解説:オーバーホール / 修理 / 整備作業について

★マークこのページでは、当方で実施しているオールドレンズの「オーバーホール/修理/整備」作業の工程内容などについて解説しています。これらの作業内容は「ヤフオク! 出品商品」「オーバーホール/修理ご依頼」などで共通です。
どのような作業、判断、或いは基準で作業をしているのか当方の技術スキルレベルの判断材料にして下さい。


【オーバーホール/修理/整備作業の工程解説】

(1)作業開始前:

  • 外観の確認:(附属品の確認)
    経年仕様に於ける外装の状態確認:キズ・擦れ・凹み・剥がれ・指標値褪色・汚れ・カビなどの状態確認
  • 基本動作の確認:
    当方所有マウントアダプタに装着し基本動作 (ピント合わせ・光学系内部・絞り羽根開閉・各機構部動作) の確認
  • 不具合/不良箇所の確認:
  • 具体的な不具合/不良の現象、及びその再現性 (出現度合い) を確認し、その原因と改善方法を考察
  • 解体手順の考察:
    筐体の締め付けネジの配置、各部の固定状況などから解体手順を考察

(2)作業開始:

  • 簡易解体:
    鏡胴の分割が可能な最低限の状態まで解体 (鏡胴前部/後部/マウント部など) し、不具合/不良箇所の原因を判定
    改善策を考察し、改善が見込めるか否かを判定
    改善策が判明しない場合は、ネットなどで情報 (光学系構成/解体写真の有無) を入手し再度考察
  • 解体作業:
    解体手順に則り、各構成パーツの最小単位 (微細ネジやマイクロバネ・ベアリング) まで解体
    解体の際にさらに細分化した部位別の解体手順がある場合は、それを考察し実施
    各構成パーツの固定状況を確認し、既に緩んでいた場合は不具合/不良との関連性を考察
    光学系各群の内部状態 (汚れ/カビ/キズ/コーティング劣化/バルサム切れ/気泡/変質/欠損) など確認
    過去の既メンテナンスの痕跡を確認し、その痕跡と解体手順との整合性による既メンテナンスの正当性を判定
    (過去の既メンテナンスに起因する不具合/不良か否かを判定)
    各構成パーツに接着剤 (瞬間接着剤の類) やハンダ付け、潤滑油 (スプレー式液体の類)、使用されていたグリース種別などの正当性を確認
    (いわゆるごまかし/手抜きの類の発見とそのレベルを確認)
    内部、或いは各構成パーツに改造/改修/欠落/欠損などがあるか否かを確認し、それらがある場合その理由と改善策を考察
    純正の構成パーツとは異なるパーツが顕在しているか否かを確認し、顕在すればその理由を考察
  • 清掃作業 (1回目):
    各構成パーツの最小単位 (微細ネジやマイクロバネ・ベアリング) に至るまでを洗浄液で清掃し油分・塵・汚れを除去
    内部の砂/ジャリ/動物毛/異物の混入、ヘリコイドグリースの経年劣化、各構成パーツの経年による腐食度合いなどの状況を確認し、それらに起因する影響 (ヘリコイドのネジ山摩耗/連係機構部の連係動作) と不具合/不良との因果関係を考察
    各構成パーツの油分を除去した後に、再び業務用中性洗剤により完全清掃を実施
    外装 (特に指標値) の褪色、或いはオリジナルの色合いを取り戻せたか否かを確認
    各構成パーツの清掃が完了した時点で、経年の摩耗度合いを確認
  • 磨き研磨作業:
    各構成パーツのメッキ加工表層面のみを磨き研磨し、経年の腐食/汚れ/キズ/擦れ/剥がれ/カビなどを除去
    各構成パーツの平滑性を確認
  • 光沢研磨作業:
    筐体外装の構成パーツ全てに対してメッキ加工表層面のみ光沢研磨を実施 (シルバー/黒色鏡胴の別なく実施)
  • 清掃作業 (2回目):
    各構成パーツを再び業務用中性洗剤にて清掃し、磨き研磨/光沢研磨の研磨粉を除去して平滑性/清潔性の最終確認
  • 着色作業:
    清掃による褪色/剥がれ、或いはオリジナルの色合いに戻ったか否かを確認し、必要であれば着色して視認性を確保
    筐体外装のキズ/擦れ/凹み/剥がれ/汚れなどの状況に因り、必要であれば着色
  • 撮影作業:(ヤフオク! 出品時のみ実施)
    各構成パーツを並べて、スタジオにて全景写真を撮影
    組み立て工程の途中で都度、個別撮影を実施
  • 組み立て工程:
    組み立て手順に則り、各構成パーツを組み上げ実施
    組み上げの工程に於いては、固定状況/連係状況/駆動状態/適合位置などを都度確認
    過去の既メンテナンスに起因する影響がある場合は、特にその箇所や問題の改善を実施
    不具合/不良箇所の改善を実施
    改造/改修/改変が必要な場合は、適時必要パーツを調達/加工し調整を施し改善を確認
    光学系各群のレンズをLED光照射の下にて清掃、コーティング劣化/キズの状態によりガラス研磨 (コーティング層表層面のみ) を実施
    (ガラス研磨は光学系諸元に全く影響を与えないレベルに留まるので、それ以上の研磨は 当方ではできません)
  • 検査作業:(組み立て工程の最中に実施する内容)
    光学系各群のレンズ固定状況、光学系内の塵/埃/汚れ/クリアさをそれぞれ確認
    光軸確認/絞り羽根開閉幅の確認/無限遠位置を確認し検査実施
    距離環/絞り環/機構部の駆動状況/連係状況/操作性を確認
    この段階で必要があれば再度解体し整備作業を実施
    (検査作業をクリアし納得できるまでこれを随時繰り返す)

(3)検品作業:(オーバーホール/修理/整備完了後)

  • 個体別の認知:
    光学系/操作性/筐体外観などの状態を確認し、なおも不具合/不良/問題箇所が顕在するか否かを確認
  • 検品:
    組み立て工程の最中に実施する確認作業やその後の検査作業に於いて既に検品を実施済
    不具合/不良/問題の箇所は、可能な限り改善できている状態に仕上がっていることを確認
  • 基準:
    可能な限りオリジナル (純正) に近い状態に仕上げることが前提条件
    実用レベルであり、且つ正常であることが前提条件
    ごまかし/手抜きなどは一切排除することが前提条件
    これら前提条件を満たすために妥協せず、何度でも改善に挑むことを基準としています。

以上が当方でのオーバーホール/修理/整備作業に於ける工程の解説です。

正直、まだ駆け出し6年足らずの修行中なので、まだまだ技術レベルのスキルは大変低く、テクニックやノウハウを蓄積されていらっしゃるアマチュアの方々、或いはデジタル検査機器や工作機械/専用研磨設備/コーティング設備などを装備されたプロの中古カメラ店様/修理会社様などには当然ながら足元にも及びません。そのことをご留意頂いた上でご判断頂ければと思います。