガタつきの原因はこの「空転ヘリコイド」を固定する「締め付け固定環」を最後まで締め付けせずにギリギリの処まで締め付けて固着剤を使って止めていました・・結果、空転ヘリコイドと締め付け固定環との間にほんの僅かな「隙間」が生じており、それが鏡胴のガタつきになっていたようです。本来「空転ヘリコイド」なので最後までキッチリと固定環を締め付けてもスルスルと空転する設計になっているのですが、最後まで締め付けできなかった理由があります。

その理由が冒頭の写真 (1枚目) の真鍮製パーツ表層面の「腐食」でした。表層面の腐食に拠り必要外の「摩擦」が生じてしまい、それを解消する為にグリースを塗ったのですが予想に反してトルクが重くなってしまったために常套手段として固着剤による隙間を用意してムリヤリトルクの改善をさせたようです。塗布していたグリースは「白色系グリース」でしたが既に経年劣化で液化が進行しておりグリースとしての役目を果たしておらず隙間の分だけ鏡胴のガタつきが増大してしまった・・と言うのが原因でした。

「磨き研磨」により表層面の平滑性が確保できたので固定環を最後までキッチリ締め付け固定しました (固着剤などは必要ありません)。設計上スルスルと滑らかに回るようになっている「空転ヘリコイド」はちゃんと機能しています。

SR5018(0618)22マウント部に指標値環をセットしてからヘリコイド (オス側) にネジ込み無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

この時に「直進キー」と言う距離環の「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツを組み込んでヘリコイドが正しく繰り出されることを確認します。

SR5018(0618)23距離環を仮止めしてから先に完成している鏡筒「前部」を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行えば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

SR5018(0618)1アクロマチックコーティング (AC) がまだ蒸着されていない頃のモデルなのでコーティング層の光彩はアンバー系であり、観る角度によっては僅かにパープル系の輝きを放っています・・美しいですね。

SR5018(0618)2清掃により光学系内の透明度は高くなりましたが前玉の拭きキズやヘアラインキズ、或いは微細な点キズなどはそのまま残っています。

SR5018(0618)9光学系後群も大変キレイな状態を維持しています。後玉外周附近に弧を描いた拭きキズが1本見受けられますが写真への影響にはなりません。

SR5018(0618)310枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しており開閉幅 (入射光量) の調整も終わっています。

ここからは鏡胴の写真になります。

SR5018(0618)4

SR5018(0618)5

SR5018(0618)6

SR5018(0618)7ヘリコイドのネジ山の状態が良かったので「磨き研磨」により滑らかになり塗布したヘリコイド・グリースはご指示では「粘性:中程度」でしたが最終的に「粘性:重め」を塗布しました。それでも大変滑らかで軽いトルク感に仕上がっており、もちろんトルクは距離環の全域に渡って完璧に均一です。

距離環や鏡胴も外装に「磨き」を入れたので落ち着いた美しい仕上がりになっています。鏡筒カバー (フィルター枠) 部分も「光沢研磨」を施しましたがメッキ加工の問題からそれほど光沢は戻っていません。逆に絞り環や距離環の黒色部分は光沢が戻り大変キレイになっています・・もちろん指標値環のシルバー梨地仕上げ部分も光沢研磨を施したのでキレイです。

SR5018(0618)8絞り環のトルク感は大きく改善できましたがガタつきに関してはほんの微かなガタつきがまだ残っています・・これは仕様上改善できないのでご留意下さいませ。もしもご納得頂けないようであれば請求額から必要額を減額下さいませ

また鏡胴のガタつきは解消しましたが鏡胴「前部」のガタつきも僅かに残っています。鏡胴「前部」を組み付ける際にシム (位置調整のためのスペーサーの役目) をコート紙を使って作り挟んでいますが、2枚入れると無限遠位置がズレてしまい無限遠が出ない (合焦しない) 状態になるので1枚だけにしてあります。

当初バラす前の実写では無限遠位置はオーバーインフでしたがシムを入れたので僅かに改善しています・・但し、前述のようにシムを2枚入れられなかったので鏡胴「前部」のガタつきは僅かに残っているので、こちらもご納得頂けないようであれば減額下さいませ

SR5018(0618)10当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。さすがに人気が絶えないだけありとても素晴らしい描写性です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。